半導体に最大300%関税案 米シンクタンクが世界供給網への打撃を警告 video poster
米国のドナルド・トランプ大統領が、半導体に最大300%の関税を課す可能性に言及しました。米シンクタンクは、この半導体関税が世界のサプライチェーン(供給網)と半導体産業全体に深刻な影響を与えかねないと警鐘を鳴らしています。
何が起きているのか:トランプ大統領の「最大300%関税」発言
トランプ米大統領は先週、政府が半導体に対して最大300%の関税を課すこともあり得ると発言しました。具体的な対象国・地域や発動時期、適用条件などは明らかにされていませんが、数字だけを見ても極めて高い水準の関税案です。
半導体は、スマートフォン、パソコン、自動車、データセンター、生成AI向けサーバーなど、現代のあらゆるデジタル機器に欠かせない「部品の心臓部」です。その半導体に数百%規模の関税がかかるとなれば、影響は特定の業界にとどまらず、世界経済全体に広がる可能性があります。
米シンクタンク「世界の半導体エコシステムに非常に有害」
ワシントンを拠点とするシンクタンク「Information Technology and Innovation Foundation(ITIF)」のグローバルイノベーション政策担当副総裁、スティーブン・エゼル氏は、この関税案について強い懸念を示しています。
エゼル氏は、関税は世界の半導体エコシステム(企業・技術・人材がつながる産業の生態系)にとって「非常に有害になり得る」と指摘しました。ここでいうエコシステムとは、設計企業、製造工場、素材・装置メーカー、組み立て・検査企業、そしてそれらを支える研究開発が、国や地域をまたいでネットワークを形成している状態を意味します。
なぜ半導体関税がここまで問題になるのか
半導体産業の特徴は、次のように「国際分業」と「相互依存」が極めて強いことです。
- 設計:チップの設計は米国や欧州、アジアの専門企業が担うことが多い
- 製造(前工程):最先端の製造工場は限られた国・地域に集中している
- 組み立て・検査(後工程):人材とコストのバランスが良いアジア各地に分散
- 素材・製造装置:日本を含む複数の国・地域の企業がそれぞれの得意分野を担う
このように、ひとつの半導体製品が完成するまでに、複数の国と地域を何度も行き来するのが一般的です。そのどこかの段階に高率の関税がかかると、次のような連鎖的な影響が生じやすくなります。
- コスト上昇により、企業が投資や研究開発を抑制
- 別ルートの調達や生産拠点の移転に時間とコストがかかる
- 結果的に、供給の不安定化や価格上昇が世界中のメーカー・消費者に波及
日本とアジアの半導体産業への影響
日本は、半導体材料や製造装置などで重要なプレーヤーとなっています。また、アジアには大規模な製造・組み立て拠点が集積しています。こうした企業や地域にとっても、米国による高率の半導体関税は無関係ではありません。
想定される影響には、次のようなものがあります。
- 日本企業の収益圧迫:サプライチェーンのどこかに追加コストが発生すれば、取引条件の見直しを迫られる可能性
- 需要の不透明化:米国市場向け製品の価格が上昇すれば、販売計画が立てにくくなる
- 投資判断の難しさ:工場新設や設備増強の判断に、通商政策リスクを織り込む必要性が高まる
一方で、各国・地域の企業にとっては、サプライチェーンの再構築や新たな協力関係を模索する動きが強まる可能性もあります。政策リスクとどう付き合いながら、技術開発と安定供給を両立させるかが問われます。
世界経済と私たちの暮らしへの波及
半導体は、もはや特定の「IT業界」だけの部品ではありません。電気自動車(EV)、再生可能エネルギー関連設備、医療機器、金融システムなど、社会インフラの多くが半導体に依存しています。
もし高率の関税によって半導体価格が上昇し、供給が不安定になれば、次のような形で影響が出るおそれがあります。
- スマートフォンやPC、新車価格の上昇
- クラウドサービスや生成AI関連サービスのコスト増
- 企業のデジタル投資の鈍化による生産性向上の遅れ
ニュースで聞く「半導体の関税」や「供給網の混乱」は、一見すると自分の生活から遠い話に思えますが、実際には私たちの日常の価格やサービス品質に直接つながるテーマでもあります。
今後の焦点:政策はどこへ向かうのか
現時点では、トランプ大統領が言及した「最大300%関税」が、いつ、どのような形で実際の政策として打ち出されるのかは不透明です。ただ、米シンクタンクからすでに「世界の半導体エコシステムに非常に有害」という強い懸念が示されたことで、議論は本格化していく可能性があります。
今後、注目したいポイントは次のとおりです。
- 米国内での産業界や議会からの反応
- 主要な半導体関連国・地域による対応や協議の行方
- 企業がサプライチェーン戦略をどのように見直すか
半導体をめぐる政策は、技術・安全保障・経済が交差する複雑なテーマです。日本の企業や消費者にとっても、中長期的な影響を見据えつつ、冷静に動向を追う必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








