米国経済はなぜマイナス成長に?2025年1〜3月期の輸入急増とインフレを読む
2025年1〜3月期の米国経済が年率0.5%減となり、輸入急増とインフレ、地政学リスク、景気循環の逆風が重なっています。本記事では、その背景と今後の焦点を日本語で整理します。
2025年1〜3月期GDP、年率0.5%減
2025年6月26日に米商務省経済分析局(BEA)が公表した第1四半期(1〜3月)の実質国内総生産(GDP)の第3次推計によると、米国経済は年率換算で0.5%のマイナス成長となりました。
成長率を押し下げた主因は、GDPの計算上マイナス要因となる輸入の急増と、政府支出の減少です。一方で、設備投資などの投資と個人消費は増加しており、国内需要自体は底堅さを保っていました。このため、実質民間最終販売(家計と企業の需要を示す指標)は増加しています。
複数の要因が同時に動き、表面上は成長率が鈍化していても、経済の内部では強さと弱さが入り交じる複雑な局面にあることがうかがえます。
輸入急増が示すもの:関税前の「駆け込み」
今回のマイナス成長を語るうえで欠かせないのが、消費財や資本財の輸入急増です。企業が新たな関税や関税引き上げを見込んで、前倒しで輸入を増やしたことが大きな要因とされています。
関税導入前に在庫を積み増しておこうとする動きは、統計上は輸入の急増として現れ、GDPを押し下げます。しかし、裏側では、需要の先食いとはいえ、国内の消費や投資への意欲が依然として強いことも示しています。
しつこいインフレと高まる期待インフレ
一方で、インフレは依然として米国経済の大きな不安要因です。国内で購入される財やサービスの物価動向を示す「国内総購入者価格指数」は上昇し、個人消費支出(PCE)物価指数も伸びました。
特に、食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は、第1四半期に前期比年率で3.4%に上方修正されました。これは米連邦準備制度理事会(FRB)が掲げるインフレ目標である2%をなお大きく上回っています。
ミシガン大学の調査によれば、消費者の1年先のインフレ期待は6.5%と、1981年以来の高水準に達しました。物価そのものだけでなく、人々の心理にもインフレが定着しつつあることは、経済運営にとって大きなリスクです。
供給サイドのショック:関税と労働供給
こうしたインフレの背景には、トランプ政権の下で打ち出された「報復関税」を含む新たな関税政策があります。これらの関税は、輸入される消費財や生産に必要な中間財のコストを押し上げ、企業の価格設定や投資判断に影響を与えています。
また、関税をきっかけに通貨が上昇すれば、米国の輸出競争力が損なわれる可能性もあります。第1四半期の輸入急増は、こうした政策の直接的な結果とみることができます。
新型コロナウイルス流行期にみられたサプライチェーン(供給網)の混乱は落ち着きつつありますが、地政学リスクや予期せぬ出来事が再び供給を揺さぶれば、コスト上昇や品不足が再燃する可能性があります。移民動向や労働参加率による労働供給の変動も、賃金や生産能力を通じて供給サイドに影響を及ぼします。
地政学リスクが投資と消費マインドを冷やす
貿易政策や国際関係をめぐる地政学的緊張も、米国経済にとって無視できない要因になっています。紛争の長期化や同盟関係の再編は、企業の先行き不透明感を高め、設備投資や雇用拡大への慎重姿勢につながりやすいと指摘されています。
耐久財など高額な消費も影響を受けやすく、「先が読めないなら大きな買い物は控えよう」という心理が強まります。調査では、地政学的な摩擦が金融市場に波及し、たとえマクロ経済指標が一見安定しているように見えても、自身の資産が脅かされるのではないかと懸念する消費者が多いことが示されています。
地政学リスクがエネルギー安全保障を揺るがせば、供給制約と不確実性をさらに悪化させ、世界の貿易や投資の流れを乱す恐れがあります。国際通貨基金(IMF)は、こうしたリスクが世界全体の成長を抑制し、その影響が米国にも跳ね返る可能性を警告しています。実際、第1四半期の米国では、輸出の減少が確認されています。
金融・財政要因という「伝統的な景気循環」
米国経済はいま、供給ショックや地政学リスクに加え、より伝統的な景気循環とも向き合っています。それが、インフレ抑制のために行われた金融引き締めの「遅れてくる影響」です。
利上げの局面はすでに終わったとの見方もありますが、過去の利上げの効果は時間差を伴って企業収益や家計の借り入れコストに表れます。これが今後の成長率をさらに押し下げる可能性があります。
同時に、巨額の財政赤字と膨らむ政府債務も長期的な懸念材料です。金利が高止まりすれば、利払い費が増え、教育やインフラなど生産性向上につながる分野への投資余地が圧迫されるおそれがあります。
ソフトランディングか、より厳しい減速か
経済学者の間では、米国が「ソフトランディング」(急激な景気後退を避けつつ成長を適度に減速させること)に成功するのか、それともより急な景気悪化に直面するのかについて、見解が分かれています。
輸入急増と関税、供給制約、地政学リスク、金融引き締めと財政赤字という複数の要因が重なり合うなかで、経済の先行きは不透明です。構造的なインフレ圧力に対処しつつ、景気を大きく冷やしすぎない政策運営が求められています。
米国経済が持続的な回復軌道に戻るためには、供給サイドの制約を和らげ、地政学的な不確実性を管理し、伝統的な景気循環の波を慎重に乗り切る必要があります。短期間で解決できる単純な処方箋はなく、時間と的確な政策対応の両方が鍵となりそうです。
本記事の内容は、中国商務部傘下の研究機関である中国国際貿易経済合作研究院の研究者・唐傑氏による分析をもとに再構成したものです。
Reference(s):
The US economy navigates a complex and challenging landscape
cgtn.com








