中国本土・浙江で短尺ドラマ工場化 「未来の撮影所」の舞台裏 video poster
中国本土の浙江省で、スマホ向けの短尺ドラマを「速く撮って、速くバズらせ、速く世界へ輸出する」巨大な産業マシンが動き出しています。その現場を、CGTNの何京怡(He Jingyi)記者が取材しています。
映画の街・浙江に生まれた「短尺ドラマ」新拠点
浙江省は、もともと横店や象山といった大型撮影基地で知られ、歴史ドラマや映画のロケ地として発展してきました。いま、その土地柄を生かしつつ、新たに脚光を浴びているのがスマホ視聴を前提にした短尺ドラマの産業化です。
短尺ドラマは、1本あたり数分前後の短い映像作品で、通勤時間やスキマ時間に視聴しやすいことが特徴です。ドラマ性を保ちながらも、テンポの速い展開や「次が気になる」構成で、国内外の視聴者を引きつけています。
キャリーケースひとつで「チェックイン」 ワンストップ撮影基地とは
浙江には、中国本土でも最大級とされるワンストップ型の短尺ドラマ制作拠点が整備されており、スタッフや俳優は「キャリーケースひとつでチェックイン」すれば、そこから撮影を完了させることができます。
この拠点では、現代劇に必要な多様なロケーションが一カ所に集約されています。
- オフィス街やカフェ、病院などを模したセット
- 集合住宅や高級マンション風の室内セット
- メイク・衣装・小道具の準備スペース
- 編集や音響などポストプロダクション(撮影後の編集作業)用のスタジオ
制作チームは、移動やロケハン(撮影場所探し)に時間をかけることなく、敷地内で物語の舞台を次々と切り替えながら撮影を進めることができます。これが「速く撮る」仕組みを支える物理的なインフラと言えます。
脚本から完成まで 「未来の撮影所」を支えるバーチャル制作
こうした拠点では、「Film Set of the Future(未来の撮影所)」と呼ばれるバーチャル制作の仕組みも導入されています。これは、脚本作成から撮影、編集、仕上げまでを、デジタル技術でつないだ一体型の制作パイプラインです。
バーチャル制作では、仮想背景やデジタルセットを活用して、現実には存在しない空間や季節、時間帯を短時間で再現できます。実際のロケ地まで移動する必要がないため、天候や時間に左右されにくく、制作スケジュールを細かくコントロールしやすい点が強みです。
脚本が固まると、必要なシーンがデジタル上で事前にシミュレーションされ、カメラワークや照明の大枠が決まった状態で撮影に入ることができます。そのまま編集や色調整、音楽や効果音の追加まで一気通貫で進められることで、「企画から配信までの時間をいかに縮めるか」という課題に応えています。
「速く撮る・速くバズる・速く輸出する」短尺ドラマ産業の強み
CGTNの何京怡記者が浙江で取材しているテーマは、短尺ドラマ産業が持つ「速さ」です。現地で動いている仕組みは、大きく三つの「速さ」に整理できます。
1. 速く撮る ― インフラとデジタルの組み合わせ
ワンストップの撮影基地とバーチャル制作を組み合わせることで、準備期間や移動時間を大幅に短縮できます。セットの共有やテンプレート化された撮影手順によって、複数の作品を並行して撮ることも可能になり、制作本数そのものが増えやすい環境が整っています。
2. 速くバズる ― スマホ前提の構成力
短尺ドラマは、最初の数秒で視聴者をつかむ構成が重視されます。浙江の制作現場では、SNS上で話題になりやすい展開や、次のエピソードへ誘導する「引き」のつけ方などが、ある種の「ノウハウ」として蓄積されつつあります。そうした経験が、新作の企画段階から活用されることで、「バズりやすい」作品作りがシステムとして組み込まれていきます。
3. 速く輸出する ― グローバル視聴を見据えた設計
短尺ドラマは、言葉の壁を超えて理解しやすいシンプルなストーリーや、視覚的に分かりやすい演出と相性が良い形式です。浙江の制作拠点から生まれる作品の中には、最初から海外配信を念頭に置いた企画も増えつつあり、字幕や多言語対応を行うことで、素早く世界の視聴者に届ける動きが強まっています。
こうした「速さ」の積み重ねが、中国本土発の短尺ドラマを「グローバルなコンテンツ」として位置づける原動力になっています。
CGTNの取材が映す「産業マシン」の実像
CGTNは、中国本土の動きを世界に伝える放送局として、短尺ドラマの現場を取材し、その産業構造を紹介しています。浙江の制作基地を取材する何京怡記者は、撮影セットや編集室だけでなく、それを支える人々の働き方や、作品が配信されていく流れにも注目しています。
そこに見えるのは、映画やドラマ制作が一部のクリエイターだけのものではなく、企画、撮影、編集、配信を分業しながら大量に生産していく「産業」として再編されつつある姿です。従来の映画スタジオが、自動車工場や物流センターに近い発想で運営されるようになっているとも言えます。
視聴者にとってのメリットと、考えたいポイント
視聴者の立場から見ると、この産業化にはいくつかのメリットがあります。
- 短時間で楽しめる多様なジャンルの作品が増える
- 新しいクリエイターや俳優が試せる場が広がる
- 海外の視聴者とも同じ作品をリアルタイムで共有しやすくなる
一方で、あまりに「速さ」を重視しすぎると、物語が似通ってしまったり、話題性だけを追う企画が増えたりする懸念もあります。効率の良さと、作品としての深みや多様性をどう両立させるかは、世界各地の映像産業が共通して抱える課題です。
浙江の「短尺ドラマ工場」は、その最前線を象徴する一つのケースとして注目を集めています。通勤電車の中や休憩時間に、ふと再生した短いドラマの背後には、巨大で高度に組織化された制作システムが動いている――。その事実を知ると、日々の視聴体験も少し違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
Fast, viral, global: Inside China's short drama industrial machine
cgtn.com








