EU最大港が巨大駐車場に トランプ関税で滞留する米国向け自動車
欧州最大のコンテナ港であるベルギーのアントワープ=ブルージュ港が、米国向け自動車の滞留で『巨大な駐車場』と化しています。トランプ米大統領による対EU関税引き上げが、2025年の国際貿易と自動車産業にどのような影響を与えているのかを整理します。
欧州最大の港が『巨大な駐車場』に
ベルギーのアントワープ=ブルージュ港は、欧州で最も忙しいコンテナ港であり、米国向け輸出では最大規模の港です。2024年には世界中に300万台超の車両を出荷したとされています。
しかし2025年には、同港が事実上の『巨大な駐車場』と化しました。英紙ガーディアンによると、米国向けの乗用車やバン、トラック、トラクターなど数千台が港にとどまり、出港を待ちながら『ただ停められているだけ』の状態になったといいます。
背景には、トランプ米大統領による追加関税の動きがあり、メーカー各社は米国向け輸出の見直しやリスク回避策に追われることになりました。
トランプ関税で対米輸出が減速
報道によると、トランプ大統領はホワイトハウスに復帰した2025年1月以降、欧州連合(EU)からの輸入品に対する関税を段階的に引き上げました。欧州製自動車に対する米国の関税は、復帰前の2.5%から、4月初めまでに27.5%へと大幅に引き上げられています。
さらに、2025年8月1日からはEUからの輸入品全般に30%の関税を課す方針が示され、いわゆる『リベレーション・デー関税』として予告されました。この計画が現実味を増すなかで、アントワープ=ブルージュ港には米国向けの車両が積み出しをためらわれたまま積み上がっていった形です。
港湾当局の数字によると、2025年上半期(1〜6月)の対米輸出において、新車の乗用車とバンの輸出台数は前年同期比で15.9%減少しました。特に、関税引き上げ方針が発表された翌月の5月には、減少幅が一段と大きくなったと伝えられています。
2025年後半の見通しは『不透明』
アントワープ=ブルージュ港は声明で、2025年後半の見通しについて『依然として不透明だ』とし、その行方は8月1日までにEUと米国のあいだで貿易協定がまとまるかどうかに大きく左右されると述べていました。
関税引き上げの影響を抑えようと、自動車メーカーは出荷のタイミングを前倒ししたり、輸出先の多様化を検討したりするなど、対応策に追われたとされています。それでも、港にとどまる大量の車両は、通商政策の変化がサプライチェーンに与えるインパクトの大きさを可視化する形となりました。
あわせて、EUの貿易担当閣僚らが最新の米国の関税方針への対応を協議していることや、交渉が不調に終わった場合には最大840億ドル相当の米国製品に対して報復関税を検討していることも報じられています。双方の応酬がエスカレートすれば、世界の貿易環境は一段と不安定化しかねません。
日本の読者が押さえておきたいポイント
このアントワープ=ブルージュ港の事例は、欧米間の通商摩擦という枠を超え、日本やアジアの企業・消費者にとっても無関係ではありません。押さえておきたいポイントを整理します。
- サプライチェーンの脆弱性:関税方針の変更だけで、欧州最大級の港が短期間で『巨大な駐車場』と化しました。完成車の在庫が港に滞留すれば、物流コストの増加や納期遅延につながります。
- 価格と調達への波及:欧州から米国への輸出が減れば、メーカーは他地域への販売強化を図る可能性があります。世界市場全体の需給バランスが変わることで、日本やアジアにおける欧州車の価格や入手しやすさにも影響が出るおそれがあります。
- 政治リスクへの備え:今回のように、通商政策が短期間で大きく変化する局面では、企業は調達先・生産拠点・販売市場の多様化など、政治リスクを前提とした戦略がいっそう重要になります。
『読みやすいのに考えさせられる』国際ニュースとして
アントワープ=ブルージュ港の『巨大な駐車場』は、2025年の国際ニュースの中でも、通商政策と日常生活の距離がいかに近いかを示す象徴的な出来事といえます。関税という一見抽象的な政策も、最終的には港に並ぶ一台一台の車、そしてその先にいる消費者や働く人々の現実につながっています。
2025年の残りとその先の数年、EUと米国の貿易関係がどのような方向に向かうのか、日本からも注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
EU port turned into 'giant car park' amid looming Trump tariffs
cgtn.com








