ポーランド人経済学者「関税戦争で負けるのは米国だ」その理由は? video poster
米国が打ち出す関税引き上げは、本当に自国を強くするのでしょうか。ポーランドの経済学者バルトロミエイ・E・ノヴァク氏は、いま進んでいる「関税戦争」で不利になるのは米国の側だと指摘しています。本記事では、そのロジックを日本語で整理し、日本や世界への意味を考えます。
「米国は有利な立場にいない」ポーランド人経済学者の警告
ノヴァク氏は、ポーランドのヴィスワ大学(Vistula University)の国際関係学教授で、国際経済にも詳しい研究者です。同氏は、現在の関税政策について次のような趣旨の見方を示しています。
関税が引き上げられると、他の国々は貿易パターン(誰と、何を、どのくらい取引するか)を変えるだけで対応し、結果として米国は「有利な貿易ポジション」を失いかねないというものです。
言い換えると、関税で相手国を追い込むつもりが、長期的には自国の影響力低下や市場喪失につながる可能性がある、という警鐘です。
なぜ「関税戦争で負けるのは米国」なのか
ノヴァク氏の見立ての中心にあるのは、グローバル経済の前提ともいえる「代替先は必ず見つかる」という発想です。米国がある国からの輸入に高い関税をかけても、世界中の企業や政府は次のように動くと考えられます。
- 別の国に輸出先・輸入先を切り替える
- 新しいサプライチェーン(供給網)を構築する
- 米国市場に依存しないビジネスモデルを模索する
その結果、米国は当初狙っていた「相手国への圧力」よりも、自国市場の魅力低下や、自国企業の競争力低下という副作用の方が大きくなるリスクを抱えることになります。
関税が変える「貿易パターン」とは何か
ノヴァク氏が強調する「貿易パターンの変化」とは、具体的には次のような現象を指します。
1. 貿易の迂回と「第三国シフト」
米国がある国からの輸入に関税をかけると、その国の企業は次のような動きを取りやすくなります。
- 関税の影響を受けにくい第三国向けの輸出を増やす
- 第三国に生産拠点を移し、別ルートで市場にアクセスする
- 自国同士や周辺地域の市場を重視し、米国依存度を下げる
こうした動きが積み重なると、米国は「世界の中心市場」としての位置づけを少しずつ失う可能性があります。
2. 企業行動の変化:コスト増から「米国離れ」へ
関税は、基本的には輸入品の価格を押し上げます。短期的には相手国企業への圧力になりますが、中長期的には次のような変化を生みやすくなります。
- 米国内の企業が原材料や部品のコスト増に直面する
- 消費者価格が上昇し、購買力が下がる
- 海外企業が「米国以外の市場」を優先する戦略に切り替える
結果として、米国の関税政策は自国企業と消費者の負担を増やしながら、海外の企業に「脱・米国依存」を促すという、ノヴァク氏が言うところの「不利な貿易ポジション」を生みかねません。
日本と世界にとっての意味合い
では、この見方は日本やアジアにとって何を意味するのでしょうか。国際ニュースとしての関税戦争は、次のような形で日本にも影響しうるテーマです。
- 貿易の再配分:米国向けが減った分、アジアや欧州の市場が重視され、日本企業に新たなビジネス機会が生まれる可能性
- サプライチェーンの見直し:世界の企業が生産や調達先を組み替える中で、日本企業も拠点やパートナーの選び方を再考する必要
- ルール作りへの関心:関税に頼らず、通商ルールや協定をどう整えるかが、今後の国際交渉の焦点になること
ノヴァク氏の指摘は、単に「米国が損をする」という話にとどまらず、一国主導の関税政策が、世界全体の取引の流れをどう変えてしまうかを考えるきっかけになります。
これから注目したい3つのポイント
関税戦争をめぐる議論を追うとき、日本の読者として意識しておきたい視点を3つに整理します。
- 貿易量だけでなく「相手先の入れ替わり」に注目する
単に輸出入の総額だけでなく、どの国との取引が増え、どの国との取引が減っているのかを見ることで、貿易パターンの変化が見えてきます。 - 企業の戦略転換
関税をきっかけに、企業が製造拠点や調達先、市場の重点をどう変えているかは、将来の雇用や投資の流れに直結します。 - 国内への波及効果
米国の関税政策は、最終的には米国の消費者や労働者にも影響します。ノヴァク氏の指摘通りなら、その負担は想定より大きくなるかもしれません。
「関税で相手を追い込む」時代の終わり?
グローバル経済が高度に結びついた2025年現在、関税はもはや一方的な「武器」ではなく、ブーメランのように自国にも返ってくる政策手段になりつつあります。
ノヴァク氏の「関税戦争で負けるのは米国だ」という見方は、短期の政治的なアピールよりも、中長期の貿易構造と企業行動を見なければならないというメッセージでもあります。
関税や貿易をめぐる国際ニュースが流れてきたとき、「他の国は貿易パターンをどう変えようとしているのか」「その先に、どの国が有利なポジションを占めるのか」という視点で読み解いてみると、ニュースの見え方が一段深くなるはずです。
Reference(s):
US will be on the losing side in the tariff war: Polish economist
cgtn.com








