ドイツVDMAがEU・米国関税合意を批判 機械産業への影響は
ドイツの機械産業団体VDMAが、EUと米国の新たな関税合意に強く反発しています。米国製品の一部を無関税とする一方で、欧州の機械には関税が残る「非対称な取引」は、公平なのかが問われています。
EU・米国の新関税合意とは
EU欧州委員会は2025年8月、米国から輸入する一部の産業用製品について関税を撤廃する立法提案を示しました。その見返りとして、米国はEU域内で生産された乗用車にかける関税を、これまでの27.5%から15%に引き下げることに合意し、その適用開始日は法案が提出された月の初日、つまり2025年8月1日とされています。
この合意は、世界で最大規模の貿易・投資パートナー同士であるEUと米国の対立をいったん終わらせるものとされています。ただし内容は非対称で、ブリュッセル側は自らの関税を引き下げ、米国産エネルギーの輸入拡大も約束する一方、ワシントンはEUからの輸出品のおよそ7割に対する関税を維持することになっています。
VDMAが「平手打ち」と怒る理由
こうした案に対し、ドイツの機械・設備メーカーの業界団体であるVDMAは強く反発しています。同団体は、EUの関税免除案は「欧州産業の柱の一つに対する平手打ち」だとし、欧州委員会に対して「早急な再交渉が必要だ」と訴えました。
VDMAが特に問題視しているのは、次の点です。
- 米国の産業用製品にはEU市場への事実上の無関税アクセスが認められる
- 同時に、欧州の機械製品には懲罰的な関税が拡大される可能性がある
- その結果、欧州の機械メーカーが価格面で大きな不利を負い、雇用や投資に深刻な打撃が出かねない
VDMAは、およそ3600のドイツおよび欧州の企業を代表する団体です。同団体は、今回の枠組みが実行されれば「雇用の喪失」と「巨大な競争上の不利」を招くおそれがあると警告しています。
それでもEUが合意を受け入れた背景
それではなぜ、EUの各国政府はこの「非対称」な合意をおおむね受け入れているのでしょうか。背景には、より大きな関税リスクの回避があります。ドナルド・トランプ米大統領は、それまでEUから米国に輸入されるほぼすべての製品に、30%の関税を課す準備を進めていたとされています。
多くのEU加盟国にとって、輸出産業は雇用を支える重要な柱です。特に自動車産業はその代表格であり、高関税の対象となれば打撃は避けられません。そうした中で、今回の合意は「悪い選択肢の中ではまだましな案」として受け入れられた側面があります。
トランプ政権の対EU観と貿易赤字
トランプ氏はこれまでも、繰り返しEUを批判してきました。2025年2月には、EUは米国を不利な目に遭わせるために作られたとする発言を行い、EUとのモノの貿易収支の赤字に強い不満を示しています。
2024年の米国の対EUモノの貿易赤字は2350億ドルに達しました。今回の関税合意には、こうした赤字縮小への圧力に応える意味合いも込められており、自動車関税の引き下げや米国産エネルギーの追加購入がその一部を担っています。
ドイツ機械産業にとってのリスク
ドイツの機械産業は、高度な技術力と輸出の強さで欧州経済を支える重要な分野です。VDMAは、ここに追加の関税負担がかかれば、欧州企業が米国企業に対して価格競争力を失い、受注や投資、ひいては地域の雇用にも悪影響が出ると懸念しています。
VDMAは、機械・設備分野の製品については「セクター別関税」の対象から明確かつ恒久的に除外するよう要求しています。欧州委員会には、米国側と改めて交渉し、この分野の扱いを見直すよう強く求めています。
自由貿易と「守るべき産業」をどう両立させるか
2025年12月現在、この合意が欧州産業全体、とりわけドイツの機械メーカーにどのような長期的影響をもたらすのかは、まだ見通せていません。
自由貿易を進めることで消費者や企業は恩恵を受けますが、一方で、自国や地域の基幹産業をどこまで守るべきかというジレンマも避けて通れません。EUが今回の合意をどのように微調整していくのかは、日本を含む他の国や地域にとっても参考となるケースになりそうです。
VDMAの強い反発が、EUの交渉戦略を変えるきっかけになるのか。それとも、より広い枠組みの中で一定の犠牲として受け入れられてしまうのか。今後の動きが注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








