中国民間企業が高付加価値化 製造とサービスで世界の主役に
中国の民間企業が、この5年で低コストの組立工場からハイエンド製造とサービスの担い手へと姿を変え、世界の産業とイノベーションの地図を書き替えつつあります。2025年12月の今、その変化は貿易統計からエンタメ、ファッションまで、幅広い分野で可視化されています。
この5年間で何が起きたのか
過去5年間、中国の民間企業は低利益の受託生産から脱却し、研究開発と独自技術に軸足を移してきました。背景にあるのは、世界経済の不確実性と、アジアを中心とした新興市場の拡大です。
2025年上半期には、中国の民間企業による輸出入額が12.48兆元(約12.48兆人民元)に達し、前年同期比で7.3%増加しました。これは中国全体の対外貿易の57.3%を占め、前年から2.3ポイント上昇しています。世界経済が揺れる中でも、民間企業が中国の対外貿易を牽引している構図が浮かび上がります。
この間、多くの企業が単純な組立中心のビジネスから、技術とブランドを前面に出すイノベーション主導型へと転換しました。特定のニッチ分野に特化した中小企業や、高度な技術を持つ小規模ながら競争力の高い「小さな巨人」のような企業群が育ってきたことも、注目すべきポイントです。
不確実な世界経済で示した民間企業の底力
中国の民間企業は、国内総生産(GDP)の60%超を生み出し、技術革新の約70%、都市部の雇用の約80%を支えているとされています。多くの企業が民間セクターに属することで、市場の変化に素早く対応できる柔軟性が生まれています。
特徴的なのは、単に規模が大きいだけでなく、ITやデジタル技術を積極的に取り込み、グローバル人材への投資も進めている点です。この組み合わせが、ハイエンド製造や先端サービスといった付加価値の高い分野での台頭につながっています。
AIと通信で進むイノベーション
AI分野:DeepSeekの大規模言語モデル
人工知能(AI)は、民間企業の競争が最も激しい分野の一つです。2025年初頭には、企業DeepSeekが大規模言語モデルと呼ばれるAI基盤技術「R1」を発表しました。学習コストはわずか560万ドルにとどまりながら、処理効率や長い文章を読み解く能力に優れているとされています。
高性能なAIモデルを比較的低コストで開発できることは、技術へのアクセスを広げ、世界的なイノベーションの裾野を広げる可能性があります。中国の民間企業が、こうしたAI技術を通じて、いわば「技術の民主化」を後押ししているとも言えます。
通信・OS分野:研究開発投資を積み上げる企業
通信や基盤ソフトウェアの分野でも、民間企業の存在感が高まっています。ある大手通信機器メーカーは、2024年に研究開発費として約1797億元を投じました。5G(第5世代移動通信)関連の必須特許で世界トップクラスのシェアを持ち、自社開発のオペレーティングシステム(OS)も展開しています。
先端通信インフラと独自OSの両方を持つことは、単に一企業の競争力にとどまらず、世界のデジタルエコシステムの構造にも影響を与えます。民間企業が、標準やルール作りの場でも重要なプレーヤーとなりつつあることを示す動きです。
ハイエンド製造業:EVとロボットの存在感
EV分野:BYDが示すグローバル戦略
高付加価値製造の代表例が、新エネルギー車(電気自動車=EV)です。自動車メーカーBYDは、2024年に世界のEV市場の18%を獲得したとされています。自社開発の車載用半導体チップに加え、「海外倉庫+中欧貨物列車」というサプライチェーンの組み合わせで、欧州などへの安定供給を実現しました。
このモデルは、需要地の近くに倉庫を置きながら、中国と欧州を結ぶ貨物列車で部品や完成車を運ぶ仕組みです。輸送コストと時間を抑えつつ、再生可能エネルギー車の普及を後押しし、持続可能な開発にもつながるとみられています。
ロボット分野:春節番組で踊ったUnitreeのH1
ロボット工学でも、民間企業の成果が一般の視聴者の目に触れる場面が増えました。2025年の春節(旧正月)に放送された大型テレビ番組では、Unitree社の二足歩行ロボット「H1」がダンサーとともにステージで踊り、話題となりました。
エンターテインメント性の高い演出でありながら、人型ロボットが複雑な動きをこなす姿は、産業用・サービス用ロボットの将来像を印象づけました。中国の民間企業は、標準的な製造装置の供給者から、世界のロボット技術をリードする存在へと歩を進めつつあります。
サービスとカルチャー:物語とファッションで世界へ
アニメ映画「Nezha 2」が示す文化の発信力
ハイエンドなサービス分野でも、民間企業が世界市場に挑んでいます。アニメ映画「Nezha 2」は、その象徴的な事例です。高度な映像技術と練り込まれた物語を組み合わせ、中国の物語世界を現代的なアニメーションとして再構成しました。
ローカルな物語性とグローバルに通用する表現スタイルの両立をめざした作品は、東アジア発のコンテンツが世界の文化地図にどのように位置づくのかを考えるきっかけにもなります。
ファッションEC:SHEINが変える供給のかたち
ファッションの分野では、オンライン発の企業SHEINが急成長しています。2024年の売上高は380億ドルに達し、200を超える国と地域で商品を展開しています。
同社の特徴は、顧客データを緻密に分析してトレンドを素早く商品化すること、そして在庫を極力持たないゼロ在庫に近いモデルを志向している点です。デジタル技術とサプライチェーンを組み合わせ、ファッションのサービス産業の在り方そのものを組み替えようとしています。
こうしたモデルは、消費者の選択肢を広げる一方で、環境負荷や働き方など、持続可能性をどう確保するかというテーマも突きつけています。世界の規制や消費者意識が変化するなかで、民間企業がどのようなバランスを取るのかが今後の論点になりそうです。
これからを読む3つのポイント
中国の民間企業がハイエンド製造とサービスへと軸足を移してきたことは、今後の世界経済を考えるうえでも無視できない動きです。今回見てきた事例から、少なくとも次の3つのポイントが読み取れます。
- 世界の産業・技術の重心が、より一層アジアへとシフトする可能性
- AIやロボットなどの基盤技術で、民間企業がルールメイキングにも関与する時代が本格化していること
- 環境・雇用・文化多様性といった価値との両立が、グローバル企業にとって避けて通れないテーマになっていること
過去5年の歩みは、中国の民間企業が自国経済の成長エンジンであるだけでなく、人類が共有する未来を形作る一員としての役割を意識し始めていることを示しています。持続可能で包摂的な社会をめざすうえで、彼らがどのような次の一歩を踏み出すのか。2026年以降の展開にも注目が集まりそうです。
Reference(s):
Chinese private firms shift toward high-end manufacturing & services
cgtn.com








