米国の関税戦争は逆効果か 鉄鋼をめぐる米加対立を読み解く
米国が鉄鋼・アルミに高関税を課し、最大供給国カナダが報復関税と輸入制限で応酬しています。さらに中国本土で生産された鋼材にも負担が広がり、国際経済に新たな火種となっています。
米国とカナダの「関税戦争」で何が起きているか
米国は現在、外国から輸入される鉄鋼とアルミニウムに50%の関税を課しています。鉄鋼・アルミの最大の供給国であるカナダは、これに対抗して米国製の鉄鋼・アルミ製品に25%の報復関税を導入しましたが、両国の通商交渉はまだ実を結んでいません。
こうした中、今年7月10日には、トランプ米大統領が「8月1日からカナダ産輸入品に35%の関税を課す」と発表しました。伝統的な同盟国であるカナダに対して、再び強い制裁的な措置をとる方針を示した形です。
カナダの対抗措置:輸入枠と追加関税
カナダ財務省は7月16日、米国の鉄鋼関税への対抗と、世界的な鉄鋼の供給過剰に対応するためとして、新たな措置を公表しました。同日から、鉄鋼の輸入枠(クオータ)を拡大しつつ、枠を超えた輸入分には追加の課徴金を課す方針です。
さらにカナダは、米国以外の国から輸入される鉄鋼製品のうち、中国本土で溶解・鋳造されたものについて、25%の追加課徴金を課すとしています。これは、米国の関税政策の影響が、第三国や中国本土にも波及していることを示しています。
鉄鋼市場への影響と「逆効果」の可能性
こうした関税の応酬は、しばしば「関税戦争」と呼ばれます。短期的には国内産業を保護しているように見えても、長期的には次のような逆効果を生むおそれがあります。
- 輸入コストが上昇し、自動車や家電など鉄鋼を使う製品の価格が上がる
- 企業のサプライチェーン(供給網)が混乱し、中小企業ほど打撃を受けやすい
- 報復措置の連鎖で国際貿易のルールが不安定になり、投資が控えられる
今回の米加対立では、直接の当事者である米国とカナダだけでなく、中国本土を含む他の国・地域の企業も影響を受けます。世界の鉄鋼市場は相互につながっているため、一国の関税引き上げが価格変動や供給の偏りを通じて、広い範囲に波及しやすい構図です。
日本とアジアにとっての意味
日本を含むアジアの国・地域にとっても、今回の「関税戦争」は無関係ではありません。日本企業は鉄鋼の生産・輸出入の両面で国際市場と深く結びついているため、米国やカナダの関税政策の変化は、価格や調達コストを通じて影響する可能性があります。
また、世界の鉄鋼をめぐる緊張が高まれば、アジア太平洋地域の貿易秩序にも不確実性が増します。国際ニュースとしての注目点は、各国・地域がどのように協調しつつ、供給過剰や不公正な取引を是正していくのかという点です。
これから注視したいポイント
今後、私たちがフォローしておきたいポイントは次の通りです。
- 米国とカナダの交渉の行方:高関税が長期化するのか、それとも妥協点が見いだされるのか
- 企業の対応:調達先の分散や在庫戦略の見直しなど、実務レベルでどのような工夫が進むか
- 国際的な枠組み:世界貿易機関(WTO)などの場で、鉄鋼の供給過剰や関税問題がどう議論されるか
国境を越えてサプライチェーンが張り巡らされた現在の国際経済では、一国主導の関税引き上げは「勝者なきゲーム」になりかねません。米国の関税戦争が逆効果で時代遅れなのかどうかを見極めるためにも、数字だけでなく、その背後にあるルールづくりと協調の動きを丁寧に追っていくことが重要です。
Reference(s):
cgtn.com








