中国を知る国際ニュース:ハイナンのチョコ、深海養殖、京劇の新しいかたち video poster
国際ニュースを日本語で追いかける読者に向けて、中国各地の「伝統×イノベーション」を切り取った番組「Meet China」第40回の内容をまとめます。海南のチョコレート工場、南シナ海の深海養殖プラットフォーム、京劇の若手スターという三つの物語から、経済成長と文化継承、環境保護がどのように同時に進もうとしているのかを見ていきます。
国際ニュース番組が伝える三つの現場
今回紹介されるのは、中国の多様な地域で進むイノベーションの現場です。海南自由貿易港ではカナダ出身の起業家がチョコレート工場を立ち上げ、南シナ海では最先端の深海養殖施設が稼働し、北京では京劇の若手スターが古典芸能を現代に引き寄せています。いずれも「外から来たもの」と「その土地に根ざしたもの」を組み合わせ、新しい価値を生み出している点が共通しています。
海南自由貿易港で育つカナダ人のチョコレート工場
最初の舞台は中国南部のリゾート地としても知られる海南です。ここでカナダ人起業家のモン・シンリーさんは、海南自由貿易港の制度を活用しながらチョコレート事業「グリーン・チョコレート・ワークス(海南)」を成功させつつあります。
2021年の海南エキスポが転機に
モンさんが海南に可能性を見いだしたきっかけは、2021年に開かれた海南エキスポでした。自由貿易港としての制度や物流の優位性が紹介される中で、当時チョコレートの販売代理をしていたモンさんは、自ら製造に乗り出す決断をします。
現在、工場は輸入された技術やレシピと、現地で整備された機械設備を組み合わせ、1日に最大800キロのチョコレートを生産できる体制を整えています。行政手続きの簡素化やインフラ整備のスピード感も、事業拡大を後押ししているとされています。
輸入の知見と地元資源の掛け合わせ
海南は熱帯気候を生かしたカカオ栽培にも取り組んでおり、地元産のカカオ豆はすでに国際的な評価を得つつあります。グリーン・チョコレート・ワークスは、海外で培ったチョコレートづくりの知見と、こうした地元のカカオを組み合わせることで、独自の製品を生み出しています。
パッケージには海南のランドマークが描かれ、島の風景や文化がデザインとして組み込まれています。チョコレートは単なる食品ではなく、海南という土地を世界に知ってもらう小さな「メッセンジャー」としての役割も担っていると言えます。
自由貿易港が引きつける多様な人材
モンさんの会社だけでなく、カナダ人のブライアン・ジャミソンさんや、ウルグアイの牛肉輸出企業など、さまざまな海外の事業者が海南に注目しています。税制面での優遇や部門横断のサポート体制、活発な外国人コミュニティなどが、その背景にあるとされています。
海南自由貿易港は、海外の起業家や投資家を呼び込みながら、地域の産業や文化と結びついた新しいビジネスを生み出す実験場にもなりつつあります。
南シナ海の深海養殖が担う食料安全保障
次の舞台は南シナ海、珠海近海の温暖な海域です。中国は世界の養殖魚の3分の1以上を生産する養殖大国であり、そこで育てられる魚は世界中の人々の重要なタンパク源になっています。この養殖を、より持続可能な形で発展させようとしている象徴的な施設が「Lingding Ranch No.3」です。
Lingding Ranch No.3という実験場
国際メディアCGTNの記者ショーン・カレブス氏が訪れたLingding Ranch No.3は、南シナ海の沖合に設置された大型の養殖プラットフォームです。ここでは新世代の漁師たちが、海の資源を守りながら、大量の魚を安定的に供給する方法を模索しています。
波や風に耐える構造物の中で、魚の生育環境を管理しつつ、周辺の海洋環境への影響を抑えることを目指した取り組みが進められています。陸上の養殖場とは異なるオフショア型の施設は、限られた沿岸スペースへの負荷を減らすという意味でも注目されています。
大量生産と海の保全をどう両立するか
Lingding Ranch No.3の特徴は、大量のタンパク源を生み出すことと、海洋資源を守ることを同時に目指している点です。世界的に水産資源の持続可能性が問われる中で、こうした試みは「どのように食を支えながら海を守るのか」という問いへの一つの答えになろうとしています。
中国の深海養殖の動きは、食料安全保障と環境保護を両立させようとする世界的な潮流の中で、今後も注目されるテーマになりそうです。
京劇のスターChang Qiuyueさんが示す「継承と進化」
三つ目の物語の舞台は、中国文化の「冠」とも言われる伝統芸能、京劇です。この分野で存在感を高めているのが、Xunスクールの継承者として紹介される京劇俳優のChang Qiuyue(チャン・チウユエ)さんです。
チャンさんは、幼い頃から鮮やかな衣装に憧れ、やがてXunスクール特有の歌い方や細やかな所作、感情表現を徹底的に学びました。番組では、彼女が長年の稽古を経て、伝統的な技を自分のものにしていく過程が描かれています。
衣装をアップデートし、古典を掘り起こす
チャンさんの挑戦は、単に技を受け継ぐだけにとどまりません。伝統的な衣装の要素を残しながら、現代的な美意識を取り入れたデザインにアレンジするなど、ビジュアル面でも新しい試みを続けています。
さらに、長く上演されてこなかった古典作品「Dan Qing Yin」のような演目を復活させたり、若い観客が感情移入しやすいように台本の構成や見せ方を工夫したりと、作品そのもののアップデートにも取り組んでいます。
若い観客とどうつながるか
こうした工夫の背景には、若い世代に京劇をどう届けるかという問題意識があります。派手な演出に頼るのではなく、Xunスクールの繊細な声のコントロールや、指先まで神経が行き届いた動き、複雑な人間心理を描くストーリーテリングといった京劇の本質的な魅力を保ちながら、現代の観客と橋渡しをしようとしているのがチャンさんのスタイルです。
彼女の活動は、伝統芸能が「昔のもの」として保存されるだけでなく、現代の観客と共に変化し続ける生きた文化であり得ることを示しています。
伝統とイノベーションが同時に進む時代に
海南のチョコレート工場は、自由貿易港という新しい枠組みの中で、地元のカカオと海外のノウハウを掛け合わせています。南シナ海のLingding Ranch No.3は、深海養殖という技術を通じて、食料安全保障と海洋保全の両立を目指しています。京劇のチャンさんは、古典芸能の核となる技を守りながら、衣装や演目を現代的に再解釈しています。
三つの現場に共通しているのは、「伝統か、イノベーションか」という二者択一ではなく、「伝統とイノベーションをどう組み合わせるか」という発想です。経済、環境、文化という異なる領域で、それぞれのバランスを模索する姿が浮かび上がります。
日本でも、地域の伝統工芸や漁業、舞台芸術をどう次世代につなぐかが課題となっています。中国のこうした試みを国際ニュースとして追うことは、自分たちの社会の課題を別の角度から考え直すきっかけにもなりそうです。
ニュースをきっかけに、身近な人と「自分の地域ではどんな伝統とイノベーションの組み合わせがあり得るか」を話してみるのも、一つの面白い対話になるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








