トランプ氏が銅輸入に50%関税 世界市場とサプライチェーンに走る衝撃
リード:なぜ銅の50%関税がニュースになるのか
トランプ米大統領が今年発表し、2025年8月1日に発効した銅輸入への一律50%関税は、世界の銅市場とサプライチェーンに大きな衝撃を与えました。発表直後から銅価格は急騰し、インフラ投資やクリーンエネルギーなど、幅広い分野への影響が懸念されています。
この記事のポイント
- トランプ米大統領が銅輸入に一律50%関税を導入(2025年8月1日発効)
- 発表直後、ニューヨークのCOMEX銅先物は13%急騰し、1ポンド5.61ドルまで上昇
- 米国は銅の供給が構造的に不足し、需要の45〜50%を輸入に依存
- 関税が米国内の製造業、インフラ、クリーンエネルギー開発のコストを押し上げる可能性
- シティグループは世界の銅貿易フローを変える「転換点」と評価
何が起きたのか:銅輸入に50%関税
トランプ米大統領は、国家安全保障上の懸念を理由に、すべての輸入銅に対して50%の追加関税を課す措置を打ち出しました。この関税は2025年8月1日に発効し、米国向けの銅取引に一気に不透明感が広がりました。
関税実施が正式に発表される前の段階で、大統領が火曜日に銅関税の可能性をほのめかしただけで、市場は即座に反応しました。ニューヨークの商品取引所であるCOMEXでは、その日の銅先物価格が13%も急騰し、その後の木曜アジア時間の取引にかけてもボラティリティ(価格変動の大きさ)が高い状態が続きました。価格は一時1ポンド5.61ドルまで上昇し、投資家の不安心理を象徴する動きとなりました。
米国の銅不足と、関税が抱えるジレンマ
今回の関税は、米国が銅の供給を海外に大きく依存している現状への問題意識から出てきた政策です。サクソバンクのコモディティ戦略責任者であるオーレ・ハンセン氏は、米国が「構造的な銅不足」にあると指摘しています。この「構造的」という言葉には、短期の景気循環ではなく、長期にわたる供給能力の不足という意味合いが込められています。
米地質調査所のデータによると、2024年の米国の銅鉱山生産は約110万トンで、前年から3%減少し、世界全体のわずか4.8%にとどまりました。一方で、ウォール・ストリート・ジャーナルやポリティコなど複数の報道によれば、米国の銅需要の45〜50%は輸入で賄われています。国内生産だけでは需要を満たせていない構図がはっきりと浮かび上がります。
ハンセン氏は、このような状況のもとで高関税を導入すれば、米国向け銅に上乗せされる「関税プレミアム」により、銅そのものの調達コストが上がるだけでなく、製造業やインフラプロジェクト、クリーンエネルギー開発のコストも実質的に押し上げられると警告しています。国内産業保護を狙った政策でありながら、短期的には企業や消費者にとって負担増につながるというジレンマを抱えています。
市場の反応:価格急騰と在庫積み増し
金融機関もこの動きを重大な転換点として受け止めています。シティグループは、この銅関税を「米国向けの大口銅輸出に事実上の終止符を打ち、世界の銅貿易フローを組み替える転換点」と位置づけました。米国市場に向けた銅の輸出が細ることで、余剰分が他地域に向かうのか、それとも全体として供給が絞られるのかは、今後の焦点となります。
マクォーリーのアナリストは、ロイターに対し、2025年上期の米国の銅輸入量は88万1000トンに達し、同期間の推計国内需要44万1000トンのほぼ2倍になったと分析しています。このギャップは、関税発効前に輸入業者が在庫を積み増していることを示しているとされます。
関税が実際に発効した後は、こうして積み上がった在庫を取り崩す動きが進み、輸入の勢いは一時的に鈍る可能性があります。ただし、その過程で価格のトレンドが変化し、新たな需給バランスが生まれる可能性があるとマクォーリーは見ています。関税が単なる一時的ショックにとどまるのか、それとも長期的な価格構造の変化につながるのかは、この在庫調整の行方に大きく左右されそうです。
銅はどこに使われるのか:製造業からクリーンエネルギーまで
銅は「産業の血管」とも呼ばれるほど、現代経済のあらゆる場面で使われています。建設や送配電網といった伝統的な分野に加え、電気自動車、半導体、再生可能エネルギーの設備など、次世代の産業やクリーンエネルギー転換にも不可欠な素材です。
米国の業界団体からは、原材料価格の上昇がプロジェクト予算を圧迫し、とりわけインフラ整備や再生可能エネルギー関連の投資計画にブレーキをかけかねないとの懸念が出ています。また、すでにインフレやエネルギーコストの上昇に直面しているエネルギー多消費型産業にとっては、銅価格の上乗せが国際競争力をさらに弱める要因になりかねません。
銅は国際市場で取引されるコモディティであるため、米国の政策変更は米国内だけでなく、世界全体の価格形成に影響を与えます。日本を含む他の国や地域の企業にとっても、銅価格の高止まりや価格変動の拡大は、コスト管理と調達戦略の見直しを迫る要因になり得ます。とくに電線、電気機器、自動車、再エネ設備など、銅使用量の多い分野では、その影響を注意深く見ておく必要があります。
これからの焦点:関税の設計と「新しい均衡」
マクォーリーのコモディティ戦略責任者であるマーカス・ガーヴィー氏は、ブルームバーグの取材に対し、関税の最終的な影響は、その詳細設計に大きく左右されると述べています。具体的には、実効税率のほか、どの形態の銅(鉱石、精錬品、スクラップなど)が対象になるのか、既存契約に対する猶予期間があるのかといった点が重要だと指摘しました。
現在も、市場参加者や産業界は、適用除外や運用ルールの細かな違いによって、どの程度の追加コストが発生し、どこまでサプライチェーンの再編が必要になるのかを注視しています。
読者として押さえておきたい今後のチェックポイントは、次のような点です。
- 米国のインフラ投資やクリーンエネルギー関連プロジェクトの計画が、銅価格の上昇を受けて見直されるかどうか
- 銅価格が高止まりするのか、在庫放出などを経て落ち着きを取り戻すのか
- 他の資源や金属でも、同様の関税措置や供給制限といった動きが広がるかどうか
- 日本やアジアの企業が、調達先の多様化やリサイクル強化などを通じて、価格変動リスクへの耐性をどこまで高められるか
銅のような基礎素材をめぐる政策は、一見すると遠い国のニュースに見えますが、実際には電気料金や家電、自動車、住宅の価格など、私たちの日常にもじわじわと影響してきます。今回の銅関税をきっかけに、資源と産業、そしてエネルギー転換をめぐる世界の力学を、改めて見直すタイミングにしてみることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
Trump slaps 50% tariff on copper imports, rattling global markets
cgtn.com








