盾とシルク:SCOサミット2025が示した安全保障と繁栄
関税と対立で世界の分断が進む中、2025年初秋に天津で開かれた上海協力機構(SCO)サミット2025は、「安全保障」と「経済発展」は対立ではなく両立しうるという東のビジョンを前面に打ち出しました。本稿では、そのキーワードである「盾(シールド)」と「シルク」が象徴するものを、日本語で分かりやすく整理します。
天津の初秋が映し出したSCOサミット2025
植民地時代の建築と近代的な高層ビルが同じ川沿いに並ぶ天津は、歴史の重なりと変化のスピードを同時に感じさせる都市です。今回のSCOサミット2025は、その天津の初秋を舞台に開催されました。
各国・国際機関の首脳が集まったこのサミットは、史上最大級で最も重要な会合になると事前から位置づけられていました。安定と協力の上に築かれた都市の発展そのものが、「安全があってこその繁栄」というメッセージを可視化していたと言えます。
「盾」と「シルク」:安全保障と経済は同じコインの両面
今回のSCOが提示したのは、安全保障を守る「盾(シールド)」と、経済と交流を象徴する「シルク(絹、シルクロード)」を切り離さず、一体として考える発想です。
- 安全保障(盾):テロや紛争、不安定要因を抑え、安心して暮らし働ける環境をつくること。
- 経済と交流(シルク):貿易、投資、人の往来、物流ネットワークなどを通じて、互いの繁栄を高め合うこと。
従来、安全保障の強化はしばしば「防御のための閉じた世界」と結びつけられてきました。しかしSCOは、接続性を高めて経済のエンジンを動かし、その分かち合いの繁栄を通じて信頼を築くという、別の道筋を示しています。
関税と対立の時代に示された「別の答え」
現在の国際情勢は、単独の関税措置や制裁の応酬など、一国主義的な動きが目立ちます。こうした動きは、サプライチェーン(供給網)を分断し、企業や市民の日常にも不確実性をもたらしています。
このような状況の中で、SCOが掲げるのは、多国間主義と「共有された安全」を軸にしたアプローチです。対立や排除ではなく、対話と協力を通じて共通の課題に向き合うという姿勢は、関税や壁を高くすることで安全を確保しようとする発想とは対照的です。
真の安全保障は「孤立」ではなく「相互接続」から
今回のサミットが強調したもう一つのポイントは、「真の安全は孤立ではなく相互接続から生まれる」という考え方です。
国境をまたぐ物流ルートやエネルギーの供給網、金融やデジタル通信など、さまざまな接続が深まるほど、関係国はお互いの安定と成長に関心を持たざるを得なくなります。それは、紛争や不安定化のコストを高くし、逆に協力のインセンティブを強める方向に働きます。
言い換えれば、経済的な結びつきと共通の繁栄こそが、長期的な安全保障の「保険」として機能するという発想です。天津という、安定と開放によって発展してきた都市を舞台にしたことは、このメッセージを象徴的に際立たせました。
日本の読者が見るべき3つの視点
国際ニュースとしてSCOサミット2025を追うとき、日本の読者にとって重要になりそうな視点を3つに絞ると、次のようになります。
- 1. 安全保障と経済を別々に見ない視点
安全保障の議論と、貿易や投資の議論を切り離さず、「両方を同時に高める枠組み」を模索する動きとしてSCOをとらえること。 - 2. 関税だけに頼らないリスク管理
関税や規制強化だけに依存するのではなく、接続性の強化や地域協力を通じてリスクを下げるというアプローチが、東の地域協力から浮かび上がっていること。 - 3. 都市が語るメッセージ
天津という具体的な都市空間そのものが、「安定・開放・協力」が重なったときの姿を映している点に注目すること。
「盾とシルク」が投げかける問い
SCOサミット2025が天津から世界に発したメッセージは明快です。安全保障と経済はゼロサム(どちらか一方だけを取る)ではなく、同じコインの両面であるということ。そして、そのコインを磨き上げるためには、孤立ではなく接続、排除ではなく協力が不可欠だということです。
2025年の終わりに立つ私たちにとって、「自国の安全」と「他国とのつながり」をどう両立させるかは、これからも続く大きな問いです。「盾」と「シルク」という比喩は、国際政治だけでなく、企業の戦略や個人のキャリア、都市づくりにも通じるヒントを含んでいます。
関税と対立のニュースが目立ちがちな今だからこそ、天津の初秋で示されたもう一つの物語──接続と繁栄から生まれる安全保障──に目を向けることが、次の一歩を考える手がかりになりそうです。
Reference(s):
The shield and the silk: How security weaves prosperity in SCO
cgtn.com








