アジア経済成長は加速も、関税リスクで先行きに陰り ADB・IMF報告書
アジア・太平洋の経済成長は加速している一方で、関税をめぐる不確実性などが先行きの重しになりつつあります。アジア開発銀行(ADB)と国際通貨基金(IMF)が公表した最新の報告書から、2025〜26年のアジア経済見通しを整理します。
ADBの7月アウトルック:成長加速と地域差
ADBが今年7月に公表したアウトルックによると、開発途上のアジア・太平洋地域の成長率見通しは、世界的なトレンドと歩調を合わせる形で見直されています。全体としては成長の勢いが続く一方、地域ごとに明暗が分かれています。
中国本土:政策主導で5%台半ばの成長
報告書は、中国本土の国内総生産(GDP)が今年、第1四半期(Q1)に5.4%、上半期(H1)全体で5.3%拡大したと指摘しています。消費を押し上げる政策、堅調な工業生産、輸出の好調さが成長を支えたと分析されています。
インド:7%台の高成長を維持
インドも同じく第1四半期に7.4%の成長を記録しました。純輸出(輸出から輸入を差し引いたもの)の改善と、公的部門による投資拡大が主な牽引役となっています。アジア全体の成長をけん引する二つの大きなエンジンが、中国本土とインドであることが改めて示された形です。
東南アジア・東アジア・南アジア:見通しの下方修正
一方で、地域によっては2025年以降の成長率が下方修正されています。
- 東南アジア:2025年の成長率見通しは4.2%、2026年は4.3%に引き下げ
- 東アジア:2025年は4.3%に見直し、2026年は4.0%を維持
- 南アジア:2025年は5.9%に下方修正される一方、2026年は6.2%の成長を見込む
特に東南アジアと南アジアでは、米国の関税引き上げによる貿易見通しの悪化が、輸出や投資を通じて成長の重しになるリスクが意識されています。
太平洋地域:観光減速への懸念
太平洋地域の成長率は、2025年は3.9%と見込まれる一方、2026年の予測は3.5%に引き下げられました。観光客数の伸びが鈍化すると見込まれており、観光に依存する経済構造の弱さが浮き彫りになっています。
IMF対外部門報告:中国本土への評価と関税リスク
IMFが今年7月に公表した対外部門報告(External Sector Report)は、世界の主要30経済の不均衡(経常収支など)を評価したものです。この中でIMFは、中国本土の経済運営についてencouraging(心強い)と評価し、その動向が世界経済にとって重要であると位置づけています。
同時に、報告書はトランプ政権がほぼすべての主要な貿易相手国に対して輸入関税を課していることが、今後の世界マクロ経済に一段と大きな影響を与える可能性があると警告しました。
ただしIMFは、米国のような貿易赤字国が関税を引き上げても、世界全体の不均衡に与える影響は限定的だと分析しています。関税は、関税を課す側の国にとってコスト上昇という供給ショックとなり、自国の生産や投資を押し下げる要因にもなり得るからです。
アジア経済の先行きを読む3つの視点
ADBとIMFのメッセージを合わせて見ると、アジア経済の行方を考えるうえで、次の3つの視点が浮かび上がります。
- 成長エンジンの持続性:中国本土とインドでは、政策支援や輸出、投資が成長を支えています。この勢いをどこまで持続できるかが、アジア全体の成長トレンドを左右します。
- 貿易摩擦と投資判断:米国の関税引き上げは、世界の貿易フローに不確実性をもたらします。企業の投資判断やサプライチェーンの構築にも影響し、特に輸出依存度の高い東南アジアでは慎重な対応が求められます。
- サービス・観光の脆弱性:太平洋地域のように観光への依存度が高い経済では、訪問者数の減少が即座に成長鈍化につながります。サービス産業をどう強化し、多様化するかが中長期の課題になります。
アジアの成長は全体としては力強いものの、その中身は地域によって大きく異なります。日本を含むアジアのビジネスパーソンや投資家にとっては、
- 中国本土とインドの成長の持続性
- 東南アジアや南アジアの輸出・投資動向
- 太平洋地域の観光需要の行方
- トランプ政権による関税政策の今後
といった点を丁寧に追うことが、2026年に向けた戦略を考えるうえで重要になりそうです。
Reference(s):
Report: Asia's growth accelerates but looming risks dampen outlook
cgtn.com








