AIが変える教育と協働 清華大学Zhou氏が語る video poster
人工知能(AI)が教育と国際協力のかたちをどう変えているのか。北京で開かれた「Global Civilizations Dialogue Ministerial Meeting(グローバル文明対話閣僚会合)」の会場で、清華大学の School of Journalism and Communication(新聞・伝播学院)の学部長を務める Zhou Qingan 氏が、その鍵は「AIをどう上手に使いこなすか」にあると語りました。
AIが加速度的に広がる2025年、Zhou氏の発言は、教室で学ぶ学生にも、日々オンラインで情報を受け取る私たちにも、静かな問いを投げかけています。
AIは世界の力学と教育環境を同時に揺り動かす
Zhou氏によると、人工知能は今、二つのレベルで大きな変化を起こしています。一つは「グローバルな力学」、もう一つは「教育の現場」です。
国際社会では、AIを通じてコンテンツをつくり、翻訳し、届けるコストが下がることで、グローバルサウスと呼ばれる地域の多様な声が、これまで以上に届きやすくなっています。Zhou氏は、AIがグローバルサウスの発信力を高め、国境を越えたコラボレーション(協働)を促していると指摘しました。
こうした変化は、情報発信の中心が限られた一部の地域に偏りがちだった構図を、少しずつ変えつつあります。会合の場で共有されたメッセージは、国や地域を問わず、AI時代の国際ニュースや市民社会のあり方を考えるうえで重要な視点と言えます。
教室は「デジタル空間」に 学生は受け手から「つくり手」へ
教育の現場では、AIが教室そのものをデジタル空間へと変えつつある、とZhou氏は見ています。従来は教科書や講義資料を中心に学んでいた学生が、AIツールを活用しながら、自らオンラインでコンテンツを制作し、世界に向けて発信できるようになっているからです。
例えば、生成AIを使ってリポートの構成を練り、動画編集ツールで短い解説動画を作り、多言語翻訳機能を組み合わせて海外の視聴者にも届く形に仕上げる、といった学び方が広がりつつあります。学生は単に情報を「読む」「見る」存在から、社会に影響を与える可能性のあるコンテンツの「つくり手」へと変わり始めています。
こうした変化は、ニュースや情報に敏感な若い世代にとって、学びそのものが社会参加とつながる時代が来ていることを意味します。オンラインで活動する読者にとっても、身近な学生の発信が、国際ニュースと地続きになっていく光景が増えていきそうです。
教師に求められるのは「適応」と「チームワークのデザイン」
一方で、AIが教室にもたらす変化は、教師の役割にも大きな転換を迫ります。Zhou氏は、AI時代には教師が新しい環境に適応し、学生どうしのチームワークを意識的に促すことが欠かせないと強調しました。
AIが情報検索や整理の多くを担うようになると、授業の価値は「知識を伝えること」から「学びをどうデザインするか」へと移ります。教師は、
- AIツールを安全かつ効果的に使うルールを共有する
- 学生が協力してプロジェクト型の課題に取り組めるようにする
- AIが出した答えを批判的に検証する力を育てる
といった役割を担うことになります。個々の学生がAIを使いこなすだけでなく、チームとしてどのようにAIを組み込むか。その設計図を描くことが、教師の新しい仕事になりつつあります。
広がる「越境コラボレーション」の可能性
Zhou氏が強調したもう一つのポイントは、AIが国境を越えた協働を後押ししているという点です。オンライン上で学生同士がプロジェクトを行うとき、AIによる自動翻訳や要約が、言語や距離の壁を下げてくれます。
グローバルサウスを含む世界各地の若者が、それぞれの地域の課題や文化を持ち寄りながら共同制作を行うことは、単なる語学学習や技術習得を超えた意味を持ちます。他地域の現実を知り、自分の立場を相対化しながら、新しいアイデアを生み出す土壌になるからです。
こうした「越境コラボレーション」は、ニュースやSNSで日々流れてくる国際情勢を、単なる遠い話ではなく、自分ごととして捉え直すきっかけにもなります。
AIとともに学ぶ時代に、私たちが考えたいこと
AIをどう教育に取り入れるか。これは、北京の会合に参加した関係者だけでなく、世界の学校や大学、そしてオンラインで学ぶすべての人に突きつけられた課題です。
Zhou氏のメッセージから浮かび上がるのは、次のような問いかけです。
- AIによって広がる発信の機会を、誰に、どのように開いていくのか
- AIに依存しすぎず、人間どうしの対話や協働をどう組み合わせるのか
- グローバルサウスを含む多様な声を、国際社会の議論の中でどう生かしていくのか
2025年のいま、AIは単なる「便利なツール」から、教育や国際協力の前提を組み替える存在へと変わりつつあります。教室の内と外、オンラインとオフラインを行き来しながら学ぶ時代に、私たちはAIとの付き合い方をどのようにデザインするのか。Zhou氏の発言は、その出発点を静かに示しているように見えます。
Reference(s):
Academic: Harnessing AI well key to collaboration and modern education
cgtn.com








