「ピーク・チャイナ」は幻想か?中国経済の新しい成長モデルを読み解く
「中国経済はもうピークを過ぎた」とする「ピーク・チャイナ」論が世界の議論を賑わせています。しかし、この見方は古い成長モデルに基づく「古い地図」で今の中国を測っているのかもしれません。
「ピーク・チャイナ」論とは何か
近年の国際ニュースや経済解説では、中国の不動産市場の減速、政府投資の失敗、民間企業の信頼感の低下、人口ボーナスの終わり、グローバル化の後退といったキーワードが並びます。
こうした現象をまとめて「中国は成長のピークを過ぎ、長期的な衰退局面に入った」と結論づけるのが「ピーク・チャイナ」論です。一見すると、データを並べた説得力のある診断に見えます。
しかし前提が違っている
この議論の前提には、「中国はいまも、かつての成長パターンを無理に引き延ばそうとしている」という思い込みがあります。低コストの労働力、都市化による需要拡大、大量投資、米国中心の輸出市場――いわゆる旧来型の成長エンジンがまだ続いている、という前提です。
その前提に立てば、あらゆるデータは「ピークを過ぎた証拠」に見えてしまいます。しかし、中国はすでに何年も前から、別のエンジンへの切り替えを意図的に進めてきました。
中国が進めてきた5つのシフト
中国経済の焦点は、「量」から「質」へと移りつつあるとされています。大きく見ると、次のような方向転換が意図的に進められてきました。
- スピードから質へ:成長率の高さそのものではなく、持続可能で安定した成長の質を重視する方向にかじを切っている。
- 要素の積み上げから生産性へ:労働力や資本を増やすことで伸びるモデルから、技術や効率を高めることで生産性を引き上げるモデルへ。
- 個別対応から標準化へ:一部の分野や地域に特化したやり方から、より広く使える標準やルールづくりへ。
- レバレッジからリスク共有へ:借り入れに頼った拡大ではなく、株式などを通じてリスクとリターンを分かち合う仕組みづくりへ。
- 模倣から発明へ:他国の成功モデルをなぞる段階から、自ら新しい製品やサービス、仕組みを生み出す段階へ。
つまり、中国自身が「昨日までのモデルは役割を終えつつある」と認識しており、そのうえで新しい成長モデルへの移行を進めている、という見方です。
「飛行中にエンジンを換える」コスト
では、いま目に見えている不動産市場の調整や、企業・家計の不安感はどう理解すればいいのでしょうか。この論点では、「それらの多くは、飛行中にエンジンを換えるためのコストだ」という比喩が使われています。
旧来のエンジンを止め、新しいエンジンに切り替えるとき、一時的な揺れや減速は避けられません。その揺れこそが、「ピーク・チャイナ」の証拠として語られている現象だ、という整理です。そして、そのコストはあらかじめ想定され、吸収されているとされています。
問われているのは「新しいモデルの出来栄え」
この視点では、議論の焦点も変わります。重要なのは、「かつてのモデルが限界に達したかどうか」ではありません。旧来のモデルが役割を終えつつあるのは、もはや前提だからです。
本当に問うべきなのは次の3点だとされています。
- 新しい成長モデルは、一本のストーリーとして首尾一貫しているか。
- それを支える制度やルールづくりが進んでいるか。
- 実際に生産性を高める成果が、少しずつでも積み上がっているか。
この論調では、これらの問いに対する答えは「安定したイエス」に近づきつつあると評価しています。
日本の読者が押さえておきたい視点
2025年現在、「ピーク・チャイナ」という言葉は、日本語の国際ニュースやSNSでも頻繁に見かけるようになりました。しかし、その背後にある前提や、別の見方を丁寧に追いかける機会は多くありません。
今回紹介したのは、「中国はあえて旧来のエンジンを止め、新しい成長モデルに移行している最中だ」というストーリーです。この視点に立つと、短期的な減速や混乱は、長期的な構造転換の「必要コスト」として見えてきます。
国際ニュースを読むとき、「ピーク・チャイナ」という言葉を見かけたら、どんな前提に立った議論なのか、一度立ち止まって考えてみる価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








