ブラジルと米国の関税衝突:コーヒー価格と世界市場への影響
要点:ブラジルと米国の関税衝突を整理する
ブラジルと米国の間で、ブラジル製品に対する関税をめぐる摩擦が強まっています。トランプ米大統領がブラジルからの輸入品に一律50%の関税を課すと発表し、ルラ大統領が報復関税を示唆したことで、両国関係だけでなく、コーヒーやオレンジジュースなど日常的な商品の価格への波及も懸念されています。
- トランプ米大統領がブラジル製品に50%関税を表明
- ルラ大統領は報復を可能にする 相互主義法 の発動に言及
- ブラジル側は 米国が貿易赤字だとする主張に反論し 政治的動機と批判
- コーヒーやオレンジジュースなどの価格上昇リスクが世界市場で意識されている
トランプ米大統領の50%関税方針とは
発端は 水曜日の午後にトランプ米大統領が発表した ブラジルからの輸入品すべてに50%の関税を課す という方針でした。新たな関税は8月1日に適用されるとされ 当時の発表では あらゆるブラジル製品が対象になると説明されています。
トランプ氏は自身のSNSプラットフォーム Truth Social に投稿したルラ大統領宛ての書簡で この措置の理由として 次のような主張を掲げました。
- ブラジルによる自由選挙への攻撃
- 米国民の言論の自由に対する攻撃
- ブラジルとの間の 持続不可能な対米貿易赤字
こうした政治的な言葉とともに 50%の関税が一方的に宣言された形です。
ブラジルの対応:報復関税カードと外交的抗議
これに対し ブラジルのルラ大統領は テレビ局のインタビューで 交渉が不調に終わった場合 報復関税を発動すると明言しました。根拠となるのは 今年 議会で承認された 相互主義法 と呼ばれる法律です。この法律は 他国からの貿易障壁に対し 大統領に対抗措置の権限を与えるものです。
ルラ大統領は
「まずは交渉を試みる。しかし交渉が成立しなければ 相互主義法を実行に移す。向こうが50を課すなら こちらも50を課す」
と語り 対抗措置も同水準の50%関税にする考えをにじませました。
ブラジル政府はまた 経済界と足並みをそろえる構えです。ルラ大統領は ブラジルの企業経営者らと委員会を設置し 米国との通商政策を見直すと表明しました。
外交面でも反発は強まっています。ブラジル外務省は 米国大使館の臨時代理大使を呼び出し トランプ氏の書簡の真正性を確認。その後 書簡は表現が攻撃的で 内容に事実誤認があるとして 公式に返送すると発表しました。
貿易統計をめぐる食い違い:誰の赤字なのか
トランプ氏は 書簡の中で ブラジルとの間に 持続不可能な貿易赤字 があると主張しましたが ブラジル側の数字は異なる姿を示しています。
- ブラジルの公式統計では 過去約20年にわたり 米国側の貿易黒字が続いている
- 直近の昨年は 米国の黒字額が約2億8400万ドルだったとされています
ハダジ財務相は 過去15年間で ブラジルは対米貿易で累計4000億ドル超の赤字を抱えたと説明し 米国側の関税決定は 経済的な根拠を欠き 政治的動機によるものだと批判しました。
現在 米国は 中国と欧州連合に次ぐ ブラジルにとって第3の貿易相手です。米国はブラジルから主に 原油 半製品の鉄鋼などを輸入し ブラジルは米国から 主にエンジンや各種機械 燃料などを輸入しています。双方にとって重要な関係だけに 関税の応酬は波紋を広げています。
背景にあるイデオロギーとBRICS
今回の関税方針をめぐっては 経済よりも政治・イデオロギーが優先されているとの見方が強まっています。
トランプ氏は ブラジルの左派政権が ボルソナロ前大統領に対して 魔女狩り を行っていると非難し 2022年の選挙敗北後に権力維持を図った疑いで行われている裁判は 行われるべきではない と書簡で主張しました。ボルソナロ氏は トランプ氏になぞらえて トロピカルのトランプ と呼ばれることもあり 米国内の一部政治勢力にとって 象徴的な存在です。
ブラジルのシンクタンク ゲトゥリオ・ヴァルガス財団の政治学者レオナルド・パス氏は 米大統領の行動は経済ではなく イデオロギーに動機づけられていると指摘します。ボルソナロ氏の裁判の進展にあわせて 米国の一部議員がこの問題をホワイトハウスに持ち込み ブラジルがトランプ政権の レーダー に乗ったと分析しています。
さらに 最近ブラジルで開催されたBRICS首脳会議も 背景として挙げられています。BRICSは ブラジル ロシア インド 中国 南アフリカなどから成る新興国グループで 世界人口の約半分 世界の経済規模の約4割を占めるとされています。会合では トランプ政権による無差別な関税引き上げに懸念を示す声明が出され これに対しトランプ氏は さらなる貿易制裁も辞さない構えを見せました。
コーヒーとオレンジジュース:私たちの財布への影響
今回の50%関税方針が 最も直接的に影響を与えかねないのが コーヒー市場です。ブラジルは世界最大のコーヒー生産国かつ輸出国であり 米国はその最大の顧客です。ほぼ2億人の米国人が毎日コーヒーを飲むとされる中 ブラジル産コーヒーは欠かせない存在になっています。
2024年だけで 米国はブラジルから60キロ袋換算で約814万袋のコーヒーを輸入しました。これは米国のコーヒー消費全体の33%に相当します。コーヒー取引関係者は 当初の発表時点で 次のような懸念を示していました。
「この規模の関税がかかれば ブラジルからの流れはほぼ止まってしまう。ブラジルの輸出業者も 米国の焙煎業者も その負担を吸収することはできない」
と語ったのは カリフォルニア州のコーヒーブローカー MJ Nugent & Co. を率いるマイケル・ニュージェント氏です。実際 アラビカ種コーヒーの先物価格は 関税方針の発表を受けて1.3%上昇しました。
コーヒー価格は すでに 1年前の約70%に及ぶ急騰の影響で 世界的に高止まりしているとされます。そこにブラジルへの高関税が加われば 代替産地への切り替え コスト上昇を通じて 米国だけでなく世界中の消費者が さらに高い価格を支払う可能性があります。
影響はコーヒーだけではありません。米国で販売されるオレンジジュースの半分以上はブラジル産です。ブラジルはそのほかにも 砂糖 木材 原油などを米国へ輸出しています。ニューヨークの市場では 関税方針が伝わった後 オレンジジュース先物が6%上昇し 供給逼迫への不安が広がりました。
ブラジルの次の一手:市場多角化とグローバルサウス
ブラジル側は 米国一国への依存度を下げる方向に舵を切ろうとしています。ファヴァロ農業相は 声明で 中東 南アジア そして グローバルサウス と呼ばれる新興・途上国の市場へのアクセス拡大に取り組むと表明しました。農産物輸出の新たな販路を開拓し 貿易障壁の引き下げを働きかける考えです。
ルラ大統領の側近は トランプ氏の対ブラジル攻撃の一因として BRICSの存在感の高まりへの不快感があるとの見方も示しています。人口と経済規模の両面で存在感を増すBRICSが結束を強める中で 米国との関税摩擦は 単なる二国間問題にとどまらず グローバルなパワーバランスとも絡み合い始めています。
これから何を注視すべきか
2025年現在 ブラジルと米国の関税摩擦は まだ流動的な局面にあります。今後 注目したいポイントを整理すると 次のようになります。
- 交渉の行方:ルラ大統領は まずは協議を優先するとしており 実際に相互主義法に基づく報復関税に踏み切るかどうかは これからの外交交渉次第です。
- 関税の対象と期間:50%関税が どの品目に どの程度の期間適用されるのかによって 企業のサプライチェーンと価格転嫁の仕方は大きく変わります。
- 市場の多角化:ブラジルが中東 南アジア グローバルサウスに販路を広げることができれば 中長期的には 米国市場への依存度が下がり 価格や交渉力にも影響が出てきます。
- 私たちの生活への波及:コーヒー オレンジジュース 砂糖など 日々の買い物かごに入る商品の価格に どこまでこの関税摩擦が反映されるかは 多くの消費者にとって切実な問題です。
政治的な対立が貿易政策を通じて どのように私たちの身近な商品やインフレに影響を及ぼすのか。ブラジルと米国の関税衝突は そのプロセスを映し出す一つの事例といえます。今後の交渉の行方と 市場の反応を慎重に見ていく必要があります。
Reference(s):
What do you need to know about the Brazil-U.S. tariff clash?
cgtn.com








