米国の鉄鋼・アルミ関税が50%に倍増 消費者負担はどこまで増えるか
米国で鉄鋼・アルミ輸入への追加関税が大幅に拡大し、米消費者の負担が急速に高まるとの懸念が広がっています。国際ニュースとしても、世界の貿易や物価に影響しかねない動きです。
鉄鋼・アルミ関税が50%に倍増、派生製品にも拡大
米国の新たな鉄鋼・アルミ製品への追加関税が、2025年12月8日(月)に発効しました。トランプ政権は関税率を従来の水準から倍増させ、輸入価格に対して50%の上乗せを行う決定をしました。
この決定により、原材料としての鉄鋼やアルミだけでなく、それらを使った「派生製品」と呼ばれる完成品や部品も対象になりました。
米商務省は、12月5日(金)付の連邦官報で、産業安全保障局(Bureau of Industry and Security)が米国の統一関税表(Harmonized Tariff Schedule)に407の製品コードを追加したと発表しました。これらの製品は鉄鋼・アルミを含むことを理由に、新たな追加関税の対象になります。
世界で少なくとも333社が反応 企業はどう動いているか
こうした関税措置に対し、企業側もすでに動きを見せています。ロイターの追跡調査によると、トランプ政権が2025年2月1日にメキシコ、カナダ、中国からの輸入品への関税をきっかけに「貿易戦争」を始めて以来、2025年8月12日までに少なくとも世界で333社が何らかの形で対応に乗り出しました。
対応の中身はさまざまですが、一般的には次のような動きが予想されます。
- 仕入れ先や生産拠点を見直し、関税のかからない地域から調達する
- コスト増を販売価格に転嫁し、製品価格を引き上げる
- 政府に対して関税の除外申請や見直しを求めるロビー活動を行う
- 不確実性を踏まえ、設備投資や雇用計画を慎重化する
いずれにせよ、企業が取る選択は、最終的には消費者価格や雇用、投資に跳ね返るため、各国の経済にも影響を与える可能性があります。
関税の「ツケ」は誰が払うのか ゴールドマン・サックスの試算
「関税は他国への圧力」というイメージが強いかもしれませんが、そのコストを誰がどの程度負担しているのかについては、すでに試算が出ています。
米金融大手ゴールドマン・サックスの調査チームは、2025年6月時点で、これまでの関税による負担のうち米国の消費者が負っている割合は22%に達していると推計しました。
同じ分析では、このまま現在の流れが続けば、2025年10月までに米国の消費者が負担する割合は最大67%にまで高まる可能性があるとも指摘しています。ロイター通信は、この試算を同社の分析として伝えました。
ここでいう「負担」とは、関税によって生じたコスト増が、最終的に誰の懐から出ているかを測ったものです。輸入品の価格が上がると、
- 輸入企業(米国内の商社やメーカー)の利益が削られる
- 海外の輸出企業が値下げを強いられる
- 消費者がより高い価格を支払う
といった形で分担されます。ゴールドマン・サックスの試算は、このうち消費者が負担している割合が大きくなりつつあると示しています。
「対外制裁」のつもりが、事実上の増税になる側面も
トランプ政権が掲げる関税政策は、表向きにはメキシコやカナダ、中国など他国との貿易不均衡を是正する手段とされています。しかし、輸入品の価格上昇は、米国内の企業と消費者にとっては事実上の「コスト増」、あるいは「増税」のようにも働きます。
特に鉄鋼やアルミは、自動車、家電、建材、飲料の缶など、日常生活のあらゆる製品に使われています。今回のように関税が派生製品にまで広がると、
- 自動車や住宅の価格がじわじわ上がる
- 家電や日用品の値引き余地が小さくなる
- 企業のコスト増が賃金や雇用計画に影響する
といった形で、米国の家計に直接・間接の負担がかかる構図が強まります。
広がる貿易戦争と世界経済 日本はどう見るべきか
2025年2月1日の関税発動を皮切りに、米国はメキシコ、カナダ、中国をはじめとする主要な貿易相手との間で関税措置を相次いで打ち出してきました。今回の鉄鋼・アルミ追加関税の拡大は、その一環として位置づけられます。
米国市場向けに部品や素材を供給している日本企業にとっても、これは他人事ではありません。例えば、
- 米国の取引先がコスト増を理由に値下げを求めてくる
- 関税回避のため、生産拠点の移転や現地調達の比率見直しを迫られる
- 世界のサプライチェーン(供給網)が組み替えられ、アジア全体の取引構造が変化する
といった可能性があります。日本の読者にとっても、国際ニュースとしての関税問題は、為替や株価、企業業績、さらには自分の給与や物価にまで波及し得るテーマです。
これから注目したい3つのポイント
今回の追加関税拡大をめぐって、今後チェックしておきたい論点を3つに整理しました。
- 米国の物価と景気への影響
関税はインフレ要因となり得ます。米国の物価上昇が続けば、金融政策や世界の資金の流れにも影響します。 - 企業の価格戦略とサプライチェーンの再編
どの程度までコスト増を価格に転嫁するのか、あるいは生産拠点の移転などで吸収しようとするのかに注目が集まります。 - 貿易交渉と「出口」戦略
関税の応酬が長期化すれば、企業や消費者の不確実性は高まります。どのタイミングで、どのような形の妥協や合意が模索されるのかが鍵になります。
関税というと遠い世界の話に聞こえるかもしれませんが、そのコストの多くは最終的に「誰かの財布」から支払われます。今回の米国の動きは、誰がどの負担を引き受けるべきなのかという、国際経済の根本的な問いを改めて投げかけています。
スキマ時間でニュースを追う私たちにとっても、「関税は本当に誰のための政策なのか」という視点を持っておくことが、これからの世界経済を読むうえでの一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
US consumers bear high costs as expanded tariffs take effect
cgtn.com








