米国関税が世界経済を圧迫 EU企業トップが「Business First」を提唱
EUの企業関係者や専門家が、米国の関税政策が世界経済に与える悪影響への警鐘を鳴らしています。2025年現在も続く米国の関税措置とその「脅し」は、不確実性を高め、景気減速をさらに深刻化させかねないと懸念されています。
米国の関税がもたらす不確実性
複数の欧州諸国のビジネスオーナーや専門家は、米国による継続的な関税の脅しが世界経済を傷つけていると指摘しています。特に、次にどの分野や国に関税が広がるのか見通しが立たないことが、企業の意思決定を鈍らせています。
この不透明さは、企業が投資や雇用を計画するうえでの前提条件そのものを揺らがします。結果として、サプライチェーン(供給網)の再編や、工場・研究開発拠点の計画が先送りされやすくなり、世界的な成長の勢いをそぐ要因となっています。
ドイツ化学大手CEO「世界経済にとって壊滅的」
ドイツの化学メーカー、エボニック(Evonik)のクリスティアン・クルマンCEOは最近のインタビューで、米国政府の通商政策について「世界経済にとって壊滅的だ」と厳しく批判しました。
クルマン氏によれば、米国の政策によって「世界中の顧客が発注や投資を控える」状況が生まれているといいます。つまり、関税そのものの負担だけでなく、「次に何が起きるかわからない」という心理的なブレーキが、企業活動と経済成長の両方を押し下げているという見立てです。
EU・米国の関税交渉、それでも消えない長期不安
現在も続く欧州連合(EU)と米国の関税交渉について、クルマン氏は、たとえ何らかの合意にこぎ着けたとしても、長期的な不確実性は残ると述べています。理由は、米国の政策運営が予測しづらく、時に気まぐれにも映るからです。
合意の内容よりも、「それがどれくらい持続可能なのか」「政権や方針の変化で簡単に覆されないか」が問われている、という見方がにじみます。企業にとって重要なのは、関税率そのものよりも、中長期のルールと環境が読めるかどうかなのです。
「America First」に対抗する「Business First」
クルマン氏は、欧州のビジネス界と政治指導者に対し、より断固とした対応を求めています。彼は、米国の"America First(自国第一)"に対して、欧州は"Business First(ビジネス第一)"で応じるべきだと主張しました。
ここでいう"Business First"とは、単に企業利益だけを優先するスローガンではなく、次のような方向性を示唆していると考えられます。
- 保護主義ではなく、安定したルールに基づく貿易環境を守ること
- 短期的な政治的思惑よりも、長期的な投資・雇用・イノベーションを重視すること
- 欧州域内で足並みをそろえ、分断されずに交渉力を高めること
保護主義ではなく競争力強化を
クルマン氏はまた、激しさを増す世界の競争の中で、欧州がとるべき道は「通商保護主義に走ることではなく、自らの経済力と国際競争力を高めることだ」と強調しています。
これは、関税の応酬で対抗するのではなく、技術力、人材、インフラ、エネルギー、規制の質といった基盤を強化することで、結果として企業が世界市場で選ばれるようにするべきだ、というメッセージと受け止められます。
米国の関税政策が世界経済に波紋を広げるなか、欧州の企業トップがどのような戦略と価値観を掲げるのかは、国際ニュースとして今後も注視すべきテーマです。日本を含む他地域にとっても、「不確実な通商環境にどう備えるか」という共通の問いを突きつけています。
Reference(s):
EU companies, experts urge action as U.S. tariffs strain economy
cgtn.com








