中国経済の主役は国内需要 江蘇省「蘇超」が映す新しい消費トレンド
中国経済の次の成長エンジンとして注目されるのが「国内需要」、その中でも変化を続ける消費です。本稿では、公園やショッピングモールからナイトマーケット、音楽フェス、そして江蘇省の都市フットボールリーグ「蘇超」まで、いま中国で何が起きているのかを整理します。
公園からスマートホームまで、多様化する中国の消費
最近の中国では、公園やショッピングモールをぶらりと訪れる日常的な外出から、夜市、音楽フェス、カーニバルまで、余暇の過ごし方が大きく広がっています。こうしたライフスタイルの変化は、消費のかたちにも直結しています。
住まいに関しても、従来型のリフォームだけでなく、家電や設備をネットにつなぐスマートホームが広がりつつあります。子どものおもちゃに対する態度も、「あまり興味を持たれなかったもの」から、ラブブのモンスターエルフのぬいぐるみ(Labubu plush monster elf)をめぐる熱狂へと変わっています。
政府の政策と市場の力が重なり合うなかで、こうした消費パターンの変化が生まれ、結果として現在、消費は中国経済成長の主な原動力であり、景気を安定させる存在となっていると位置づけられています。
江蘇省発「蘇超」 アマチュアから一大ムーブメントへ
ここ数カ月、江蘇省の都市フットボールリーグ「蘇超」(Jiangsu Provincial Urban Football League)が思わぬ現象として注目を集めています。
もともとはアマチュア大会として始まったこのリーグですが、その会場の雰囲気は全国レベルのプロ大会に匹敵するほどとされ、中国各地で広く話題になっています。オンライン上でも、「蘇超」に関する投稿や議論が相次いでいます。
人気の一端を示すのが観客数です。各試合にはおよそ3万〜5万人が来場し、都市同士の対戦で勝利が決まると、インターネット上には地元を祝う声や関連の反応が一気にあふれます。
フットボールが動かす観光とグルメ消費
「蘇超」が興味深いのは、単なるスポーツイベントにとどまらず、観光やグルメといった周辺の消費を大きく押し上げている点です。
たとえば、6月1日の試合で南通が泰州に勝利し、南京が無錫に勝ったあと、オンライン検索の動きに顕著な変化が見られました。
- 「南京塩水鴨」の検索数は翌日に74%増加
- 「南通 朝ごはん(Nantong breakfast)」の検索数は367%増加
オンライン旅行プラットフォーム「Qunar」のデータによると、「蘇超」のレギュラーシーズン(5月〜8月)の期間中、江蘇省のホテル予約は前年同期と比べて21%増加したとされています。
地元チームを応援する人びとが試合に合わせて移動し、観光や食事も楽しむ。その結果、宿泊や飲食といったサービス産業にまで波及効果が広がっている様子がうかがえます。
夜のまちを彩るフードカーニバルと音楽イベント
「蘇超」の盛り上がりに合わせて、江蘇省の都市では夏の夜のイベントも次々と打ち出されています。
泰州の姜堰区では、フードカーニバルが大きな人気を集めています。イベントの開催時間は「蘇超」の試合と週末を意識して延長され、来場者が試合観戦とあわせて夜を楽しめるように工夫されています。
このフードカーニバルでは、飲食ブースに加え、音楽フェスや、中国のトレンドを取り入れた電子音楽(エレクトロニック・ミュージック)のライブなども行われています。7月8日のスタート以来、1日平均で2万人以上が訪れているとされ、地域の「ナイトタイムエコノミー(夜間経済)」を支える存在になっています。
国内需要強化の「実験場」としてのローカルイベント
これらの動きから見えてくるのは、スポーツ、観光、グルメ、音楽イベントを組み合わせた「体験型の消費」が、中国の国内需要を押し上げる新しいかたちになりつつあるという姿です。
公園やショッピングモール、夜市、スマートホーム、人気キャラクターグッズといった多様な選択肢が広がるなかで、消費は単にモノを買う行為ではなく、「時間の過ごし方」や「地域とのつながり」を含んだ総合的な体験へと変化しています。
江蘇省の「蘇超」のようなローカルイベントは、地方都市が自らの魅力を再発見し、発信するための「実験場」とも言えます。消費が中国経済の主な成長エンジンとなっている今、こうした草の根レベルの工夫がどこまで広がっていくのかが注目されます。
私たちの視点:何にお金と時間を使いたいか
中国の国内需要をめぐる変化は、日本を含む他の国・地域にとっても、都市づくりや地域経済を考えるうえで示唆に富んでいます。
スタジアムやイベント会場だけでなく、公園、商業施設、夜の屋外空間など、身近な場所が人びとの交流と消費の場に変わるとき、そこにどのような体験を組み込むのか。私たち自身が「何にお金と時間を使いたいのか」を見直すきっかけにもなりそうです。
江蘇省発のフットボールリーグとナイトイベントが映し出すのは、統計だけでは見えにくい、中国の国内需要の新しい風景です。その変化の先にどのような都市と暮らしのあり方が生まれていくのか、引き続き注視していきたいところです。
Reference(s):
Domestic demand takes center stage in China's next growth chapter
cgtn.com








