バイオ企業はどうやってモジュール型サプライチェーンを組むのか video poster
バイオテクノロジー企業や製薬企業が、どのようにしてモジュール型サプライチェーンを構築し、世界の顧客に医薬品やサービスを届けているのか。2025年に開催された第3回中国国際サプライチェーン博覧会では、その最新の取り組みが紹介されました。
第3回中国国際サプライチェーン博覧会で見えた新潮流
中国国際サプライチェーン博覧会は、サプライチェーンをテーマにした大型の国際イベントです。第3回となる今回は、バイオテクノロジーや製薬分野の企業が目立ちました。
各社は、自社のサプライチェーンを細かな機能ごとに分けて組み合わせる「モジュール型」の設計を前面に打ち出し、研究開発から製造、品質管理、物流までを柔軟につなげる姿を示しました。狙いは、世界中の顧客に迅速かつ安定して製品を届けることにあります。
モジュール型サプライチェーンとは何か
モジュール型サプライチェーンとは、従来のように一社がすべてを一貫して担うのではなく、機能ごとに「モジュール」を定義し、それらを標準化された形でつなげる考え方です。イメージとしては、レゴブロックのように必要な部品を組み替えながら全体を構成していく方式と言えます。
バイオ・製薬分野の主なモジュール
- 研究・開発モジュール:候補物質の探索や前臨床試験を担う部分
- 原材料・培地供給モジュール:バイオ医薬品の原料や培地を安定供給する部分
- 製造モジュール:有効成分の製造から製剤化までを行う工場機能
- 品質管理・データモジュール:検査、トレーサビリティ、データ管理を担う部分
- コールドチェーン物流モジュール:低温管理が必要な製品の輸送・保管機能
- 規制対応・市場アクセスモジュール:各国・各地域の規制に合わせて承認を取得し、市場にアクセスする部分
これらを組み合わせることで、企業はターゲット市場や製品特性に応じた最適なサプライチェーンを素早く組み立てることができます。
どのように設計されているのか
博覧会で紹介されたモジュール型サプライチェーンには、いくつか共通する設計思想が見られます。
1 標準化されたインターフェース
まず重視されているのが標準化です。例えば、ある製造モジュールから次の品質管理モジュールにデータを受け渡す際、フォーマットや項目があらかじめ共通化されています。これにより、別の企業のモジュールと入れ替えても、システム全体を作り直す必要がありません。
2 デジタルプラットフォームによる接続
各モジュールはデジタルプラットフォーム上でつながっています。受注状況、生産ラインの稼働状況、在庫、物流の位置情報などがリアルタイムで共有されることで、どのモジュールに負荷がかかっているか、どこに余裕があるかが一目で分かります。
これにより、需要が急増した際には特定地域の製造モジュールを増やし、逆に需要が落ち着いた際には生産を絞るなど、柔軟な調整が可能になります。
3 地域分散と近接生産
バイオ・製薬製品は、規制や物流の制約が大きい分野です。そのため、モジュールを複数の国や地域に分散させ、需要地の近くで生産する「近接生産」という考え方が採り入れられています。
第3回中国国際サプライチェーン博覧会に参加した企業の中には、中国本土の生産拠点を中核にしつつ、海外のパートナー企業のモジュールと連携することで、グローバル市場向けのネットワークを構築している例も紹介されました。
サプライヤー側のメリット
モジュール型サプライチェーンは、単に顧客のためだけでなく、供給側にとっても大きな利点があります。
- 設備投資を段階的に行える:一気にフルラインを構築せず、需要に応じてモジュールを追加することで、投資負担を抑えつつ成長できます。
- 稼働率を高めやすい:特定のモジュールについては複数の顧客企業から案件を受けることができ、空き時間を減らしやすくなります。
- 技術の専門性を磨ける:例えば細胞培養やコールドチェーンなど、特定のモジュールに特化することで、世界市場で選ばれる「専門モジュール」として存在感を高めることができます。
顧客・パートナーにとってのメリット
一方で、製薬企業の顧客やパートナー企業、医療機関にとっては、モジュール型サプライチェーンは次のようなメリットを生みます。
- 市場投入までの時間短縮:すでに整備された製造モジュールや品質管理モジュールを活用することで、自前で工場を立ち上げる時間を省き、新薬をより早く市場に届けることができます。
- リスク分散:サプライチェーンを複数ルートで構成しやすくなるため、一つの拠点が止まっても別のモジュールで代替しやすくなります。
- 地域ごとの要件に対応しやすい:規制や医療制度が異なる国・地域ごとにモジュールを組み替え、その地域に最適化したサプライチェーンを構築できます。
なぜ今、バイオ分野でモジュール化が進むのか
バイオ・製薬分野でモジュール型サプライチェーンが注目される背景には、いくつかの要因があります。
- 新型治療法やワクチンなど、技術革新のスピードが速く、柔軟な生産体制が必要になっている
- パンデミックを含む不測の事態を経験し、サプライチェーンの強靭性が重視されるようになった
- 新興国やアジア地域を含め、医薬品へのアクセスを改善しようという国際的な動きが強まっている
こうした状況の中で、モジュール化は「コスト削減」のためだけでなく、「変化に強いサプライチェーン」を実現するための戦略として位置づけられています。
中国発のネットワークと国際協力
今回の博覧会では、中国本土のバイオ企業や製薬企業が、自社のモジュールを世界のパートナー企業とどのようにつなげているかが紹介されました。研究・開発モジュールを海外の研究機関と連携させたり、現地の規制対応モジュールを持つ企業と組むことで、国際的なネットワークを形成する動きも見られます。
これは、単に医薬品を輸出するだけではなく、サプライチェーンそのものを共同で設計し、各地域に合った形で医薬品アクセスを広げていくアプローチと言えます。
私たちが学べるポイント
モジュール型サプライチェーンは、バイオ・製薬業界に限らず、多くの産業にとって示唆に富む考え方です。
- 自社ですべてを抱え込むのではなく、得意なモジュールに集中し、他は外部と連携する
- あらかじめ「つなげやすい形」に設計しておき、将来の変化に備える
- 一国単位ではなく、国・地域をまたいだネットワークとしてサプライチェーンを捉える
第3回中国国際サプライチェーン博覧会で示されたバイオ・製薬分野の事例は、国際ニュースとしての関心だけでなく、企業戦略やキャリアを考えるうえでも、参考になる視点を提供してくれます。
ニュースを読む際に、単に「サプライチェーンが分断される」「強靭化が必要だ」といった抽象的な言葉で終わらせず、「どのモジュールが、どこで、誰とつながっているのか」という視点を持つことで、世界の動きがより立体的に見えてくるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








