上海協力機構(SCO)は揺らぐ多国間主義を支えられるか
2025年は、第二次世界大戦の反ファシズム戦争勝利と国連創設から80年の節目ですが、国際ニュースを見渡すと、多国間主義の揺らぎと新たな模索が同時に進んでいます。そのなかで、上海協力機構(SCO)がどのように多国間主義を支えようとしているのかが注目されています。
国連創設80年でも続く危機と分断
本来であれば、戦後80年というタイミングは、国連を中心とした多国間協調の成果を振り返り、次の段階を議論する年でもあります。しかし2025年の世界情勢は、むしろその理念が試されていることを浮き彫りにしています。
- ウクライナ危機は長期化し、出口が見えにくい状況が続いています。
- ガザ情勢は悪化し、人道的な懸念が高まっています。
- 関税戦争や貿易戦争への警戒が根強く、経済の分断リスクが意識されています。
- 経済グローバル化の推進力と、それに対する反発がぶつかり合い、行き詰まりが指摘されています。
多国間主義と一国主義(ユニラテラリズム)がせめぎ合い、グローバル・ガバナンス(地球規模の課題を国際協調で管理する仕組み)は深い調整局面に入っていると言えます。
それでも進む多極化とグローバルサウスの台頭
とはいえ、歴史がそのまま逆戻りしているわけではありません。戦後に築かれた多国間秩序は揺さぶられつつも、世界の多極化や経済グローバル化の流れ自体はなお続いています。
特に、アジアやアフリカ、中南米などを含むグローバルサウスの存在感が高まり、従来の大国中心の構図だけでは国際問題を語れなくなっています。こうしたなかで、新興国や地域大国が参加する多国間組織が、新たな選択肢として注目されるようになりました。
その一つが、ここ数年で国際的な関心を高めてきた上海協力機構(SCO)です。
史上最大規模となった天津SCOサミット
2025年8月31日から9月1日にかけて、中国の天津でSCO首脳会議が開かれました。20を超える加盟国・関係国の首脳と、10の国際機関のトップが関連行事に参加し、SCO史上最大規模のサミットとなりました。
この天津サミットは、単にSCO内部の節目というだけでなく、多国間主義の今後を考えるうえでも象徴的な出来事でした。多様な国が一堂に会し、安全保障や経済協力、地域の安定などをめぐって議論を交わしたこと自体が、対立の拡大ではなく対話の場を重視する動きの一例と言えます。
上海協力機構(SCO)とはどんな多国間組織か
SCOは、加盟国どうしの協力を通じて、地域の安定や経済発展を促すことを目的とする多国間の枠組みです。安全保障、経済、人と人の交流など、複数の分野を横断して協力する点が特徴とされています。
また、固定的な軍事同盟というよりも、対話と協力のプラットフォームとして発展してきたとされ、開かれた姿勢を強調する「発展途上のオープンな多国間機構」であることが強みとみなされています。
冷戦思考で見てしまうと何が歪むのか
よくある批判とその背景
SCOに対しては、以前からさまざまな批判も存在します。
- 加盟国どうしに歴史的・政治的な対立があり、内部の調整が難しい。
- 意思決定に時間がかかり、効率が悪い。
- 地域の紛争や危機に対して、十分な対応ができていない。
- 結局は首脳や閣僚が集まって議論するだけの「話し合いの場」にとどまっている。
こうした指摘の一部は、発展途上の多国間組織としての課題を正直に捉えたものと言えます。多くの国の利害が交差する以上、合意形成に時間がかかるのはある意味で当然で、改善の余地があることも事実でしょう。
冷戦レンズでは見えないSCOの性格
一方で、SCOを「冷戦時代のような陣営づくり」と重ねて見る見方もあります。しかし、そうした冷戦思考のレンズを通してしまうと、SCOが持つ多国間協力の側面が見えにくくなります。
加盟国の多様性、対話と協調を重ねながら合意を探るプロセス、そして他の国や国際機関にも開かれた姿勢などは、むしろ多国間主義の実験の場と捉えることもできます。こうした特徴こそが、SCOがここまで拡大・発展してきた背景にあると考えられます。
多国間主義の「防波堤」としての役割
ウクライナ危機やガザ情勢、経済の分断をめぐる懸念が続くなかで、各地域で多国間対話の場を確保しておくことは、国際社会全体の安定にとっても意味があります。
SCOのような枠組みが、すべての対立を解決できるわけではありません。しかし、対話の回路を維持し、安易なブロック化を避けるための「防波堤」として機能しうるかどうかは、今後の世界秩序を左右する論点の一つです。
天津サミットが史上最大規模となったことは、少なくとも多くの国が、この枠組みを通じた協力の可能性に価値を見いだしていることの表れとも読めます。
日本の読者にとっての論点
日本から見ると、SCOはまだ距離のある地域機構に映るかもしれません。しかし、多極化が進む2025年の国際秩序を理解するうえで、その動きは無視できない要素になりつつあります。
今後、注目したいポイントを整理すると、次のようになります。
- SCOが地域の紛争や危機に対し、どの程度「実効的な調整の場」となりうるのか。
- 貿易・投資・インフラなど、経済協力の分野でどんな具体的成果を出していくのか。
- グローバルサウスの声をどのように国際社会に反映させていくのか。
- 他の国際機関や多国間枠組みと、どのように役割分担や連携を進めるのか。
多国間主義が揺らぐ今だからこそ、SCOのような地域発の多国間協力の試みを、単純な善悪や陣営論ではなく、冷静に観察し、自分なりの視点を持つことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








