中国を知る:家電の都・慈渓からギター、野球、魚拓まで video poster
中国の地方都市や工場や工房が、実は世界の暮らしと深くつながっている――。中国の国際メディアによるシリーズ番組「MEET CHINA」第32回は、家電、ギター、野球、伝統アートという4つの切り口から、中国の「ものづくり」と人々の暮らしの現在を映し出しています。日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、統計だけでは見えない中国の一面を知る手がかりになりそうです。
世界最大級の「家電の都」慈渓
東部の小さな都市・慈渓(Cixi)は、いまや世界最大のアイロンとヒーターの生産地であり、中国における最大の家電製造ハブでもあります。さらに、国内で最も早く域内総生産(GDP)1000億元(約140億ドル)を超えた県級地域のひとつとされています。
番組では、原材料から部品、組立、最終製品までが同じ地域で完結する「フルチェーン」の強みが、慈渓の競争力を支えていると紹介されています。このような産業集積があるからこそ、世界中の家庭に届けられる家電が、地方都市の工場から生まれていることがわかります。
- 世界最大級の家電生産拠点が、大都市ではなく「小さな町」にあるという意外性
- サプライチェーン全体を一地域で抱えることの強みとリスクの両面
ギター好き必見、正安は「世界の工房」
中国の貴州省・正安県は、「世界のギター7本のうち1本が生まれる場所」とされるほど、ギター製造の一大拠点です。フェンダー、アイバニーズ、Natasha Guitars などの世界的ブランドの製造拠点が集まり、ドナルド・トランプ氏のMake America Great Againキャンペーン向け限定ギターもここで生まれました。
高度な技術力は、アメリカのロック史に名を残す名工カート・ヘンドリック氏のような世界的ルシアー(ギター職人)も引き寄せ、「音」にこだわる人々の巡礼地のような場所にもなっているといいます。最先端の技術と職人の手仕事が同居する様子は、「ギター版シリコンバレー」とも表現されています。
私たちが手にする楽器の裏側には、地方の小さな県と世界の音楽シーンが直接つながっている、というグローバルなサプライチェーンの現実が見えてきます。
深圳で育つ野球、台湾出身コーチの挑戦
南部の都市・深圳では、2018年にやってきた卓敏玲(Zhuo Minling)コーチの存在が、野球の広がりを象徴する存在として紹介されています。台湾の師範大学を卒業した彼女は、学生から指導者へと早い段階で転身し、深圳で少年少女チームを率いて数々のトロフィーを手にしてきました。
近代的な都市である深圳で暮らしながら、卓さんは自分自身も成長していると感じているといいます。彼女の物語は、スポーツを通じて中国本土と台湾の人材や経験が行き来し、子どもたちの可能性を広げている姿を映し出しています。
魚が泳ぐキャンバス──象山でよみがえる魚拓
象山では、「魚拓」とも呼ばれるフィッシュラビングという古い技法が、あらためてよみがえっています。魚拓は、本物の魚に墨を塗り、紙や布に押し当てて魚の姿を写し取る表現です。
かつて漁師たちは、イカスミから作ったインクで死んだ魚に色をつけ、その上に赤い紙を押し当てて印刷していたとされます。この技法の公認継承者である呂生貴(Lu Shenggui)さんは、現地調査や漁師への聞き取りを重ねながら、失われかけた技を現代によみがえらせてきました。伝統文化の継承が、地域のアイデンティティや新たな価値づくりにもつながりうることを示す例といえます。
4つの物語が映す、中国の「今」をどう見るか
家電の世界拠点、ギター工房の集積地、成長する都市スポーツ、復活する伝統技法──「MEET CHINA」の今回のエピソードに登場する4つの場所は、どれも一見バラバラに見えます。しかし、そこにはいくつかの共通点が見えてきます。
- 世界のサプライチェーンの要所としての地方都市・農村の役割
- グローバルブランドと地元の技術・人材の組み合わせ
- スポーツや文化を通じた地域の新たなアイデンティティづくり
- 古い技術を現代に「翻訳」し直すことで生まれる価値
国際ニュースというと、どうしても首都や大企業、外交に目が行きがちです。しかし、今回紹介されたようなローカルな物語からは、統計や政策だけでは見えない中国の姿が立ち上がってきます。日々使っている家電や楽器の「生まれた場所」を意識してみると、私たちの暮らしがどれほど国境をまたいだネットワークの上に成り立っているかが、少し違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








