金価格が史上最高値 FRB利下げ観測とドル不信が後押し
金価格が今週、1オンス=3,578.50ドルと史上最高値を更新し、その背景には米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測とドルへの信頼低下があるとされています。
今週、金価格が史上最高値を更新
国際市場で取引されるスポット(金現物)価格は、現地時間水曜日に一時1オンス=3,578.50ドルの史上最高値をつけました。その後は一部投資家の利益確定売りから木曜日の取引で0.4%下落しましたが、それでも年初来では30%超の上昇となっています。
2025年に入ってからのこの急伸は、短期的な値動きというより、世界の投資マネーの流れが変わりつつあることを示すシグナルと見る向きが広がっています。
背景1:FRBの利下げ観測とドル安
今回の金価格上昇を支えている最大の要因は、米FRBによる金融緩和への期待です。シカゴ・マーカンタイル取引所グループ(CME)の「FedWatch」によると、市場は今月のFRB会合で利下げが実施される確率を98%と織り込んでいます。
金は利息を生まない資産のため、金利が高い局面では敬遠されがちですが、利下げ局面では「持っていても損をしにくい安全資産」として再評価されやすくなります。
オンライン証券会社アクティブトレーズのシニアアナリスト、リカルド・エバンジェリスタ氏は、ドル安と利下げ観測、そして米国資産から距離を置く投資家の動きが金相場を支えていると指摘します。
実際、ドルは1月以降、およそ11%下落しており、海外投資家にとって金をドル建てで購入しやすい環境になっています。そこに加え、関税政策を巡る不透明感から米国経済の先行きに慎重な見方が広がっていることも、金の需要を押し上げています。
ドナルド・トランプ米大統領の通商政策は、関税発動権限の範囲を巡って最高裁判所での審理に向かっており、その行方も市場の不確実性を高める要因となっています。
背景2:米中央銀行の独立性への懸念
今回の金高騰には、米国の制度への信頼感が揺らいでいるという、より根深い要素も重なっています。トランプ大統領がジェローム・パウエルFRB議長を公の場で批判したことや、理事会への影響力行使を試みていると報じられていることから、米中央銀行の政治的独立性が損なわれるのではないかとの懸念が高まっています。
欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、中央銀行の独立性が脅かされる事態は「世界経済にとって非常に深刻な危険」だと警鐘を鳴らしました。
貴金属トレーダーのヘレウス・メタルズは、市場コメントの中で「米中央銀行の独立性への懸念が強まり、ドル建て資産への信頼が揺らぐことで、投資家は金へと資金を移している」と指摘しています。
背景3:中央銀行の備えとしての金需要
こうした不安定な環境の中で、長期資金を運用する中央銀行の姿勢にも変化が生じています。ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによると、世界の中央銀行は今後5年間で外貨準備に占める金の比率を高める意向を示す一方、ドル資産の比率を引き下げる計画を持つところが増えています。
これは、短期の相場観とは別に、各国が外貨準備の安全性と分散を重視し、ドル一極集中から徐々に距離を置こうとしている動きとも読めます。金は価格変動が大きい一方で、発行主体を持たない「無国籍の資産」であることから、長期の保険として位置づけられやすい資産です。
今後の金市場と注目ポイント
市場では、こうした根本的な要因が続く限り、金価格はさらに高値を試すとの見方も出ています。金融機関のスタンダードチャータードは、金相場が今後も一段高値をつける可能性があると予測しています。
もっとも、金価格は短期的には上下に大きく振れやすく、「安全資産」とはいえリスクがないわけではありません。個人投資家が金や金関連商品への投資を検討する場合、次のような点に目を配る必要があります。
- 今月のFRB会合をはじめとする米金融政策の方向性(利下げペースや今後の見通し)
- ドル相場の動きと、他の主要通貨との相対的な強さ
- 関税を含む米通商政策の行方や、米国政治の不確実性
- 各国中央銀行による金購入動向や外貨準備の構成変化
金価格の史上最高値は、単なる商品相場の話にとどまりません。世界の投資家がどこに信頼を置き、どの通貨や資産を「安全」とみなしているのかを映し出す鏡でもあります。2025年の金市場の動きは、私たちがグローバル経済をどう読み解くかを考える手がかりにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








