米国で関税インフレがじわり 世界経済に何を意味するのか
2025年4月2日にトランプ米大統領が世界各国からの輸入品に包括的な関税を発表してから、米国ではインフレ(物価上昇)が大きなテーマになり続けています。当初は「思ったほど物価は上がっていない」という安心感も広がりましたが、足元では関税によるインフレ圧力がじわじわと高まりつつあるとみられます。
「解放の日」関税とその狙い
トランプ大統領が発表した関税は、政権内で「解放の日」とも呼ばれ、米国の製造業を守り、貿易赤字を縮小することを掲げた大胆な政策でした。対象は広い品目に及び、実質的には世界全体に向けた追加関税です。この決定は、米国経済だけでなく国際貿易や世界経済にも大きな影響を与えています。
発表直後の数カ月間、ホワイトハウスは一部の関税の適用を一時停止したり、特定の国や企業に例外を認めたりするなど、調整を続けました。こうした「緩衝材」によって、急激な物価上昇への不安は一時的に和らげられました。
統計上は落ち着いたCPI、しかし…
米国の消費者物価指数(CPI)は、関税発表後の4〜7月にかけて、前月比で0.2%、0.1%、0.3%、0.2%の上昇にとどまりました。数字だけを見ると、米国のインフレは比較的穏やかに推移しているように見えます。
トランプ政権の首席交渉役であるベッセント財務長官は、このCPIの動きを根拠に「インフレ懸念を打ち消すことに成功した」と繰り返しアピールしています。また、規制緩和や減税、エネルギー生産の拡大など、企業や家計のコストを抑えるための「改革」を強調し、関税のマイナス影響を相殺していると主張しています。
歴史と足元のデータが示す別のシナリオ
しかし、歴史と現在の経済指標を総合すると、関税がインフレを押し上げるという、別のシナリオが浮かび上がります。ポイントは次の三つです。
- 関税の影響は時間差を伴う
- 企業がコスト増を吸収できる余地には限りがある
- 関税と景気刺激策の組み合わせが物価を押し上げる可能性
まず、関税によるコスト増は、すぐに消費者物価に反映されるとは限りません。企業は在庫を取り崩したり、仕入れ先を切り替えたりして、短期的には価格転嫁を先送りすることができます。その間、CPIは「落ち着いている」ように見えることが多いのです。
しかし、在庫が尽き、代替調達も限界に近づくと、企業は利益率を守るために価格に転嫁せざるをえません。つまり、関税が導入されてから時間がたつほど、インフレ圧力が表面化しやすくなります。
さらに、規制緩和や減税、エネルギー生産拡大といった政策は、短期的には成長を押し上げ、企業や家計の負担を軽くする一方で、需要を刺激し、経済の「過熱」を招きやすい側面もあります。関税による供給側のコスト増と、景気刺激策による需要増が重なることで、物価の上昇圧力が強まる可能性があるのです。
低インフレ時代の「慣れ」が生む落とし穴
世界的に低インフレが続いてきたことで、「多少関税を上げても物価はそう簡単には上がらない」という楽観論が根強くあります。しかし、過去の経験からは、一度インフレ期待が高まり始めると、物価上昇を抑えるにはより強い金融引き締めや景気減速を伴う対応が必要になることが知られています。
足元のCPIが穏やかだからといって安心しきるのではなく、関税や政策の組み合わせが、中期的にどのようなインフレ圧力を生み出すのかを慎重に見極める必要があります。
日本と投資家が注目すべきポイント
米国のインフレと関税政策は、日本を含む世界経済にも直接影響します。例えば、米インフレが本格的に高まれば、米国の金融政策が引き締め方向に傾き、為替や株式、債券市場の変動要因となります。米国向け輸出や現地生産に依存する日本企業にとっても、コストと需要の両面で影響が出る可能性があります。
「CPIはまだ落ち着いているから大丈夫」と片付けてしまうのではなく、関税の本格的な影響がこれから現れる可能性を念頭に置き、米国の物価指標や企業収益、政策運営の行方を総合的にウォッチしていくことが重要です。
米国の関税とインフレの動きは、今後もしばらく国際ニュースの中心テーマであり続けそうです。
Reference(s):
cgtn.com








