中国「618」セールが過去最高更新 下取り支援とAI、即時小売が牽引
中国の大型ECセール「618」が2025年も記録的な売り上げを達成しました。政府の下取り支援策とAI、そして即時配達を特徴とする新しい小売モデルが、夏の消費を大きく押し上げています。
「618」とは何か 2025年夏の消費を映す鏡
「618」セールは、もともと6月18日前後に行われていたオンラインの大規模セールで、現在では数週間にわたる夏のショッピングシーズンとして定着しています。今年の「618」は、単に安さを競うだけでなく、より質の高い商品やサービスを選ぶ「アップグレード消費」の広がりを映し出しました。
JD.comとTmall、記録的な販売実績
中国のEC大手JD.comは、ある集計時点でオンライン、宅配、オフライン店舗を合わせた注文数が22億件を突破したと明らかにしました。注文をした顧客の数は、前年から2倍以上に増えています。
同業のTmallでも、過去最高水準の盛り上がりが見られました。売上がそれぞれ1億元(約1,394万ドル)を超えたブランドは453に達し、その数は前年より24%増加しました。人気ブランドだけでなく、中堅ブランドにも消費の波が広がっていることがうかがえます。
全国的な下取りプログラムが追い風
今年の「618」を語るうえで外せないのが、全国規模の下取りプログラムです。古い家電や自動車などを新しい製品に買い替える際に、消費者が得られる補助や割引が大きなインセンティブになりました。
このプログラムには、3,000億元規模の超長期特別国債に加え、地方政府による支援も投入されています。JD.comやTmallは、政府の補助金と自社の割引を組み合わせた専用の下取りチャンネルを開設し、高額商品の負担を数千元単位で軽減しました。
その効果は販売データにも表れています。JD.comでは、主力カテゴリーであるスマートフォンなどのモバイル機器の売り上げが前年同期比で88%増加し、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電は161%もの伸びを記録しました。老朽化した設備を、より省エネで高性能な製品に入れ替える動きが一気に進んだ形です。
即時小売の拡大:配達員もレストランも急増
今回の「618」で特に注目されたのが、「即時小売」と呼ばれる超高速配送型の新しい買い物スタイルです。オンラインで注文すると、近隣の店舗から短時間で届けられる仕組みで、オンラインとオフラインの境界をまたいだ小売の形として存在感を増しています。
JD.comのテイクアウト事業は、この期間に急速に拡大しました。6月17日時点の専属配達員は12万人を超え、わずか2週間で10万人から大きく増加しました。6月1日時点の日次注文数は2,500万件を上回り、参加するブランドレストランも150万店以上に達しています。
即時小売への動きは、別のプラットフォームにも広がっています。美団(Meituan)が実施した「618」期間中のフラッシュセールでは、50を超える高価格帯カテゴリーの取引額が前年の2倍以上に拡大しました。特に、スマートデバイス関連は8倍、オンライン学習関連商品は5倍と大きく伸びており、デジタル機器や教育サービスへの需要の高さが目立ちます。
AIとデジタル基盤が生む「質の高い消費」
今年の「618」の好調は、下取り支援と並んでAIの活用によっても支えられたとされています。蓄積された膨大な購買データを分析し、利用者ごとに最適な商品を提示するレコメンド機能や、需要予測に基づく在庫配置の最適化など、AIを組み込んだデジタル基盤が消費の質を高めています。
また、即時小売の現場でも、配達ルートの効率化や店舗の在庫管理などにデータ分析やAIが使われることで、注文から配達までの時間短縮とコスト削減が進んでいます。こうした技術の積み重ねが、消費者にとって「より早く、より便利で、より自分に合った買い物体験」につながっているといえます。
日本の読者への示唆:下取り・即時小売・AIの組み合わせ
中国の「618」セールの動きは、日本の小売・EC業界にとってもいくつかの示唆を与えています。
- 下取りと補助を組み合わせ、高額商品の買い替え需要を一気に引き出す仕組み
- 即時配達や近隣店舗との連携によって、オンラインとオフラインを統合する小売モデル
- AIを用いたレコメンドや在庫・物流の高度化で、消費者の体験価値を高める試み
日本でも人口構造や物価動向が変化するなか、消費をどのように喚起し、生活者の「質の高い買い物」を実現していくのかが問われています。中国の「618」に見られる実験と拡大は、近隣国の一例として、これからの小売の姿を考える手がかりになりそうです。
Reference(s):
Record sales for China's 618 festival, fueled by trade-ins and AI
cgtn.com








