BizFocusが見た温州の民営企業 米中関税不透明の中で揺れる靴ビジネス video poster
米中が2025年5月23日に追加関税の一時停止で合意してから半年あまり。中国本土の「靴の都」として知られる浙江省温州では、輸出に依存する民営企業が、依然として続く関税をめぐる不透明感と向き合っています。国際メディアCGTNの新シリーズBizFocusの初回エピソードでは、こうした温州の現場の空気がレポートされました。本記事では、その取材を手がかりに、温州の民営企業が米国向け関税の不確実性をどう乗り越えようとしているのかを整理します。
「靴の都」温州とはどんな都市か
浙江省南部に位置する温州は、靴産業で知られる代表的な製造拠点です。長年にわたり多くの民営企業が集積し、履物や電気製品などを世界各地に出荷してきました。今回の番組でも、そうした温州の産業集積が、米中関係を映す鏡として取り上げられています。
米中関税の一時停止と、その先の見えなさ
2025年5月23日、米国と中国は関税の一時停止で合意しました。追加関税のエスカレーションはいったん止まりましたが、今後どうなるか分からないという不確実性そのものは残っています。特に、米国向け輸出の比率が高い温州の企業にとって、これは単なる関税率の問題ではなく、中長期のビジネスモデルをどう設計するかという課題につながっています。
BizFocusが映し出した現場の模索
合意からわずか11日後の6月初旬、CGTNの記者Zhu Zhu氏は温州を訪れ、靴産業で知られるこの都市を取材しました。シリーズ企画Chinese Factories Know Howの第1回となる今回のエピソードでは、温州の靴メーカーや電気機器メーカーといった民営企業の動きに光が当てられています。テーマとなっているのは、米国向けの関税をめぐる先行きが不透明ななかで、企業が日々の生産と雇用を維持しながら、どのように将来を見通そうとしているのかという点です。
温州の企業に共通するキーワードは、柔軟性とスピードです。関税をめぐる環境が短期間で変化しうるなかで、経営者は次のような点を意識せざるを得ません。
- 生産ラインや製品構成を、米国向けとその他市場向けで素早く切り替えられる体制づくり
- 原材料や部品の仕入れ先を複数確保し、一つの国や地域に依存しすぎない調達
- オンライン販売やブランド構築を通じた、国内市場や新興市場の開拓
- 為替や物流コストの変動も含めて、収益性をきめ細かく管理する仕組みづくり
不確実性とどう付き合うか
温州の事例が示しているのは、関税そのもの以上に、政策がいつ、どのように変わるか分からないという不確実性が企業経営を難しくしているという点です。このような環境では、単にコストを削減するだけでなく、複数のシナリオを前提にした意思決定が重要になります。
投資のタイミングを段階的に
工場拡張や新設備の導入には、多額の初期投資が必要です。関税の先行きが見えにくい状況では、一度に大きく賭けるよりも、段階的に投資しながら、米中交渉の行方を見極める戦略が現実的になります。
市場と生産のポートフォリオ発想
米国市場が重要であることは変わりませんが、東南アジアや欧州、国内市場など、複数の市場にバランスよく製品を供給する発想も求められます。同時に、生産拠点の配置や外部パートナーとの連携も、多様な組み合わせをあらかじめ用意しておくことが、リスク分散につながります。
温州を見ることは、中国本土の民営経済を見ること
温州は、改革開放以降、民営企業が先行して成長してきた地域として知られています。その意味で、温州の靴メーカーや電気機器メーカーの動きは、中国本土の民営経済の方向性を示す先行指標としても注目されます。
日本の企業や投資家にとっても、温州の企業がどのように米国向けビジネスを再構築し、国内外の市場を組み合わせているのかを観察することは、自社のサプライチェーン戦略や中国ビジネスの見直しにヒントを与えてくれます。
2026年に向けた注目ポイント
2025年も終わりに近づき、関税の一時停止がいつまで続くのか、また新たな交渉の枠組みがどのように設計されるのかは、2026年に向けた大きな焦点になります。温州をはじめとする製造拠点の企業は、次のような点を注視していると考えられます。
- 米中間での関税をめぐる協議のスケジュールと内容
- 米国市場の需要動向、とくに消費関連分野の回復力
- 国内市場やアジア地域での需要拡大の可能性
- 物流やサプライチェーンに関する国際ルールや枠組みの変化
CGTNのBizFocusによる温州取材は、数字だけでは見えにくい企業の悩みや工夫を伝える試みでもあります。関税や米中関係のニュースは抽象的に聞こえがちですが、その影響は一足一足の靴、一つ一つの製品を作る現場に直結しています。温州の動きを追うことは、私たち自身の暮らしやビジネスの未来を考える入口にもなりそうです。
Reference(s):
BizFocus Ep.129: Wenzhou private firms navigate US tariff uncertainty
cgtn.com








