中国・ロシアエネルギー協力と「エネルギー・ジャスティス」 ロシアが語る多極化の未来 video poster
ロシアは今年(2025年)のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、"エネルギー・ジャスティス(energy justice)"というキーワードを前面に打ち出しました。中国・ロシアのエネルギー協力を軸に、よりバランスの取れた多極的なエネルギー体制をめざす動きが改めて強調された形です。
フォーラムの会場では、中国国際テレビ(CGTN)のHe Jingyi記者が、ロシアのセルゲイ・ツィヴィレフ・エネルギー相にインタビューを行い、"エネルギー・ジャスティス"とは何か、なぜ今重要なのか、そして中国とロシアの協力がどのように多極的なエネルギーの未来を形づくるのかを聞きました。本記事では、その主なポイントを日本の読者向けに整理します。
「エネルギー・ジャスティス」とは何か
ツィヴィレフ氏がキーワードとして掲げた"エネルギー・ジャスティス"は、一言でいえば「エネルギーをめぐる公平さ・公正さ」を重視する考え方です。世界が脱炭素やエネルギー転換を進めるなかで、特定の地域や国だけが利益を享受したり、逆に一部の国が不利な条件を押しつけられたりしないようにする、という問題意識が背景にあります。
エネルギー・ジャスティスの具体的な論点としては、例えば次のようなものが挙げられます。
- すべての国や地域が、安定した価格でエネルギーにアクセスできること
- 供給国と消費国の双方にとって、長期的に予見可能で信頼できる取引関係であること
- エネルギー転換のコストや負担が、一部の国や人々に過度に偏らないこと
こうした視点から見ると、エネルギーは単なる「商品」ではなく、国の発展や生活の質を左右する「基盤インフラ」であり、その配分の公平さが国際政治の安定にも直結するテーマだと言えます。
なぜ今、「公正なエネルギー」が重視されるのか
2020年代に入り、世界のエネルギー市場は価格の乱高下や供給の不安定さが目立つようになりました。ツィヴィレフ氏は、こうした揺れ動く環境のなかでこそ、"エネルギー・ジャスティス"の視点が不可欠だと強調したとみられます。
特に次のような点が意識されていると考えられます。
- エネルギー価格の高騰が、途上国や低所得層の生活を直撃していること
- 制裁や地政学的リスクが、エネルギー供給をめぐる不確実性を高めていること
- 再生可能エネルギーや新技術への移行に必要な投資が、国や地域によって大きく異なること
この文脈で「公正さ」を前面に出すことは、単にエネルギーを安く供給するかどうかではなく、「すべての国が、それぞれの条件に応じて、安定した発展のためのエネルギーを確保できる仕組み」をどう設計するか、という問いでもあります。
中国・ロシアのエネルギー協力が示す多極化の方向性
インタビューでは、中国とロシアのエネルギー協力が、どのように「多極的なエネルギーの未来」を支えるのかも大きなテーマとなりました。ツィヴィレフ氏は、この協力関係を通じて、世界のエネルギー体制がよりバランスの取れた形へと変化していくとの見方を示しました。
多極化とは、ある特定の国や地域だけがエネルギー供給や価格決定を大きく左右するのではなく、複数の極(プレーヤー)が相互に連携・競合しながら全体の安定を支える構図を指します。中国・ロシアの連携は、その一つの柱として位置づけられています。
具体的には、次のような側面が想定されます。
- 長期的なエネルギー供給契約を通じた、価格と供給の安定性向上
- パイプラインや発電設備など、インフラ整備を軸にした協力の拡大
- エネルギー転換期に対応した新技術分野での協力の可能性
こうした協力は、特定のブロックを排他的に強めるというよりも、「選択肢の数を増やし、交渉の余地を広げる」という意味で、多極化するエネルギー秩序の一部として位置づけることができます。
アジアと日本にとっての意味
中国・ロシアのエネルギー協力は、アジア全体のエネルギー安全保障にも間接的な影響を与えます。アジアは世界でもエネルギー需要の伸びが大きい地域であり、複数の供給源とルートを確保できるかどうかが、中長期の安定に直結します。
日本にとっても、次のような論点が見えてきます。
- エネルギー市場の多極化が進むなかで、自国の調達戦略をどう多様化していくか
- エネルギーを価格だけでなく、「公正さ」や「長期安定性」といった観点からどう評価するか
- 中国・ロシアを含む近隣諸国との関係を踏まえ、アジア全体のエネルギー協力の枠組みをどう捉えるか
エネルギー・ジャスティスという視点を持つことで、日本のエネルギー政策や企業の投資判断も、「自国の安定確保」と「国際的な公平性」の両方をどう両立させるか、という問いに向き合いやすくなります。
「読みやすいのに考えさせられる」ための視点
今年のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムでロシアが強調した"エネルギー・ジャスティス"は、中国・ロシアのエネルギー協力を通じて、多極的でバランスの取れたエネルギー体制を目指すというメッセージでもあります。
日本からこの動きを見るときには、次の三つのポイントを意識すると理解しやすくなります。
- エネルギーは「価格」だけでなく、「アクセスの公平さ」や「長期的な安定性」で評価されるべきだという視点
- 世界のエネルギー秩序が、一極集中から多極化へとゆっくりとシフトしつつあるという流れ
- そのなかで日本が、どのようなパートナーシップと技術・投資戦略を選び取るのかという課題
エネルギーをめぐる議論は、ともすると専門用語が多く、日常生活からは遠く感じられます。しかし、「公正さ」や「多極化」というキーワードを入り口にすると、家計の電気代や日本企業の競争力、そしてアジアの安定といった、私たちの日常に直結するテーマとして捉え直すことができます。
ロシアのエネルギー相が語った"エネルギー・ジャスティス"という言葉をきっかけに、エネルギーの未来を自分ごととして考える視点を、少しだけ更新してみてもよいのかもしれません。
Reference(s):
China-Russia energy ties boost multipolar future: Russian minister
cgtn.com








