現代の徽商とは?関税の壁に挑む安徽の起業家【中国ニュース】
関税の壁が高まる国際環境のなかで、中国・安徽省の起業家たちが静かに動き出しています。かつて商人の代名詞とされた徽商(きしょう)の精神を受け継ぐ「現代の徽商」が、生産体制を見直し、新たな市場を切り開こうとしているからです。
「風待ち」をしない本物の徽商という発想
今回のテーマの出発点になっているのは、英語のフレーズで語られた「本物の徽商は風を待たない、自ら航路を描く」という考え方です。市場環境の追い風を待つのではなく、自分たちでルートを選び、リスクを取りながら進むという姿勢を表しています。
この言葉は、歴史的に商業で知られてきた安徽と、その系譜を引く現在の起業家像を重ね合わせたものといえます。変化の激しい国際経済のなかで、「待つより動く」ことが生き残りの条件になりつつある現状を象徴しているとも読めます。
高まる関税障壁と安徽の起業家たち
国際ニュースでも繰り返し伝えられているように、世界各地で関税や貿易制限が強化される動きが続いています。こうした環境変化は、輸出に依存してきた企業にとって大きなプレッシャーです。
安徽の起業家たちは、このプレッシャーを受け身で受け止めるのではなく、次のような方向で動き始めているとされています。
生産能力を「作り替える」動き
第一に挙げられるのが、生産能力そのものの見直しです。単に工場の稼働を増やす・減らすといった調整ではなく、何をどこで、どのような工程で作るのかという構造を組み替える動きです。
例えば、特定の国向けに偏っていた生産ラインを、多様な市場向けの製品に対応できるよう柔軟にしようとする試みや、工程の自動化・省人化を進めてコスト構造を変えるといったアプローチが考えられます。関税障壁が高まっても、競争力を維持できる体質を目指しているといえます。
新しい市場・分野への挑戦
もう一つの柱は、「新しい地平を切り開く」動きです。これは、従来とは異なる地域や分野にビジネスを広げる試みとして表れます。
具体的には、これまであまり重視してこなかった新興市場への輸出拡大や、海外市場だけに頼らず中国国内の需要を掘り起こす方向へのシフトなどが含まれます。また、製造そのものにとどまらず、設計やアフターサービスなど、付加価値の高い領域に踏み出すことも「新しい地平」の一部といえるでしょう。
こうした多角化の発想は、関税という一つのリスク要因への依存度を下げ、事業全体の安定性を高める狙いにつながっています。
ドキュメンタリーが映す「現代の徽商」
2025年7月13日には、国際報道機関であるCGTNのドキュメンタリーシリーズ『Chinese Factories Know How』第3話が公開されました。この回では、中国の製造現場とともに、現代の徽商の姿が取り上げられています。
作品では、関税障壁の高まりという逆風のなかでも、安徽の起業家たちが自らの生産能力を作り替え、新しい市場を開拓しようとする姿勢が強調されています。単に苦境を訴えるのではなく、自分たちで解を探そうとする目線が、シリーズの重要な視点となっています。
こうした映像作品を通じて、数字だけでは見えにくい企業の判断や、地域の産業を支える人々の思考が立体的に浮かび上がります。国際ニュースを理解するうえで、「現場の物語」に触れる価値は小さくありません。
日本の読者にとっての示唆
関税や地政学リスクといった要因は、日本企業や日本のスタートアップにとっても無関係ではありません。安徽の「現代の徽商」の動きから、日本の読者が参考にできそうな視点をいくつか挙げてみます。
- 追い風待ちではなく、前提条件を変える発想:市場環境が不利になったとき、値下げやコスト削減だけに頼るのではなく、ビジネスモデルやターゲット市場そのものを見直す。
- 能力の再設計:今持っている設備や人材を前提に考えるのではなく、「これから必要になる能力」に合わせて組み替えていく。
- 複数の市場・分野に分散する:一つの国・一つの顧客に依存しすぎないよう、事業ポートフォリオを意識的に広げる。
こうした点は、中国・安徽という特定の地域の話にとどまらず、グローバルな競争に向き合うすべての企業に共通する課題でもあります。
「読み流さずに考える」国際ニュースとして
今回取り上げた「本物の徽商は風を待たない」というメッセージは、単なるスローガンではなく、実際の企業行動の変化と結びついています。関税の壁というマクロな国際ニュースの裏側で、現場の起業家たちがどのように判断し、どのように動いているのかを想像してみることは、ニュースを自分ごととして考える手がかりになります。
情報があふれる時代だからこそ、一つひとつの出来事を「誰が、どんな戦略で乗り越えようとしているのか」という視点から読み解いてみると、ニュースの風景が少し違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








