中国・南アジア博がつなぐグリーン貿易と地域サプライチェーン
中国・雲南省昆明で開かれた第9回中国・南アジア博が、中国、南アジア、東南アジアをまたぐ貿易とサプライチェーンの連結をどう深めているのか。グリーン貿易やデジタル貿易、ゼロ関税政策など、アジア経済の今を映すポイントを整理します。
第9回中国・南アジア博とは
第9回中国・南アジア博は、中国南西部の雲南省の省都・昆明で6月19日から24日まで6日間の日程で開催されました。会場には中国内外から2500社以上が集まり、展示ホールは16カ所。そのうち約7割が製造業、グリーンエネルギー、コーヒー産業、伝統中国医学など専門分野に特化した構成となりました。
この博覧会は、2013年に昆明で初めて開かれました。同じ年に中国が「一帯一路」構想を打ち出しており、それ以来、中国と南アジアとの経済交流を象徴するプラットフォームとなっています。これまでに1100億ドル超の対外貿易取引を促進し、参加企業は累計で2万社を超えています。
グリーン貿易とデジタル貿易が主役に
今回の中国・南アジア博の特徴として浮かび上がるのが、グリーン貿易とデジタル貿易の存在感です。ベトナム工業貿易省傘下のベトナム貿易促進局の専門家、ブイ・リエン・タオ氏は、中国・南アジア博が中国、南アジア、東南アジアの間で、とくに環境負荷の少ないグリーン貿易とデジタル分野の貿易をつなぐ役割を果たしていると評価しました。
タオ氏は、ベトナムが中国との「ウィンウィン」の協力を重視していることも強調します。輸出入だけでなく、現代的な交通インフラの整備など、多くの分野で協力を深めていきたいという立場です。
サプライチェーンの強靭性という視点
タオ氏はまた、地政学的な不確実性が高まる中で、中国が地域のサプライチェーンの強靭性と安全性を高める上で重要な役割を担っていると指摘しました。氏は、中国とのサプライチェーン協力が特定地域への過度な依存を抑え、全体としてのレジリエンスを高めると見ています。
さらに、地域包括的経済連携(RCEP)や中国・南アジア博といった枠組みについても、タオ氏は「保護主義的な動きとは対照的に、包摂的なグローバル化への明確なコミットメントを示すものだ」と評価しました。多国間協力を重視する姿勢が、地域レベルの貿易や投資を支えているという見方です。
ゼロ関税で南アジアの最貧国を後押し
中国は、アフガニスタン、ネパール、バングラデシュなど南アジアの後発開発途上国からの適格な輸出品に対し、ゼロ関税政策を実施しています。この措置は、これらの国々が中国市場へアクセスしやすくするための基盤であり、中国・南アジア博に継続して参加する企業が関係を深める土台にもなっています。
アフガニスタン出身のカーペット商人、アリ・アズガル・ファイズ氏は今回が3回目の参加です。過去の出展で手応えを得たことから、今回はより多様な色とデザインの商品を持ち込み、中国の消費者のニーズに応えようとしています。ファイズ氏は「中国市場にアフガン製品のためのドア、窓を開きたい。このようなプラットフォームを通じて、製品だけでなくアフガン文化も中国の友人に紹介できる」と語りました。
数字で見る中国と南アジアの貿易
中国商務省のデータによると、2024年の中国と南アジア諸国との貿易額は約2000億ドルに迫り、この10年間でほぼ倍増しました。年平均成長率は6.3%とされ、中国・南アジア博は、この成長を支える交流・商談の場として機能してきたことになります。
開幕式で、商務部のイエン・ドン副部長は、中国が高水準の対外開放を堅持し、高品質な発展を通じて中国式現代化を進めていると説明しました。その過程で、南アジア諸国を含む世界各地との協力機会が生まれ続けるとし、中国・南アジア博もその一部を担うと位置付けています。
現場から見える「つながり」の具体像
バングラデシュに広がる省エネLED
会場内のブースを回る来場者の中には、具体的なビジネスチャンスを探す姿が目立ちました。バングラデシュから訪れたMDサムラト・バボル氏は、中国メーカーのLED電球が並ぶブースで商品を一つひとつ確認していました。
初参加のバボル氏は、自国ではかつて白熱電球が一般的だったものの、現在は中国製のLED電球が人気を集めていると話します。「わが家でも高品質な中国製LEDを使っている」と述べ、この機会により多くの中国企業とつながり、省エネ型の電球をバングラデシュに持ち帰りたいと期待を寄せました。
アフガン産カーペットと中国の消費者
ファイズ氏にとって、中国・南アジア博は単なる販売の場にとどまりません。中国の消費者の嗜好を学びながら、伝統的なアフガンカーペットに新しい色やデザインを取り入れる試みの場でもあります。紛争の影響を受けてきたアフガニスタンにとって、安定した輸出ルートの確保は、雇用と生計を支える意味合いも持ちます。
中東を結ぶ雲南の「花のハブ」
今回の博覧会は、南アジアを超えて新たなパートナーも呼び込んでいます。ドバイを拠点とする生花取扱企業、フォーエバーモア・フラワー・トレーディングは初参加ながら、雲南のサプライヤーと1億5000万元(約2100万ドル)規模の取引契約を締結しました。
同社の代表者であるシュ・ナン氏は、雲南産の花について、品種の多様性に加え、品質も着実に向上していると評価しています。今後、中東の市場で雲南産の高品質な花の人気が一段と高まることを期待しているといいます。
日本の読者への示唆
中国・南アジア博で起きていることは、日本から見ると距離のあるトピックに見えるかもしれません。しかし、いくつかの点で日本の読者とも無関係ではありません。
- グリーンエネルギーや省エネ製品、デジタル技術など、持続可能なビジネス分野がアジアの新たな成長源になりつつあること
- サプライチェーンを単に「分散」するのではなく、地域内の連結性を高めることでレジリエンスを構築しようとする動きがあること
- アフガニスタンやバングラデシュなどの国々が、ゼロ関税などの仕組みを通じてグローバル市場との接点を広げようとしていること
こうした変化は、今後のアジア経済の重心や、企業同士の連携パターンを考える上で重要です。日本企業や日本の消費者にとっても、アジアの別の地域でどのような技術や製品、文化が交流しているのかを知ることは、自らの選択肢を広げるヒントになり得ます。
「読み流さない」ための視点
ニュースとして中国・南アジア博の開催事実や取引規模だけを追うと、数字の大きさに目を奪われがちです。しかし、その裏には、中小企業や個人の起業家が国境を越えて新しい機会を探る姿があります。
ベトナムの専門家が語るサプライチェーンの強靭性、バングラデシュのLED輸入業者、アフガニスタンのカーペット商、中東の花の商社。それぞれのストーリーを通じて、アジアの相互依存がどのように形作られているのかを想像してみることは、国際ニュースを「読み流さない」ための一つの視点になるかもしれません。
Reference(s):
Expert: China-South Asia Expo promotes regional trade linkage
cgtn.com








