「緑水青山」から世界のグリーン転換へ:中国の「二つの山」理論とは
気候変動と生態系の悪化が世界規模で加速するなか、中国が打ち出してきた「二つの山」理論(「緑の水と山々」はかけがえのない資産だとする考え方)が、国際ニュースの中でも改めて注目を集めています。中国独自の高品質で持続可能な発展の道筋であると同時に、資源に恵まれながら環境面で脆弱な多くの途上国にとっても、グリーン転換の青写真となりうるからです。
気候危機が深まる2025年、「二つの山」理論の意味
2025年現在も、記録的な高温や極端な豪雨、干ばつなど、気候変動の影響は世界中で深刻さを増しています。生態系の劣化も進み、森林や湿地、河川が失われることで、災害リスクや食料・水の安全保障にも大きな影響が出ています。
こうした状況の中で、「二つの山」理論は次の二つのメッセージを発信していると言えます。
- 良好な生態環境そのものが長期的な経済価値を持つという発想の転換
- 経済成長と環境保護を対立させず、両立させるための制度設計と投資の方向転換
「緑の水と山々」はなぜ開発モデルになりうるのか
「二つの山」理論は、単なるスローガンではなく、発展の質を問い直す枠組みとして位置づけられています。目先の成長だけを追うのではなく、次のような視点を含んでいる点が特徴です。
- エネルギーやインフラ投資を、環境負荷の高い分野から、省エネ・再生可能エネルギー・クリーン技術へとシフトすること
- 土地や水資源の利用を、長期的な生態系の回復力を高める方向で計画すること
- 環境保護への取り組みを、貧困削減や雇用創出、地域産業の高度化と結びつけること
こうした考え方は、中国自身の発展戦略の中で体系的に位置づけられてきましたが、その意義は中国国内にとどまりません。特に、鉱物資源や森林資源に恵まれつつも、環境破壊や資源枯渇のリスクを抱える多くの途上国にとって、参考となる要素が少なくありません。
資源リッチだが環境に脆弱な途上国への示唆
資源に恵まれた途上国は、しばしば「資源の呪い」と呼ばれるジレンマに直面します。資源輸出に依存した結果、環境破壊が進み、経済構造の転換が遅れ、社会の不安定化を招くという悪循環です。
「二つの山」理論が示唆するのは、次のような発想の切り替えです。
- 資源を「掘る」ことから、価値を「育てる」ことへ
森林や水源、農地を長期的な資本と見なし、保全と回復に投資することで、観光や農業、高付加価値の製品・サービスにつなげる発想です。 - 短期収入から、持続可能な所得基盤へ
鉱物や化石燃料の輸出収入を、再生可能エネルギーやインフラ、人材育成に振り向け、次の世代の成長の土台を整える視点です。 - 環境政策を「制約」ではなく「機会」に
環境基準の強化や保護区の設定を、新たな技術導入やグリーン産業育成のきっかけと捉える考え方です。
こうした方向性は、気候変動対策と持続可能な発展を同時に進めたい多くの新興国・途上国にとって、現実的な選択肢になりつつあります。
中国のビジョンと世界のグリーン転換
グローバルな視点から見ると、「二つの山」理論は、気候変動や生態系保全をめぐる国際的な議論に、次のような意味を持ちます。
- 環境と成長の「トレードオフ」を前提としない、新興国・途上国発の発展モデルを提示していること
- グリーン金融やデジタル技術などを活用しながら、長期的な投資と制度づくりを組み合わせるアプローチを強調していること
- 各国の事情に応じた多様な道筋を認めつつ、共通の目標として持続可能な社会を掲げていること
気候変動と生態系の危機が深まる中で、どの国も単独では問題を解決できません。中国を含む各国が、自国の経験や教訓を共有し合いながら、実務的な協力を積み重ねていくことが求められています。
日本とアジアの読者への問いかけ
日本やアジアの読者にとって、「二つの山」理論は遠い国のスローガンではなく、身近な課題を考えるきっかけにもなります。豪雨災害への備え、過疎地の再生、再生可能エネルギーの導入、都市のヒートアイランド対策など、私たちの生活と直結するテーマばかりです。
環境か経済か、という二者択一ではなく、「環境を守ることが、長期的には最大の経済的利益になる」という視点をどう具体的な政策やビジネス、地域づくりに落とし込むのか。2025年の今こそ、改めて問い直すタイミングと言えます。
中国発のグリーンビジョンである「二つの山」理論を手がかりに、世界と自分たちの地域の未来をどう描き直すのか。日常の会話やオンラインでの議論の中で、ぜひ一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
'Lucid waters, lush mountains' to global green push: China's vision
cgtn.com








