中国の海洋経済が初の10兆元超え 2024年の成長と課題を読み解く
2024年、中国の海洋経済規模(海洋関連産業が生み出す付加価値)が初めて10兆元(約1.4兆ドル)を突破しました。最新の公式報告は、中国が海洋大国づくりを着実に進めていることを数字で示しています。
2025中国海洋発展指数報告が示す全体像
中国の国家海洋情報センターと中国海洋発展研究会が、山東省青島市で開かれた2025グローバル海洋発展フォーラムで「2025中国海洋発展指数報告」を発表しました。報告によると、2024年の中国海洋発展指数の総合値は129.7で、前年から2.9パーセント上昇しました。
この指数は、海洋分野の成長を六つの側面から評価しています。
- 経済・社会発展サブ指数:133.0(前年から3.1パーセント増)
- 技術革新サブ指数:135.2(2.6パーセント増)
- 生態・環境サブ指数:126.6(2.4パーセント増)
- 資源利用サブ指数:128.2(2.8パーセント増)
- 開放度サブ指数:128.7(3.0パーセント増)
- 総合管理サブ指数:121.6(3.3パーセント増)
いずれの分野も前年を上回っており、専門家は「中国の海洋経済が安定した高品質の発展段階に入っている」と評価しています。
経済・社会:10兆元突破が意味するもの
経済・社会発展サブ指数は133.0となり、海洋分野の総生産は前年比5.9パーセント増加しました。海洋経済の規模が初めて10兆元の大台を超えたことは、次のような意味を持ちます。
- 海運、造船、海洋観光など従来産業に加え、新興の海洋産業が成長をけん引している
- 海洋製造業が引き続き高い伸びを示し、産業構造の高度化が進んでいる
- 一人当たりの海産物(海洋水産物)供給量が0.5キログラム増加し、生活の質向上にもつながっている
海を舞台にした経済活動が、雇用や食料供給、安全保障の面でも存在感を増していることがうかがえます。
技術革新:深海への挑戦が加速
技術革新サブ指数は135.2と最も高い水準の一つで、前年から2.6パーセント上昇しました。背景には、海洋科学技術への投資拡大と研究基盤の整備があります。
象徴的な事例として、次のような装備の国産化と実用化が挙げられます。
- 中国初の国産設計・建造による海洋掘削船「Meng Xiang」が就役
- 西太平洋で、深海重作業採鉱機「Kaituo 2」が水深4000メートルでの海上試験に成功
沿岸から深海へと活動領域を広げることは、エネルギーや鉱物資源の開発、海洋科学研究など多方面に影響を与えます。環境への配慮と両立させながら技術をどう活用していくかが、今後の重要なテーマになっていきます。
生態・環境:海と経済の両立を模索
生態・環境サブ指数は126.6で、2.4パーセントの上昇となりました。報告によれば、沿岸の水質はおおむね安定しており、沿岸近くの海域の83.7パーセントで良好な水質が保たれています。
サンゴ礁、海草藻場、塩性湿地、マングローブなどの重要な生態系も総じて健全な状態にあり、一部では改善が見られました。2021年から始まった第14次五カ年計画の期間中に、すでに400キロメートルを超える海岸線と3万1000ヘクタール以上の沿岸湿地が修復されています。
海岸線や湿地の再生は、生物多様性の保全だけでなく、高潮や台風から沿岸地域を守る「緩衝帯」としても機能します。経済成長と環境保護をどう両立させるかという、世界共通の課題に対する一つの取り組みといえます。
資源利用:洋上風力と海水淡水化が伸びる
資源利用サブ指数は128.2で、2.8パーセント増となりました。新たに承認された海域利用面積は前年比15.6パーセント増加し、石油・ガス開発や交通インフラなどの大型プロジェクトを支えています。
とくにエネルギーと水資源の分野で、次のような動きが目立ちます。
- 洋上風力発電の発電容量が前年比で約30パーセント増加し、海洋再生可能エネルギーの供給力が高まった
- 海水淡水化設備の一日当たり処理能力が13.2パーセント拡大し、水資源の安定確保に向けた取り組みが進んだ
海をエネルギーと水の供給源として活用しながら、どのように環境負荷を抑えていくかが今後の焦点となりそうです。
対外開放:海上のつながりがさらに強化
開放度サブ指数は128.7で、3.0パーセントの伸びでした。海上輸送による輸出入総額は1.9パーセント増加し、一帯一路に参加する沿海国との貿易は6.3パーセント増となりました。
沿海地域が実際に利用した外資は、全国の約8割を占めています。さらに、沿海港湾における対外貿易貨物の取扱量は6.9パーセント増加し、中国の港が国際物流のハブとして存在感を強めていることが分かります。
海上輸送ルートの安定は、世界中のサプライチェーンやエネルギー供給にも直結します。中国の海洋経済の動向は、アジアや世界の貿易構造を考えるうえで欠かせない要素になりつつあります。
総合管理:防災とルールづくりが前進
総合管理サブ指数は121.6で、前年から3.3パーセント上昇しました。2024年には、台風や高波などに備えるための海洋災害警報が年間で315回発表されています。
また、中国独自の自律型海洋循環・波浪数値モデル「Mazu」シリーズがオープンソース化され、予測技術の共有が進んでいます。海洋関連の現行有効標準の数も14.8パーセント増加し、ルールや基準の整備が進展しました。
中国が主催する国家レベルの国際海洋会議や研修プログラムの参加者数は、前年比23パーセント増加しました。防災、観測技術、法制度などの分野で、国際協力と知見の共有が広がっていることがうかがえます。
日本と世界にとっての意味
2024年の中国海洋発展指数の結果は、日本や世界にとってもいくつかの示唆を与えています。
- 海洋経済の成長は、港湾や物流、エネルギー供給などでアジアの相互依存を一段と高める可能性がある
- 沿岸環境の保全や湿地再生の取り組みは、気候変動対策や災害リスク軽減に向けた協力の土台となりうる
- 深海技術や洋上風力などの分野では、国際ルールづくりと環境保護をめぐる対話がますます重要になる
私たちの日常生活からは見えにくい海の変化ですが、食卓に並ぶ魚介類や、オンラインで注文した商品の輸送ルート、エネルギー価格などを通じて、静かに影響を及ぼしています。中国の海洋経済の動きに目を向けることは、アジアと世界のこれからを考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
$1.4 trillion: China's ocean economy sees robust development
cgtn.com








