AI格差をなくすには? 世界が協力して「AI for good」を実現する道 video poster
AIの開発と活用が世界的に加速するなか、「その恩恵は本当にすべての人に届くのか」という問いが強まっています。CGTNのインタビューで、Beijing Institute of AI Safety and Governanceの責任者の一人であるZeng Yi氏は、デジタルとAIの格差を埋め、AIインフラへのアクセスを広げ、「誰一人取り残さない」ことの重要性を強調しました。本稿では、このメッセージが意味するものを国際ニュースの視点から整理します。
CGTNインタビューで語られた「AI for good」
インタビューのタイトルは英語で、Countries should come together to realize AI for good and for all。直訳すれば「各国は協力して、すべての人のための善いAIを実現すべきだ」といった意味になります。
Zeng氏はその中で、「デジタルとAIの格差を埋め、より多くの人がAIインフラにアクセスできるようにし、誰一人取り残さないことが重要だ」と語りました。端的に言えば、AIの利益が一部の国や大企業に偏らないようにしよう、という呼びかけです。
デジタル格差から「AI格差」へ
インターネットやスマートフォンの普及度合いの差を指して「デジタル格差」と呼びますが、Zeng氏が指摘するのは、その先に広がる「AI格差」です。
AI格差とは、例えば次のような差を含む概念だと考えられます。
- 高性能な計算資源やクラウド環境など、AIインフラへのアクセスの有無
- 自国の言語や文化に対応したAIツールの有無
- AIを安全かつ効果的に活用できる人材や教育機会の差
こうした差が固定化されると、一部の国や地域だけがAIで生産性を高め、他の国や地域は取り残される危険があります。Zeng氏のメッセージは、この流れを早い段階で変えようとするものだと言えます。
「AIインフラへのアクセス」を広げる意味
Zeng氏は、AIインフラへのアクセス拡大を特に重視しています。AIインフラとは、高性能なコンピューターやデータセンターだけでなく、開発プラットフォーム、ソフトウェア、データセットなど、AIを動かすために必要な基盤全体を指します。
アクセスを広げることには、少なくとも次のような意味があります。
- スタートアップや研究者が、巨額の設備投資なしにAIを試せるようにする
- 行政や教育、医療などの分野で、より多くの人がAIサービスを利用できるようにする
- 特定の企業や国に依存しすぎない、多層的なAIエコシステムを育てる
インフラが一部に集中したままでは、「AIを使える側」と「使えない側」の溝は広がる一方です。だからこそ、「誰一人取り残さない」という視点が重要になります。
各国が協力するときに意識したい3つのポイント
インタビュータイトルにあるように、「AI for good(善のためのAI)」を実現するには、各国が協力することが前提になります。その際、次の3つのポイントがカギになりそうです。
1. 共通の原則とルールづくり
AIの安全性やプライバシー保護、公平性などについて、国際的に共有できる原則やルールを整えていくことが求められます。これにより、AI技術が悪用されたり、一部の人だけを不当に利することを抑えやすくなります。
2. 途上国や新興国を支える仕組み
計算資源や専門人材が限られている国や地域に対しては、技術協力や人材育成の支援が重要です。共同研究やオープンな学習プログラムを通じて、AIインフラへのアクセスを広げることができます。
3. 多様な主体の連携
AIのルールづくりや活用は、政府だけでは完結しません。研究機関、企業、市民社会など、多様な主体が対話しながら合意を形づくることが、長期的な信頼につながります。Zeng氏のような研究者の発信は、その出発点の一つと言えるでしょう。
日本の読者にとっての示唆
日本でも、生成AIや自動化技術の導入が進みつつありますが、「AI格差」という視点で見ると、国内外で見えてくる課題があります。
- 地方や中小企業が、都市部や大企業と同じようにAIを活用できているか
- 高齢者やデジタルに不慣れな人が、AIサービスから排除されていないか
- 日本語や地域の方言、文化的な文脈に十分対応したAIが整っているか
こうした問いは、Zeng氏が語る「誰一人取り残さないAI」と深くつながっています。国際ニュースとしての発言でありながら、私たちの日常にも直接関わるテーマです。
個人としてできる小さな一歩
AIの国際ルールづくりに直接関わることは難しくても、日々の行動を通じて「AI for good」を支えることはできます。
- AIがどのように動き、どんな限界や偏りがあるかを学ぶ(AIリテラシーの向上)
- 利用するサービスのプライバシーポリシーや説明を確認し、納得できる使い方を選ぶ
- SNSなどで、多様な立場からの意見やニュースをフォローし、議論に参加する
「誰一人取り残さないAI」へ
Countries should come together to realize AI for good and for all――このメッセージは、単なるスローガンではなく、AI時代の方向性を問う具体的な課題提起でもあります。
デジタルとAIの格差をどう埋めるのか、AIインフラへのアクセスをどう広げるのか。Zeng Yi氏の発言は、各国の政策担当者だけでなく、AIを使う一人ひとりに向けられた問いかけでもあります。
AIがごく一部の人だけのものになるのか、多くの人の可能性を広げるツールになるのか。その分かれ目は、「AI for good」を本気で目指すかどうかにかかっています。
Reference(s):
Countries should come together to realize AI for good and for all
cgtn.com








