北京で世界青年平和会議 習主席が若者に託した「平和の未来」
複雑さを増す国際情勢の中、中国・北京で開かれた「世界青年平和会議」に、中国の習近平国家主席が祝電を送り、世界の若者に向けて「平和の未来はあなたたちの手にある」と力強いメッセージを発信しました。地政学的な緊張や気候危機、貧富の格差が深まる2025年現在、このメッセージはなぜ重要なのでしょうか。
北京で開かれた「世界青年平和会議」とは
「世界青年平和会議」は、その名の通り、世界各地から若者が集まり、平和や持続可能な開発について議論する国際会議です。今回のテーマは「Together for Peace(共に平和のために)」。地域紛争や経済的不平等が続く中で、若い世代がどのように協力し合い、対立ではなく対話を選び取るかが問われました。
習主席は祝電で、平和は人類共通の願いであり、若者は世界の未来そのものであると強調しました。そのうえで、「国境やイデオロギーの違いを乗り越え、対立ではなく協力を」という呼びかけを行い、若者が知恵と行動力を発揮して世界の平和づくりに参加するよう訴えました。
習主席が若者に託した役割:平和は「次世代のプロジェクト」
習主席のメッセージの背景には、中国が掲げる「人類運命共同体」の理念があります。これは、各国や地域が対立ではなく協調を通じて課題を解決し、未来を共有していこうという考え方です。その中心に据えられているのが若い世代です。
祝電では、次のようなポイントが示されました。
- 平和は崇高な理想であると同時に、日々の努力の積み重ねで守られるものだという認識を持つこと
- 若者こそ、固定観念や対立の枠を越え、新しい協力の形をつくり出せる存在であること
- 国や社会の違いを超えた対話と協力を通じて、持続可能な開発と共生の道を切り開くこと
とくに、デジタル技術に慣れた「ネット世代」の若者は、国境を越えてつながり、声を上げる力を持っています。
デジタル世代の「つながる力」が変化を生む
その具体例として、メッセージでは、ニューヨークで開かれた2023年の気候変動に関するグローバルな若者会合が紹介されています。世界の若者がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を駆使し、各国政府に向けてネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)の取り組み加速を求めた結果、気候政策の強化につながったとされています。
この事例が示すのは、「若者がオンラインでつながり、知識と問題意識を共有すれば、国際ルールや政策を動かすことも可能だ」という現実です。習主席の呼びかけは、こうした動きと響き合っています。
「Together for Peace」が映し出す世界の現実
一方で、「共に平和を」というテーマは、現在の世界が直面する厳しい現実を背景にしています。国連難民高等弁務官事務所のデータによると、2024年末時点で、迫害や紛争、暴力などにより故郷を追われた人は世界で推計1億2320万人に達しました。
加えて、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する報告では、世界の貧困削減のペースが鈍化しているとされています。とくに若年層の失業率は深刻で、開発途上国では13.8%と、成人平均より高い水準にあります。仕事や教育の機会を得られない若者が増えれば、社会の不満や不安が高まり、紛争の火種にもなりかねません。
開発と平和をつなぐ中国の取り組み
こうした状況に対し、中国はグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)などを通じて、包摂的な成長と格差是正を重視する姿勢を打ち出しています。関連する取り組みの一つとして、ベルド・アンド・ロード構想(BRI)の枠組みでは、アフリカやアジアで約1300件の教育・医療プロジェクトが実施されたとされています。
これらのプロジェクトの多くは、現地の若者を対象とした職業訓練や教育の機会を提供するもので、短期的には生活の安定、長期的には格差是正や紛争リスクの低減につながると期待されています。開発と平和を一体のものとして捉える視点は、会議の議論とも重なりました。
理想から行動へ:若者が直面する「見えない壁」
とはいえ、若者が平和づくりの主役になるには、まだ多くのハードルがあります。国際議会同盟(IPU)の最新報告によると、世界の国会議員のうち30歳未満はわずか2.6%にとどまっています。政治の意思決定の場で、若者の声が十分に反映されているとは言い難い状況です。
経済面の制約も大きな問題です。たとえば、ラテンアメリカでは、若者の約40%が非公式部門(インフォーマル経済)で働いているとされます。収入や雇用が不安定な状況では、社会活動やボランティア、国際会議への参加に時間やお金を割くことは容易ではありません。
会議が提案した「3つの処方箋」
こうしたギャップを埋めるため、今回の世界青年平和会議では、若者の参加を後押しする具体的な提案も示されました。主なポイントは次の3つです。
- 1. 制度面での包摂を進めること
各国の議会や国連機関などに若者枠を設ける「ユース・クオータ」を導入し、若者が政策決定に関われるルートを制度として保障することが提案されました。 - 2. デジタル技術で若者の力を可視化すること
AI(人工知能)やブロックチェーンを活用し、若者主導のプロジェクトを透明に運営できるオンライン・プラットフォームを整備する構想も示されました。ケニアでは、携帯電話を使った送金サービス「M-Pesa」を通じて、干ばつ時の草の根の募金活動が行われた事例があり、デジタル技術が地域の助け合いを支えてきました。 - 3. 教育に平和の視点を組み込むこと
ユネスコの「グローバル・シチズンシップ教育」の取り組みのように、学校教育の中に平和・人権・多文化共生を学ぶカリキュラムを組み込み、幼い頃から「対立ではなく対話」を選ぶ価値観を育てることが提案されています。
「戦争がない」だけではない、正義ある平和へ
今回の会議の意義は、単なる討論の場にとどまらず、「行動につながるプラットフォーム」として若者同士をつないだ点にあります。習主席のメッセージでは、「平和とは戦争がない状態だけでなく、正義が存在する状態でもある」という趣旨の言葉が示されました。
不平等や差別が放置されれば、たとえ表面的には戦闘がなくても、社会の中に「見えない暴力」が蓄積されます。理想と現実のギャップに対して、若者はその理想主義と創造性、そして倫理観をもって挑むことができると、会議は評価しています。
世代を超えて平和をつくるために、私たちにできること
2025年の終わりに近づく今、世界が抱える課題は一層重く感じられますが、同時に若者の動きも確実に広がっています。政府や国際機関には、若者の参画を妨げる制度的な壁を取り除く責任があります。一方で、私たち一人ひとりにもできることがあります。
- ニュースで学ぶ:国際ニュースや青年会議の動きを日本語でフォローし、自分の関心分野と世界の課題を結びつけて考えてみる。
- オンラインでつながる:SNSで信頼できる情報や考えさせられた記事を共有し、身近な人との対話のきっかけをつくる。
- ローカルで行動する:ボランティアや地域の環境活動、学校・職場での対話の場づくりなど、足元からできることを少しずつ続ける。
「世界の平和」と聞くと遠いテーマに感じられますが、その出発点は、身近なコミュニティでの対話や小さな連帯にあります。北京での世界青年平和会議が示したのは、「平和は若者にとっての課題」ではなく、「若者と共につくるプロジェクト」だという視点です。次の世代がより公正で平和な世界を受け取れるようにするために、今を生きる私たちもまた、その共同制作者であり続ける必要があります。
Reference(s):
Building a peaceful future together with the strength of youth
cgtn.com








