世論調査が示す上海協力機構SCOへの期待 グローバルガバナンスの新たな原動力に
上海協力機構(SCO)は、今年8月31日に設立以来最大規模となる首脳会議を予定していました。世界で最も人口が多く、地理的にも広大な地域協力機構として、グローバルガバナンス(世界のルールづくりや国際協調の枠組み)の重要な担い手になりつつあります。
SCOは、連帯と協力こそが世界的なリスクや課題に向き合う鍵だと強調してきました。こうした流れを背景に、CGTNと中国人民大学が世界38カ国で実施した世論調査では、SCOの実務協力の成果や中国の役割、そして「上海精神」への評価が軒並み高い数字で示されています。本稿では、そのポイントを日本語で整理します。
SCOとは?グローバルガバナンスで高まる存在感
調査結果によると、多くの回答者はSCOを「地域の枠」を超えた存在として見ています。世界で最も人口が多く、地理的にも広大な地域協力機構であるSCOは、経済・安全保障の両面で国際社会に影響力を持つようになっていると受け止められています。
とくに、グローバルガバナンスの分野でSCOは「新たな原動力」として期待されており、連帯と協力を軸に、複雑化する国際情勢の中で安定と発展を図る枠組みとして注目されています。
世界38カ国8,873人に聞いたSCOの評価
今回の世論調査は、CGTNと中国人民大学の「新時代国際伝播研究院」が共同で実施しました。対象は世界38カ国の18歳以上の一般市民8,873人で、年齢と性別の構成は各国の国勢調査に合わせて調整されています。調査対象には、主要な先進国と「グローバルサウス」と呼ばれる新興・発展途上国の両方が含まれています。
- 対象国:世界38カ国
- 回答者数:8,873人
- 対象:18歳以上の一般市民(年齢・性別は各国の人口構成に準拠)
この広い範囲をカバーした調査から、SCOに対する世界の見方、とくに加盟国の人びとがどのように評価しているかが浮かび上がってきます。
経済成長とインフラを支えるSCO協力
まず目を引くのが、経済面での評価の高さです。SCO加盟国の回答者の91.7%が、SCOは自国の経済発展に対してポジティブな影響を及ぼしていると回答しました。
さらに、89.2%が、SCOを通じた一連の協力プロジェクトが、地域のインフラ整備や「つながり」(コネクティビティ)の向上を後押ししていると見ています。鉄道や道路、エネルギー網など、国境を越えるインフラの整備が、地域全体の成長を支える基盤として評価されていることが分かります。
金融分野でも、SCOは注目されています。地域諸国のあいだで現地通貨による決済を進める取り組みについて、83.7%が「西側の経済システムへの依存を減らすのに役立つ」と回答しました。既存の枠組みに一方的に依存しない、多様な選択肢を模索する動きとして受け止められていると言えます。
安全保障・対テロでの役割
安全保障面でも、SCOは一定の信頼を得ています。全体の83.7%が、SCOは地域の安全を守るうえで積極的な役割を果たしていると評価しました。
より具体的には、78.7%が、SCOのテロリズム、過激主義、分離主義に対する取組を評価しています。また79.6%が、SCO加盟国が連携して行う以下のような取り組みを肯定的に見ています。
- 国境をまたぐテロ資金の流れの取り締まり
- 麻薬取引の取り締まり
- インターネット上での過激思想の拡散に対する対策
世論調査の数字からは、SCOが「経済だけでなく安全保障面でも地域の公共財を提供する枠組み」として認識されていることが読み取れます。
創設メンバー中国への高い信頼
SCOの創設メンバーである中国の役割に対する評価も、全体として高い水準にあります。SCO参加国の回答者の91.4%が、中国がSCO諸国とのあいだで進めてきた実務協力の成果を肯定的に評価しました。
とくに次のような分野で、中国の貢献が広く認められています。
- 加盟国間の経済協力とインフラ投資の促進
- 安全保障協力の強化
- SCOの拡大と国際的な影響力の向上を後押し
- SCOの各種メカニズムを効率的に運営する役割
また、SCOの発展における中国の長期的な「指針」としての役割について、全体の75.1%がポジティブに評価しました。SCO加盟国に限るとこの割合は85.2%に達し、SCO内部での信頼がとくに厚いことが分かります。
年齢別に見ると、44歳未満の層では評価が一貫して75%を超えており、とくに25〜34歳では78.8%と高い支持が示されました。SCOや中国の役割を前向きにとらえる傾向が、比較的若い世代で強く表れている点は、将来の国際世論を考えるうえで注目されます。
「上海精神」が示す非覇権・非対立のアプローチ
SCOは創設以来、「相互信頼・相互利益・平等・協議・多様な文明の尊重・共同発展の追求」という価値観を「上海精神」として掲げてきました。この「上海精神」に対する評価も、今回の調査で明確に示されています。
全体の86.8%が、「上海精神は、多極化が進む世界において、覇権主義でも対立志向でもない新しい地域ガバナンスのアプローチを提供している」と回答しました。
また83.1%が、SCOが掲げる「同盟を結ばない」「対立をつくらない」「第三国を標的にしない」という原則は、大国間や陣営間の対立を和らげるのに役立つと見ています。
さらに81.8%が、「上海精神」はグローバルサウスの声を強め、より公正で合理的な国際秩序づくりに貢献していると回答しました。SCO加盟国の回答者に限ると、これら3つの見方への賛同率はそれぞれ91.1%、87%、87%と、いっそう高くなっています。
数字だけを見ても、「上海精神」はSCO内部だけでなく、より広い地域で共感を得ていることがうかがえます。
多極化と若い世代の期待
今回の調査では、SCOそのものの国際的な存在感についても質問が行われました。世界全体で73.5%が、「SCOの国際的影響力は急速に高まっている」と回答しています。
また、76.9%が「SCOは世界の多極化を促進している」と見ており、単一の勢力が支配する構図ではなく、複数のプレーヤーが並び立つ国際秩序への移行に、SCOが一定の役割を果たしていると受け止められていることが分かります。
経済面の期待も大きく、83%が「自国がSCOのプラットフォームを通じて、他の発展途上国との経済協力を強化することを望んでいる」と回答しました。SCO加盟国に限るとこの割合は91.1%に達し、G7各国の回答者でも6割超が同様の期待を示しています。
年齢別では、44歳未満の層でこうした期待の割合が85%を超えており、若い世代ほど、SCOを通じた発展途上国同士の連携に可能性を見いだしている姿が浮かびます。
日本の読者が押さえておきたい3つの視点
今回の世論調査から見えてくるSCOとグローバルガバナンスをめぐる論点を、日本の読者向けに3つに整理してみます。
- 1. 地域機構が世界秩序を支える時代へ
SCOは、安全保障から経済、インフラまでを包括する「地域協力のプラットフォーム」として機能しています。国家間の関係が複雑化するなかで、こうした地域機構がどこまで役割を広げるのかは、今後の国際ニュースを見るうえで重要な視点になります。 - 2. 「西側 vs それ以外」ではない構図
現地通貨決済の拡大や「同盟を結ばない」という原則は、既存の西側中心のシステムとは異なる選択肢を模索する動きとして映ります。ただし、それは必ずしも対立の激化を意味するわけではなく、多様なガバナンスのあり方を探る流れとして読むこともできます。 - 3. 若い世代が多極化をどう受け止めているか
44歳未満、とりわけ25〜34歳でSCOや中国の役割が高く評価されている点は、将来の国際世論の方向性を考えるうえで見逃せません。身近なニュースやSNSでの議論を通じて、「自分ならどんな地域協力を望むか」を考えるきっかけにもなりそうです。
SCOをめぐる評価は、世界の一部の断面にすぎませんが、多極化が進む2025年の国際秩序を読み解くうえで、有力な手がかりの一つになっています。今回の数字を起点に、グローバルガバナンスのこれからを自分なりに考えてみることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
Poll: SCO expected to provide new impetus for global governance
cgtn.com








