人を中心にした持続可能な都市へ:中国の経験が示すSDGs時代の道筋
2025年は、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の採択から10年の節目の年です。2030年まで残された5年で、世界の都市はどこまで「人を中心にした持続可能な都市」に近づけるのでしょうか。中国の都市づくりの歩みは、そのヒントを与えてくれます。
SDGs採択から10年、都市は今どこにいるのか
SDGsとパリ協定が採択された2015年以降、都市は気候変動対策と包摂的な成長(誰一人取り残さない成長)の最前線に立ち続けてきました。特にアジアでは、急速な都市化が進み、住宅や交通、医療・教育などの公共サービスをどう整備するかが、各国共通の課題になっています。
そうした中、国連人居計画(UN-Habitat)の幹部は、最近の中国訪問を振り返りながら、中国の持続可能な都市への転換は人々の生活の質を大きく高めてきたと評価しています。
都市化を「包摂的な成長のエンジン」にした中国
中国はここ数十年、長期的なビジョンと、住宅・インフラ・公共サービスへの戦略的な投資を続けてきました。その結果、都市化は格差拡大ではなく、包摂的な成長を促すエンジンとして機能してきたとされています。
現在では、中国の人口の約67%が都市部で暮らしています。1980年代初頭には約2割に過ぎなかったことを考えると、都市化のスピードと規模の大きさがわかります。これを支えてきたのが、計画的な都市づくりと、社会住宅を中心とした住宅政策、そして交通網や上下水道など基礎サービスの拡充です。
2015〜2022年で8000万戸超、住宅を「権利」として位置づけ
国連の2030アジェンダがスタートした2015年以降、中国は住宅分野で大きな成果を積み重ねてきました。中国の住宅・都市農村建設部のデータによると、2015年から2022年の間に、8000万戸以上の手ごろな価格の住宅が新たに供給されました。
さらに、中国政府は2023年の自発的国家レビュー(Voluntary National Review)で、2億人以上の人々が都市での生活環境の改善を享受していると報告しています。これらの住宅・都市政策は、とくに低所得層や中所得層の都市住民を重視しており、「すべての人に適切な住まいを」という明確な優先順位を打ち出しています。
住まいを市場任せの「商品」ではなく、人間らしい生活を送るための基本的な権利として位置づけ、人を中心にした都市化を進めてきた点は、国際的にも注目されています。
環境イノベーション:電動モビリティとスポンジシティ
住宅政策と並行して、中国の都市開発は環境面でのイノベーションも進めてきました。都市の脱炭素化や気候変動への適応に向けた取り組みで、世界をリードする動きが見られます。
一つは、電気自動車や電気バスなどの電動モビリティの普及です。自家用車だけでなく、公共交通でも電動化を進めることで、都市部の排出削減と空気質の改善をめざしています。
もう一つは「スポンジシティ」と呼ばれる取り組みです。これは、雨水を吸収・貯留・浄化できるように都市をデザインし、洪水リスクを減らしながら水資源を有効活用しようとする考え方です。気候変動による豪雨や水害が増える中で、スポンジシティの発想は、持続可能な都市づくりの重要な柱になりつつあります。
さらに、エネルギー効率の高い建物や、再生可能エネルギーの導入など、さまざまなグリーン技術が都市の暮らしに組み込まれ、住みやすさと環境負荷の低減を両立させる取り組みが進められています。
「人を中心にした都市」とは何か
では、「人を中心にした持続可能な都市」とは具体的にどのような都市でしょうか。中国の事例からは、少なくとも次のような要素が見えてきます。
- すべての人に手ごろで安全な住まいがあること
- 仕事、学校、医療、公共サービスに、過度な負担なくアクセスできること
- 移動手段が多様で、環境負荷の小さい交通が選びやすいこと
- 豪雨や猛暑などの気候リスクに強く、災害時にも脆弱な人々が守られること
- 都市計画や政策づくりに、市民の声が反映される仕組みがあること
これらは、中国だけでなく、アジアや世界の多くの都市が共有できる共通の目標でもあります。
日本を含むアジアの都市への示唆
高齢化や人口減少、災害リスクなど、課題の組み合わせは国ごとに異なりますが、「人を中心にした持続可能な都市」をめざすうえで、住宅・交通・環境を長期的なビジョンのもとで一体的に考えるという中国のアプローチは、日本を含むアジアの都市にも示唆を与えています。
急速な変化のなかで、短期的な対症療法に終始するのではなく、10年、20年先の社会像を描きながら、計画と投資を積み上げていくこと。この発想は、SDGsの達成に向けて残された5年をどう使うかを考えるうえでも重要です。
持続可能で包摂的な都市をつくることは、気候危機への対策であると同時に、一人ひとりの暮らしの質を高める取り組みでもあります。中国の経験は、都市が人のためにあるという原点を改めて思い出させてくれます。あなたが暮らす都市は、2030年にどのような姿になっていてほしいでしょうか。今からの5年が、その答えを左右する時間になりそうです。
Reference(s):
The path to inclusive and sustainable cities: Putting people first
cgtn.com








