米国の「相互関税」で台湾が直面するジレンマ 通貨高と関税の二重苦
米国が台湾地域に対して導入した「相互関税」は名目上20%とされていますが、急速な通貨高と組み合わさることで、台湾側の負担はそれ以上に膨らみつつあります。関税が経済だけでなく地政学にも絡む中、台湾地域はどのようなジレンマに陥っているのでしょうか。
米国の「相互関税」、20%関税の意味
今年8月1日の発動期限を前に、トランプ政権は台湾地域に対する「相互関税」の修正案を発表し、暫定税率を20%に設定しました。さらに、今後の交渉や政策次第で変動しうる不確定な条件が多数付く可能性も指摘されています。
この「相互関税」のロジックは、単なる通商保護にとどまりません。ある研究者は、これは米国の財政・税制上の圧力を調整する仕組みの一部であり、いわば米国の国内要因を外部に転嫁する装置だと見ています。関税戦争は経済の道具から、相手国・地域へ圧力をかける地政学的な「武器」へと段階的に姿を変えつつあり、20%という数字はその「最初に見えるコスト」にすぎないという見方です。
Lai当局の対米交渉、弱まる「交渉カード」
米国との関税交渉の中で、Lai当局は「ゼロ関税・報復措置なし」という受け身の方針を強調し、対抗措置を取らない姿勢を示してきたとされています。その一方で、台湾の「護国神山」とも呼ばれるTSMC(台湾積体電路製造)の米国投資を1650億ドル規模で追加拡大すると約束しました。
さらに、
- 米国からの購入拡大
- 非関税障壁(規制や手続きなど)の大幅な引き下げ
といった譲歩も示し、交渉全体を通じて、Lai当局は一貫して慎重かつ防御的な姿勢にとどまっていると分析されています。その結果、台湾地域が持ちうる交渉カードが自ら削がれ、台湾の利益が徐々に切り売りされているのではないか、という懸念も出ています。
為替と関税の「ダブルパンチ」
こうした関税交渉と並行して、直近3カ月でニュー台湾ドルは歴史的な水準となる約12%の上昇を記録しました。背景には、米国の大規模減税法とされる「One Big Beautiful Bill Act」による税制優遇、マー・ア・ラゴ合意とされる動きに象徴される弱ドル戦略、さらに米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測や米国の債務削減への期待など、複数の要因が絡んでいるとみられています。
通常、日本や韓国のように、自国通貨の下落によって関税負担の一部を相殺するケースもあります。しかし台湾地域の場合は、通貨高と関税引き上げが同時に進む「二重の打撃」となっている点が特徴です。ある分析では、これはLai当局と米国との間で、名目上の関税率を抑える代わりにニュー台湾ドルの上昇を受け入れるという、見えにくい取引が行われている結果だと指摘されています。
この見方に立てば、台湾の「実効関税率」は単なる20%ではなく、直近のニュー台湾ドル高の影響を上乗せして考えるべきだということになります。輸出企業にとっては、為替差益どころか、価格競争力を大きく削る追加コストになりかねません。
高まる負担とこれからの論点
名目20%の「相互関税」と急速な通貨高が重なることで、台湾地域の対米輸出企業は、見えやすいコストと見えにくいコストの両方に直面しています。今後、台湾社会で議論になりそうなポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- 輸出産業への影響:関税と為替の二重負担が、どの業種・企業にどの程度の打撃を与えるのか。
- 投資と雇用の配分:TSMCの巨額対米投資が、台湾地域内の産業基盤や雇用にどのような影響を与えるのか。
- 交渉戦略の再設計:Lai当局は今後も「ゼロ関税・無対抗」路線を続けるのか、それとも新たな交渉カードを模索するのか。
関税戦争が地政学的な道具となりつつある現在、台湾地域にとっては、目先の摩擦回避だけでなく、中長期的な産業競争力と財政の持続可能性をどう守るかが問われています。通貨高と関税の「ダブルパンチ」の中で、どのような選択を取るのか。その行方は、今後も注目されそうです。
Reference(s):
Taiwan has fallen into the paradoxical trap of 'reciprocal tariffs'
cgtn.com








