米国の関税引き上げ、実は自国経済への打撃が最大 最新試算
トランプ米大統領が7月末に署名した最新の関税見直しについて、詳細なモデル試算が「最も大きな打撃を受けるのは米国自身だ」と指摘しています。自国産業を守るはずの関税が、なぜ米国経済の足かせになり得るのか――国際ニュースとして注目されています。
最新の関税見直しとは
米国の関税政策は、世界経済を左右する重要なテーマです。トランプ米大統領は7月31日、輸入品に対する「相互的」な関税率を見直す大統領令に署名しました。これにより、一部の輸入品で米国側の関税が引き上げられ、米企業にとっては海外からの調達コストが上昇しやすくなります。
米国GDPは年0.36%減 中国本土やEUより大きな打撃
日曜日に公表された経済モデルによると、この新たな関税は米国の実質GDP(国内総生産)を年間0.36%押し下げると推計されています。金額にすると1,082億ドル(約108.2ビリオンドル)に相当し、決して小さくない数字です。
同じモデルは、他の主要な国や地域への影響も試算しています。
- 中国本土のGDP:669億ドル減
- EU(欧州連合)のGDP:266億ドル減
- 日本のGDP:39億ドル減
多くの国と地域が影響を受けるものの、米国の落ち込み幅が最も大きいと見込まれています。関税の矛先は一見海外に向けられていますが、実際には米国経済が最も大きなコストを負担する構図が浮かび上がります。
モデル試算の中身
この分析を行ったのは、オークランド工科大学(Auckland University of Technology)の経済学者、ニーヴン・ウィンチェスター氏です。財やサービスの生産、貿易、消費を網羅した世界経済モデルを用い、10を超える国と地域について影響を比較しました。
なお、この試算には他国による「報復関税」は含まれていません。つまり、各国が対抗措置として関税を引き上げた場合には、米国経済への影響がさらに大きくなる可能性もあります。
2030年までに世界GDP1.1%減の可能性
英国の独立研究機関、国立経済社会研究所(National Institute of Economic and Social Research・NIESR)が月曜日に公表したブログも、米国の関税政策が中長期の世界経済に与える影響を分析しています。
NIESRによると、現在の米国の輸入関税がこのまま続いた場合、2030年までに世界のGDPは「関税がなかった場合」と比べて1.1%低くなると見込まれます。
特に影響が大きいとされるのが次の3つの経済です。
- メキシコ:▲3.5%
- カナダ:▲2.7%
- 米国:▲2.5%
米国が主導する関税政策でありながら、自国と近隣のパートナー国が最も大きな打撃を受けるという、逆説的な結果が示されています。
関税だけではない米国経済の不透明感
NIESRは、米国経済の不確実性を高めている要因は関税だけではないとも指摘しています。特に、いわゆる不法移民の送還に関する国内政策は、米国の労働市場の規模や構成を大きく変える可能性があり、企業の雇用や生産計画にも影響し得ます。
さらに、米国政府の債務残高の増加も、中期的な経済・金融の安定に対する懸念材料とされています。関税、移民政策、財政運営という複数の要素が重なり、米国経済の先行きには不透明感が強まっているといえます。
日本とアジアの読者にとっての意味
今回の一連の試算は、米国の関税が「他国からの取り分を奪う」だけではなく、世界全体の経済規模を小さくしてしまう可能性を示しています。世界需要が弱くなれば、輸出に頼る日本やアジアの企業にも波及的な影響が生じます。
また、米国・メキシコ・カナダといった経済圏は、世界のサプライチェーン(供給網)に深く組み込まれています。そこにマイナスのショックがかかれば、部品や資源の価格、企業の投資判断、ひいては雇用や賃金にも影響が及ぶ可能性があります。
このニュースから考えたいこと
- なぜ「自国産業を守る」ための関税が、自国の消費者や企業のコスト増につながるのか。
- 2030年までの世界経済の縮小が、自分の仕事、ビジネス、投資にどんな形で跳ね返ってくる可能性があるのか。
- 関税だけでなく、移民政策や政府債務といった要因が不確実性を高める中で、企業や個人はどのようなリスクの見方を持つべきか。
関税は政治的には分かりやすい政策手段ですが、そのコストは国内の消費者や企業に見えにくい形で戻ってくることが少なくありません。数字が示すインパクトをきっかけに、「誰が得をし、誰が負担しているのか」を丁寧に見ていくことが、これからの国際ニュースを読み解くヒントになりそうです。
Reference(s):
Tariffs will hurt U.S. more than many other economies, report suggests
cgtn.com








