中国人民銀行総裁「国際金融機関は経済監督機能を強化すべき」 video poster
上海のルージャズイ・フォーラムで示された問題意識
国際金融機関は、成長する新興国の存在感をどこまで反映できているのか――。2025年に上海で開幕したルージャズイ・フォーラムの開幕式で、People's Bank of China(PBOC)のPan Gongsheng総裁は、主要な国際金融機関における新興国や途上国の持ち株比率や議決権が、世界経済における実際の経済的な重みよりも著しく小さいと指摘しました。
Pan総裁は、国際金融機関が世界経済を支えるインフラである以上、その意思決定の構造が現実の経済力を十分に反映していないことは問題だとし、国際金融システムの安定に向けた見直しの必要性を訴えています。
新興国・途上国の「経済力」と「議決権」のギャップ
今回の発言の焦点は、国際金融機関における新興市場国や開発途上国のプレゼンスです。Pan総裁によれば、こうした国々は世界経済の成長エンジンとして重要な役割を果たしているにもかかわらず、その持ち株比率や投票権は、実際の経済的な重みよりも低い水準にとどまっています。
このギャップが続くと、次のような課題が生じる可能性があります。
- 国際金融機関の政策決定が、一部の国や地域の視点に偏りやすくなる
- 新興国や途上国にとって、ルール形成への関与感が薄れ、制度への信頼が揺らぐおそれがある
- 世界全体のリスクや課題を、十分に反映した議論が行われにくくなる
Pan総裁の問題提起は、単に「配分が不公平だ」という不満ではなく、国際金融システムの実効性と安定性を高めるためには、現実の経済構造に沿ったガバナンスが必要だという発想に基づいていると言えます。
経済監督機能の強化とは何を意味するのか
Pan総裁は、主要な国際金融機関に求められる役割として、特に「経済監督機能」の強化を挙げました。その内容として示されたポイントは次の通りです。
- 経済監督機能をさらに強化すること
- 世界のリスクを客観的に評価すること
- 各国に対し、経済のグローバル化と多国間の貿易体制を積極的に支持するよう促すこと
- 国際金融システムの安定を維持すること
ここで言う経済監督とは、各国の経済・金融の状況や世界的なリスクの動きを継続的に点検し、危機が深刻化する前に警鐘を鳴らす役割を指します。Pan総裁は、その監督が特定の国や地域の見方に偏るのではなく、より客観的でバランスの取れた評価に基づいて行われるべきだと強調していると受け止めることができます。
経済グローバル化と多国間貿易体制をどう支えるか
Pan総裁がもう一つ強調したのが、「経済のグローバル化」と「多国間の貿易体制」を各国に積極的に支持させるよう、国際金融機関が役割を果たすべきだという点です。
経済グローバル化と多国間の貿易体制は、世界経済をつなぐ基盤として機能してきました。一方で、保護主義的な動きや地政学的な緊張が高まる場面では、貿易や投資の流れが分断されるリスクも指摘されます。そうした中で、国際金融機関が各国の政策運営を支えつつ、協調と開放の方向性を維持するよう働きかけることが重要だというメッセージが込められていると考えられます。
国際金融システムの安定と日本への含意
Pan総裁が最後に掲げたのは、「国際金融システムの安定を維持する」という大きな目標です。新興国や途上国の発言力拡大、客観的なリスク評価、経済グローバル化の維持といった論点は、いずれも最終的には市場の混乱や危機を防ぎ、世界経済の安定を図るための手段として位置づけられています。
2025年12月時点で、世界経済の先行きにはさまざまな不確実性が語られています。そうした環境の中で、日本の読者にとって押さえておきたいポイントは次のような点です。
- 国際金融のルールやガバナンスをめぐる議論は、新興国や途上国のプレゼンス拡大という視点抜きには語れなくなっていること
- 経済グローバル化と多国間の貿易体制の行方は、日本企業の投資戦略やサプライチェーンにも影響し得ること
- 国際金融機関によるリスクの「客観的な評価」が重視される背景には、市場の分断や不信感の拡大を避けたいという意識があると考えられること
上海でのPan総裁のメッセージは、国際金融の専門家だけでなく、海外ビジネスに関わる企業や投資家にとっても無関係ではありません。国際金融機関のガバナンスや役割をどのように再設計していくのか。その議論は、これからの数年を通じて、世界経済と私たちの生活を静かに左右していくテーマになりそうです。
Reference(s):
Financial institutions should strengthen economic oversight: PBOC
cgtn.com








