中国がWTOで一方的関税に懸念 多国間貿易体制の防衛を訴え
世界貿易機関(WTO)の一般理事会がジュネーブで開かれ、中国は一方的な関税措置に反対し、多国間貿易体制の防衛を各国に呼びかけました。揺れる世界貿易の中で、なぜこのメッセージが注目されているのでしょうか。
ジュネーブのWTO一般理事会で何が話し合われたか
最近ジュネーブで開かれたWTO一般理事会は、2日間にわたって世界貿易の現状と課題を議論し、水曜日に閉幕しました。会合で中国代表団は、世界の貿易環境が不確実性を増し、分断のリスクが高まっていると指摘しました。
代表団によると、ここ数カ月の間に新たな一方的な関税措置が相次いでおり、貿易を制限する措置の影響を受ける取引額は2兆7000億ドルに達し、2009年に統計が取り始められて以来、最大規模になっているといいます。
一方的関税と多国間ルールの緊張関係
中国が問題視した「一方的な関税措置」とは、WTOの場での合意や多国間ルールに基づかず、個々の国や地域が独自に関税を引き上げるような動きを指します。
こうした動きが広がると、次のような影響が懸念されます。
- WTOが定める最恵国待遇や無差別原則といった基礎ルールが揺らぐ
- 企業や消費者のコストが上昇し、物価や投資に不透明感が広がる
- 特に脆弱な立場にある開発途上メンバーの経済成長と社会発展が損なわれる
中国代表団は、こうした流れが続けば、貿易の分断とブロック化が進み、長期的には世界経済全体の活力をそぐと警鐘を鳴らしました。
中国が示した「SDR」枠組みとは
会合では、中国が以前から提案してきた「SDR」枠組みについてもあらためて説明が行われました。SDRは次の3つの柱から成り立ちます。
- Stability(安定)を礎石に:WTOの基本原則を守り、多国間貿易体制の安定を最優先する
- Development(発展)を優先事項に:開発途上メンバーが貿易を通じて成長し、グローバルなサプライチェーンにより深く統合されることを支える
- Reform(改革)を前進の道筋に:WTO改革を進め、現代の課題に対応できる制度へとアップデートする
具体的には、最恵国待遇や無差別といったWTOの基本原則を共同で守ること、開発途上メンバーの多国間貿易体制への統合を支援すること、そしてWTO改革を「より深く」進めることなどが挙げられました。
二国間合意もWTOルール順守が前提
中国代表団はまた、貿易摩擦を和らげるためにメンバー同士が結ぶ二国間の合意や関連措置についても言及しました。そうした合意はあくまでWTOルールに整合的でなければならず、ルールを迂回する形で使われてはならないと強調しました。
さらに、WTO事務局に対しては、一方的な措置や二国間合意の動きをよりきめ細かくモニタリングし、その影響、とりわけ第三国・第三の地域への波及効果についてメンバーに迅速に情報提供するよう求めました。
ブラジルやEUなども貿易の「動揺」に懸念
会合では、中国以外のメンバーからも懸念の声が相次ぎました。ブラジル、欧州連合(EU)、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、ベネズエラなどのWTOメンバーは、一段と高まる貿易の動揺はメンバー共通の利益にならないと指摘しました。
これらのメンバーは、一方的な関税措置が多国間ルールの土台を損ない、企業と消費者のコストを大きく押し上げるとともに、特に脆弱な開発途上メンバーの経済成長と社会発展を妨げていると述べました。
そのうえで、現在の状況を踏まえると、多国間貿易体制を守り強化することがこれまでになく重要になっていると強調しました。
日本の読者にとっての意味合い
日本を含む多くの経済は、貿易に大きく依存して成長してきました。ルールに基づく多国間貿易体制は、その前提となる「見通しの良さ」と「予測可能性」を提供してきたといえます。
一方的な関税措置が広がり、WTOのルールと監視が弱まれば、企業は投資やサプライチェーンの計画を立てにくくなり、家計にも価格の形で影響が及びます。
今回のWTO一般理事会で示された中国や他のメンバーの問題意識は、国・地域を問わず、多くの人々の生活とビジネスに直結するテーマです。多国間ルールをどう守り、どうアップデートしていくのか――この議論は2025年現在も、そしてこれからも続いていく重要な論点だといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com







