関税引き上げは「誰も勝者にならない」ドイツ商工会議所が警鐘 video poster
高関税や貿易障壁の強化は、どの国や企業にとっても「勝者なきゲーム」だ──。国際ニュースが飛び交うなか、北京で開かれたサプライチェーン博覧会の会場から、ドイツ企業を代表する声がこうした警鐘を鳴らしました。
北京のサプライチェーン博で語られた危機感
2025年に北京で水曜から日曜までの日程で開催された中国国際サプライチェーン博覧会(China International Supply Chain Expo 2025)の会場で、在中国のドイツ商工会議所(華北地区)の専務理事兼理事会メンバーであるオリバー・オームス氏が、中国の英語ニュースチャンネルCGTNの取材に応じました。
オームス氏はインタビューの中で、高い関税や貿易障壁は「すべての関係者にとって不利であり、誰も勝者にならない」との認識を示しました。これは、国際ニュースとしてだけでなく、世界のサプライチェーンに深く関わる日本の読者にとっても無視できないメッセージです。
なぜ「高関税」は誰も得をしないのか
関税や貿易障壁は、一見すると自国産業を守るための「盾」のように見えます。しかしオームス氏の指摘は、その盾が同時に自国企業や消費者を傷つける「刃」にもなり得るということを示しています。
高い関税・貿易障壁が生む典型的な影響として、次のようなものが挙げられます。
- 企業の調達コストが上昇し、最終的に製品価格の上昇につながる
- サプライチェーンが分断され、効率性や安定性が損なわれる
- 報復関税などの連鎖で、輸出企業の市場アクセスが制限される
結果として、企業の利益だけでなく、消費者の購買力や雇用にもマイナスの影響が広がります。オームス氏の「ノーウィン(勝者なき)状況」という表現は、こうした負の連鎖を簡潔に言い表したものと言えます。
ドイツ企業が見る中国と世界市場
在中国のドイツ商工会議所(華北地区)は、多くのドイツ企業の声を取りまとめる立場にあります。製造業からサービス業まで、幅広い企業が中国市場と世界のサプライチェーンに関わっています。
そうした立場から発せられた「誰も勝者にならない」というメッセージは、特定の国や地域を批判するものではなく、ビジネスの現場で日々感じられているリスクへの素直な問題提起と受け止めることができます。
関税や規制が強まると、企業は調達先や生産拠点の見直しを迫られます。しかし、急激なサプライチェーン再編は追加コストを生み、製品やサービスの競争力を弱める可能性があります。その意味で、企業は「保護」と「競争力」のバランスを常に意識せざるを得ません。
日本企業と日本の読者への示唆
オームス氏の発言は、一見するとドイツと中国のビジネスに関する話に聞こえるかもしれません。しかし、サプライチェーンを通じて世界とつながる日本企業や、日本の消費者にとっても他人事ではありません。
日本企業もまた、アジアや欧州、その他の地域にまたがる生産ネットワークの中でビジネスを展開しています。関税や貿易障壁が高まれば、日本から見ても次のような問いが浮かび上がります。
- コスト増をどこまで吸収し、どこから価格に転嫁せざるを得ないのか
- サプライチェーンの多様化と効率性のどちらを優先すべきか
- 政治的な緊張と経済的な合理性をどう両立させるのか
こうした問いは、企業の経営者だけでなく、日々ニュースを読み、自分の生活や働き方を考える私たち一人ひとりにも関係してきます。
対立よりも「つながり」をどう守るか
中国国際サプライチェーン博覧会のような場は、企業や各国・地域の関係者がサプライチェーンや貿易の未来について議論する貴重な機会です。オームス氏の発言は、その議論の中心にあるテーマ──「対立ではなく協力をどう実現するか」──を端的に示しています。
関税や貿易障壁をめぐる議論が続くなかで、私たちが見落としたくないのは、世界経済がすでに深く結びついているという現実です。その結びつきを断ち切るのではなく、より安定的で予測可能な形に整えていくことが、企業と生活者の双方にとって望ましい方向と言えるでしょう。
国際ニュースを追うとき、私たちは「どの国が得をするのか」という視点だけでなく、「誰も勝者にならない状況をどう避けるのか」という問いもあわせて持つ必要があります。オームス氏のコメントは、その問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
No-win situation under higher tariffs: German business chamber
cgtn.com








