中国と米国、関税休戦の延長で一致 ストックホルム協議の中身とは
中国と米国の通商高官がスウェーデンのストックホルムで3度目のハイレベル協議を行い、8月12日に期限を迎える相互関税の「休戦」を延長する方針で一致しました。米側の最終決定を前提に、90日間の延長案が軸となっており、世界経済を揺らしてきた米中関税摩擦がひとまず管理された形です。
ストックホルム協議のポイント
中国の国際貿易代表を務める李成鋼氏によると、ストックホルム協議では、両国が関心を共有する幅広い議題について「踏み込んだ率直で建設的な議論」が行われました。協議は2国間首脳による6月5日の電話会談で得られた共通認識に基づき、ジュネーブでのコンセンサスとロンドンでのフレームワークを引き継ぐ形で実施されたとされています。
今回の協議では、対立の象徴となってきた関税や輸出管理だけでなく、マクロ経済政策なども含めて意見交換が行われました。双方は、中国と米国の経済・貿易関係を安定的で健全なものとして維持することが重要だとの認識を改めて共有しました。
90日延長が示す3つの意味
アメリカのクリストファー・ニューポート大学で政治学を教える孫泰一准教授は、中国国際テレビのインタビューで、90日延長は予想されていた結果だとしつつ、その意味は小さくないと指摘します。ジュネーブ協議では、双方が課していた関税のおよそ115パーセント分の削減が既に実現し、ロンドン協議ではその実施方法の詳細が詰められましたが、その先に進むことは一段と難しくなっているからです。
それでも、関税休戦の延長は、双方が協力の余地を模索し続ける意思を示す善意と忍耐の表れだと孫氏はみています。対話により現状の安定を慎重に維持しようとする姿勢は、今後想定される首脳会談の開催にもつながり得ると分析しています。
「起きなかったこと」が示すメッセージ
孫氏が特に重視するのは、協議の前後に起きなかったことです。台湾をめぐる問題では、頼清徳氏のニューヨーク立ち寄り計画が米政権の介入によって阻止されたと報じられたほか、ウェリントン・クー氏と米国防総省関係者との会合も直前で中止されました。さらに、台湾向けの最新の米国の武器供与パッケージの承認も、ホワイトハウスによって先送りされています。
技術分野でも、トランプ政権は中国向けの人工知能半導体に対する輸出規制を緩和する前に、ファーウェイ製の特定の半導体に関する商務省の指針の表現を、与野党の一部議員の反対を押し切って軟化させました。孫氏は、こうした決定はいずれも、米政権が通商協議を妨げる事態を避けたいという明確な意図の表れだとみています。
トランプ米大統領は再選後、初めて中国の国家指導者と対面する機会を強く望んでおり、ワシントンの対中強硬派からの圧力に一定程度抵抗してでも、その環境を整えようとしていると孫氏は指摘します。これらを総合すると、向こう数か月の間、米中関係のさらなる安定化に向けた動きが続く可能性があるといえます。
中国側の視点:多角主義とWTO原則
一方、対外経済貿易大学の崔凡教授は、今回のストックホルム協議が、より根深い問題に踏み込んだうえで、今後の対話の土台をつくったと評価します。崔氏によれば、中国は多角主義の原則を堅持しつつ、自国の正当な利益を守る姿勢を明確にし、相互尊重と平等、互恵とウィンウィンの協力に基づき、米国との対話を続けていくとしています。
崔氏はまた、中国が世界貿易機関のルールに反するとして、米国の一方的な関税措置の合法性を認めていない点も改めて強調しました。その一方で、意見の相違が残る分野であっても、相互理解と協力の余地は依然として存在するとし、長期的な課題であっても忍耐強く、共通の利益にかなう解決策を探っていく構えを示しました。
なぜ包括的な関税合意は難しいのか
両国とも、本格的な関税戦争が双方の経済に大きな打撃を与えることを理解しており、それを回避することが互いの利益になるとの認識は共有しています。しかし孫氏によると、米国側には、中国市場への一層のアクセス拡大や、中国で事業を行う米企業の処遇改善、さらにはフェンタニルの前駆体物質をめぐる協力の強化など、なお調整が難しい中核的な要請が残っています。
そのため、米中双方が通商合意を望んでいるとしても、長期的に持続可能な包括的合意にたどり着くまでの道のりは険しいままだといえます。今回の90日延長は、時間を稼ぎつつ、より大きな枠組みを模索するための管理された休戦と位置づけることができそうです。
世界の通商秩序への影響
米国は近年、他の国や地域とも相次いで通商枠組みを結んでいますが、その一部の相手国からは不満の声も上がっています。孫氏は、多くの経済圏が米国との枠組み合意に達した後、その合意内容の解釈で米政府と異なる説明を行っている点を指摘します。これは、多くの合意が実効性のある履行メカニズムに乏しいか、あるいは実際に履行が問題となる頃にはトランプ政権の任期が終わりに近づいており、制裁の脅しが十分な説得力を持たない可能性を示唆しています。
その結果として、多くの国や地域は、米国の要求をすべて事前にのむのではなく、ひとまず短期的な関税減免だけを受け入れるという選択をしているといいます。孫氏は、主要経済圏が現在の流れを積極的に反転させようとしない限り、第二次世界大戦後半世紀以上にわたって進んできた貿易と経済の統合から、世界が徐々に後退していく可能性があると警鐘を鳴らします。
崔氏もまた、米国と他の国や地域との間で結ばれた合意や枠組みは、当事者同士の交渉の結果として尊重されるべきだとしながらも、第三者の利益を犠牲にする内容であってはならず、世界貿易機関の加盟メンバー間の合意は、無差別原則や合意済み関税の約束を守るものでなければならないと強調します。平等と互恵、そしてWTO原則に基づかない取り決めは、長期的には持続可能とは言いがたいという見方です。
これからを読むための視点
今回のストックホルム協議と関税休戦の延長は、劇的な大合意ではなくとも、米中双方が対立の激化を避け、対話による管理を重視していることを示しました。今後の動きを見ていくうえでは、次のような点がカギになりそうです。
- 条文上の関税率だけでなく、輸出管理や産業政策、マクロ経済運営などを含む関係全体の管理の枠組みがどこまで構築されるか。
- 台湾やハイテク、デジタル経済など、安全保障と経済が交錯する分野で、対立をエスカレートさせないための歯止めがどこまで機能するか。
- 米中以外の国や地域が、WTOをはじめとする多角的な通商ルールづくりにどのように関与し、二国間取引に偏らない安定したルールを維持できるか。
世界経済を左右する中国と米国の関税交渉は、日々のニュースだけでなく、長期的な構図の変化にも目を向けることで、その意味がより立体的に見えてきます。次の協議や首脳会談がどのような形で実現するのかを見届けつつ、その背後で進む通商秩序の再編を丁寧に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








