中国・シズアン高原産業が好調 ヤク肉と青稞酒がけん引
中国南西部のシズアン自治区で、ヤクや黒山羊、高地大麦などの高原産業が存在感を高めています。国際ニュースとしても注目されるこの動きは、地域の雇用と所得の拡大を通じて、経済成長と農村振興を後押ししているとされています。
高地で育つヤク産業、地域のリーディング企業に
シズアン自治区ナインロン県のシャグチュ郷(平均標高約4,700メートル)に拠点を置くGarqoi生態畜産開発会社は、その象徴的な存在です。同社は2009年に設立されました。
現在は、ヤクや羊の飼育、冷凍肉の加工、乳製品の生産、そして高地大麦の粉から作る伝統食品ツァンパの加工・販売まで手掛け、高原の農畜産物を広い市場に届けることを目指しています。
同社は約2,520ヘクタールの牧草地と、1,200頭余りのヤクや羊を管理し、年間5,000頭のヤクを処理できる新たな加工工場の稼働を9月に予定しています。この新工場は、事業拡大の大きな節目になるとみられています。
副総経理のCering Qoizha氏によると、従業員は現在115人。このうち12人は、かつては地元で就職先が見つからなかった大学・専門学校の卒業生で、残りは県内の低所得世帯から採用されました。
製品の品質が評価され、同社はシズアン自治区のラサ市やナクチュ市、隣接する四川省の省都・成都にも店舗を展開。北部シズアン産の畜産物ブランドの知名度向上に一役買っているとされています。
2024年の売上高は1,300万人民元(約182万ドル)を超えました。2025年には年間2,000万人民元の売上を目標としており、高原畜産を核としたビジネスが着実にスケールアップしていることが分かります。
黒山羊と観光が生む新たな収入源
シズアン自治区チャムド市バンバー県では、地元の黒山羊産業が注目を集めています。黒山羊の肉は、カリウムやたんぱく質、アミノ酸の含有量が一般的なヤギ肉より高く、コレステロールが低いと分析されており、健康志向の消費者向けの高付加価値食材として位置づけられています。
県農業農村局の責任者であるTan Bo氏によると、現在バンバー県には品質の高い黒山羊の繁殖用群が6,200頭以上確保されています。
同県では、こうした黒山羊の飼育と観光業を組み合わせる取り組みも進んでいます。地元産の黒山羊肉を提供する専門レストランを観光客向けに展開することで、来訪者の消費を地域内に取り込み、農村振興の新たなエンジンとする狙いです。
高地大麦を活用した青稞酒プロジェクト
シズアンの主食である高地大麦(ハイランド・バーリー)は、チャムド市チャギャプ県で進む大規模な蒸留酒プロジェクトの中心的な原料になっています。
Xizang Kangjiu社が手掛けるこのプロジェクトには、総額10億人民元規模の投資が行われ、穀物倉庫、酵母生産工場、醸造施設、貯蔵設備、包装工場、検査ラボを備えた現代的な産業パークが建設される計画です。
同社の副総経理であるFeng Juyao氏によると、この施設は8月に稼働開始を予定しており、フル稼働時には年間5,000トンの原酒と1万5,000トンの完成品の高地大麦リキュールを生産できるとされています。
雇用効果も見込まれています。人事部門トップのWang Yongzhang氏によれば、地元住民向けに約300人分の新たな職が生まれる予定で、平均月収は6,000人民元程度と見込まれています。
24歳の地元出身者Gaggya氏は、2023年に江蘇省東部の大学を卒業し、2024年6月に同社へ入社しました。家族の近くで働きたいと考えていたGaggya氏にとって、地元での就業機会の創出は大きな意味を持ちます。同氏は、会社が専門的な研修や技術指導を提供し、新しいスキルを身につける場になっていると語っています。
特色ある高原産業がシズアン経済をけん引
シズアン自治区は、ヤクや高地大麦、チベット医学など、地域の特色を生かした産業の育成に力を入れてきました。こうした高原ならではの産業は、同自治区の経済の中でも特に活力があり、将来性の高い分野と位置づけられています。
インフラ整備や観光ブーム、その他の産業の成長も重なり、住民の所得構造は大きく変化しつつあります。
国家統計局のデータによると、2024年におけるシズアン自治区農村部住民の一人当たり可処分所得は2万1,578人民元となり、全国平均の93.3%の水準に達しました。この伸びは全国で最も速く、前年から8.3%増え、全国平均より1.7ポイント高い増加率でした。
都市部住民の一人当たり可処分所得は5万5,444人民元で、前年から6.8%増加し、こちらも全国平均を2.2ポイント上回る伸びを記録しました。
シズアン自治区全体の住民一人当たり可処分所得は3万1,358人民元で、前年より8.2%増となりました。この伸び率は中国の省級地域の中で最も高く、全国平均を2.9ポイント上回ったとされています。
日本の地方経済を見るヒントとしてのシズアン
厳しい自然条件を抱える青海・シズアン高原ですが、そこから生まれるヤク肉、黒山羊、高地大麦といった資源を、高付加価値の産業へと磨き上げる動きが加速しています。
ポイントは、単に原料を出荷するのではなく、加工、ブランド化、観光との連携までを一体で進めている点にあります。
- 地元の若者や低所得世帯を積極的に雇用し、所得向上につなげていること
- 栄養価やストーリー性を打ち出し、高原産品の価値を高めていること
- インフラ整備や観光開発と組み合わせ、複数の収入源をつくっていること
日本各地でも、農産物や伝統産業を軸にした地域振興の試みが進んでいます。シズアン自治区の高原産業の動きは、限られた資源や厳しい環境を強みに変え、国際ニュースとしても注目される地域経済モデルをつくり出している一例として、参考になる部分が多いと言えそうです。
Reference(s):
Specialty plateau industries thrive in Xizang's booming economy
cgtn.com








