中国副総理がデジタル経済協力強化を提案 SCO天津フォーラム2025
中国の丁学祥(ディン・シュエシャン)副総理が、中国北部の天津市で開かれた2025年上海協力機構(SCO)デジタル経済フォーラムの開幕式で基調演説を行い、SCO各国とのデジタル経済協力を一段と強化するよう呼びかけました。国際ニュースとしても、データやインフラ、デジタル安全保障をめぐる今後のルールづくりにかかわる重要な発言といえます。
SCOデジタル経済フォーラム2025とは
今回のフォーラムは、中国の国家データ局と天津市政府が共催し、中国内外から約600人の政府関係者、企業経営者、研究者などが参加しました。舞台となったのは中国北部の天津市で、デジタル経済に関する国際的な対話と協力の場として位置づけられています。
丁副総理は、中国共産党中央政治局常務委員も務めており、会合ではデジタル化がもたらす機会と課題の両方に向き合う必要性を強調しました。そのうえで、上海協力機構首脳会議での合意や「グローバル・デジタル・コンパクト(Global Digital Compact)」などの国際的なコンセンサスの実行を加速すべきだと述べました。
丁副総理が示した4つの柱
基調演説の中で丁副総理は、SCOにおけるデジタル経済協力の方向性として、おおまかに次の4点を挙げました。
- デジタル経済協力の推進と政策・開発計画の連携強化
- デジタルインフラの接続性向上と「デジタル・シルクロード」の構築
- デジタル技術イノベーションの成果共有とデジタル経済の恩恵拡大
- 多国間・協調的なデジタル安全保障ガバナンスの構築
1. デジタル経済協力と政策連携の強化
丁副総理はまず、急速に進むデジタル化がもたらすチャンスと課題に対応するため、SCO首脳会議で達成された重要なコンセンサスとグローバル・デジタル・コンパクトの実施を加速する必要があると指摘しました。
そのうえで、次のような点を挙げました。
- SCO加盟国間でデジタル経済に関する政策コミュニケーションを強めること
- 各国の開発計画同士の「すり合わせ(アラインメント)」を進めること
- SCOデジタル経済フォーラムなど、既存の協力プラットフォームを最大限活用すること
こうした取り組みによって、SCO地域のデジタル経済発展に「活力」と「原動力」を注入していくべきだと訴えました。
2. デジタルインフラと「デジタル・シルクロード」
次に丁副総理は、デジタルインフラの接続性を高める重要性を強調しました。ここでいうデジタルインフラには、通信ネットワークだけでなく、計算能力(コンピューティング・パワー)の配分やデータ処理能力などが含まれます。
具体的には、
- 計算資源を必要な場所に効率よく配分する「コンピューティング・パワーのスケジューリング」能力の強化
- 大量データを処理する力(データ処理能力)の向上
- これらを土台にした、高品質な「デジタル・シルクロード」の構築
を通じて、より広範で安定性が高く、需要に素早く応えられる地域のデジタルインフラシステムをつくるべきだと述べました。
3. デジタル技術の成果共有と包摂
丁副総理はまた、デジタル技術のイノベーション成果を共有し、デジタル経済の恩恵へのアクセスを高めることの重要性を訴えました。
その狙いとして、
- デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)を広く進めること
- すべての国がデジタル経済発展の「高速道路」に乗れるようにすること
を挙げ、デジタル化による格差を縮め、より多くの人や企業がデジタル技術を活用できるようにする視点を示しました。
4. デジタル安全保障と国連中心のガバナンス
さらに丁副総理は、デジタル分野の安全保障について、多国間で協調するガバナンス体制を構築する必要があると呼びかけました。
具体的には、
- デジタル安全保障に関する国際協力を強化すること
- グローバルなデジタル・ガバナンスとルール形成の面で、国連が主導的な役割を果たすことを支持すること
を挙げ、サイバー空間やデータ、プラットフォームをめぐるルールづくりを、一部の国や地域だけではなく、国連を中心とした多国間の枠組みで進めるべきだとの姿勢を示しました。
なぜこの国際ニュースが重要なのか
今回の天津でのSCOデジタル経済フォーラムは、いくつかの点で今後のデジタル国際秩序を考える手がかりになります。
- インフラから「計算力」へ: 通信ネットワークに加えて、コンピューティング・パワーやデータ処理能力といった、新しい意味でのインフラが重視されていること。
- 包摂性(インクルージョン)の強調: デジタルの恩恵を「すべての国」が享受できるようにするというメッセージは、デジタル格差をどう縮めるかというグローバルな課題と重なっています。
- 国連中心のルールづくり: 国連の枠組みを通じたデジタル・ガバナンスの強化は、各国の思惑が交錯するなかで、多国間協調の方向性を示すものといえます。
読者が押さえておきたいポイント
デジタル経済は、テック企業だけでなく、製造業やサービス業、スタートアップ、さらには個人の働き方にも大きな影響を与えます。今回のSCOフォーラムで示された方向性は、次のような論点につながっていきそうです。
- データや計算資源を国境をまたいでどう共有・活用していくのか
- デジタル化の恩恵を、発展段階の異なる国・地域にどう広げていくのか
- サイバー攻撃やデータ流出などのリスクに対し、多国間でどのようなルールと協力体制を築くのか
天津で開かれたSCOデジタル経済フォーラム2025は、こうした問いに対して、各国がどのような方向をめざすのかを読み解く一つの手がかりになります。今後、SCOの枠組みや国連での議論がどのように具体化し、デジタル経済やデジタル安全保障のルールとして現れてくるのか、継続的に注目する必要がありそうです。
Reference(s):
Chinese vice premier calls for enhancing digital economy cooperation
cgtn.com








