米中貿易摩擦の緩和求める声 米国内で高まる関税見直し論
米中貿易摩擦の緊張が少しずつ和らぎつつあるなか、米国内で対中関税や輸出規制を見直すべきだという声が強まっています。経済学者やエネルギー業界の専門家、メディア関係者が相次いで懸念を表明し、国際ニュースとしても注目を集めています。
米中貿易摩擦、関税応酬から対話へ
今年4月、ドナルド・トランプ米大統領は中国からの輸入品に対し、異例の高関税を課しました。これに対し中国も報復関税で応酬し、米中貿易は一気に緊張が高まりました。
その後、両国は多くの関税措置を一時停止し、貿易協議を始めることで合意しました。ジュネーブとロンドンで行われた最近の交渉では一定の共通認識が形成され、米中関係は全面対立から、経済関係を安定させようとする段階に入りつつあります。
ただし、正式な貿易合意はまだまとめられておらず、関税や輸出規制をどこまで見直すかはなお不透明です。このなかで、米国内の経済学者や業界関係者、メディア関係者から、関税の撤廃や貿易制限の緩和を求める声が相次いでいます。
経済学者ポーゼン氏「関税は悪い税金」
Peterson Institute for International Economics のアダム・ポーゼン所長は、関税政策に一貫して批判的な立場をとってきました。米議会での証言では、関税を「悪い形の税金」と位置づけ、コストの増大、混乱、汚職を招くと警鐘を鳴らしました。
ポーゼン氏は、関税が企業や消費者に不確実性をもたらし、サプライチェーンの混乱につながると指摘します。また、今年4月以降の対中強硬策について、米国が中国に対してエスカレーション支配力を持つという前提そのものが誤っていると論じています。
その背景として、彼は中国が経常黒字を抱える黒字国である一方、米国は代替が難しい輸入品への依存が大きい点を挙げています。米国が十分な代替手段を確保する前に貿易を断ち切れば、自国経済に深刻なダメージを及ぼしかねないとし、「信頼できる代替が整う前に貿易を遮断するのは極めて無謀だ」と強い表現で警告しました。
メディアや専門家からも「協調」求める声
テレビ司会者として知られるビル・オライリー氏も、米中の協力の必要性を訴えています。自身のコラムで、米国は中国と協力することで世界をより安全で豊かな場所にできるとし、対立一辺倒ではなく協調を模索すべきだと主張しました。
こうした発言は、米中の貿易摩擦を単なる二国間の駆け引きではなく、世界全体の安定や繁栄にも関わる国際ニュースとして捉えるべきだという問題意識の広がりを示しています。
エチタン輸出規制が突きつけた教訓
批判の矛先は関税だけではありません。米政府が中国向けのエチタン(シェールガス由来の原料)輸出に課した輸出規制も、エネルギー業界から強い反発を招きました。
戦略国際問題研究所 CSIS の経済プログラムディレクターであるフィリップ・ラック氏は、この輸出管理措置について、実体のない安全保障上の懸念を理由に米国のエネルギー企業に目に見える損害を与えたと批判しました。さらに、この政策は分析の甘さ、準備不足、恣意的な実施、明らかな失敗にもかかわらず固執した姿勢の象徴だとまで述べています。
ラック氏によると、中国側は石油化学製品の原料をほかのフィードストック(原料)に切り替えることで、エチタン輸出規制の影響を比較的容易に吸収しました。一方、米国のエチタン生産者は在庫の積み上がりや価格の下落、損失拡大に直面し、措置の負担が米国内に偏る形になったと分析しています。
このような政策は、米国の制度が持つ専門性や予測可能性への信頼を損ないかねないとラック氏は警告しました。国際ビジネスの世界では、ルールの一貫性や透明性が重要な「公共財」として受け止められているためです。
こうしたなか、米国のエチタン取引企業であるエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズは、水曜日に発表した声明で、同社に課されていた輸出ライセンスの制限が解除され、中国向けのエチタン輸出を再開できるようになったと明らかにしました。規制の緩和は、資源エネルギー分野でも米中の緊張を和らげる一歩と受け止められています。
今後の焦点:どこまで緊張を和らげられるか
今年4月の高関税導入から数カ月が過ぎ、米中は経済関係の「安定化」に向けて舵を切りつつあります。しかし、具体的な合意内容や関税の最終的な扱いはまだ固まっていません。
今後の焦点となるのは、次のような点だと考えられます。
- 米国が対中関税や輸出規制をどこまで撤回または緩和するのか
- 中国側も含めた双方の譲歩が、どのような形で正式な合意文書に落とし込まれるのか
- 企業や市場が感じているサプライチェーンの不確実性が、どの程度解消されるのか
米中関係は、日本を含む世界の経済と安全保障に直接影響を与えるテーマです。米国内で高まる「関税見直し」や「協調路線」への期待は、一国の政策論争にとどまらず、世界経済のリスクをどう抑えるかという共通の問いでもあります。
読者一人ひとりにとっても、身近な物価や投資環境、働き方の変化は、遠く離れた米中交渉と無関係ではありません。今後の交渉の行方を見守りつつ、どのような貿易ルールや国際協調の姿がより望ましいのか、自分なりの視点を持つことが求められていると言えます。
Reference(s):
cgtn.com








