中国「対外貿易法」改正案が初審議 デジタル・グリーン貿易を本格ルール化へ video poster
中国の対外貿易法の改正案が、今週開かれた第14期全国人民代表大会常務委員会(第17回会議)に提出され、初めての審議が行われました。デジタル貿易やグリーン貿易など新しい分野への対応とともに、中国の国家利益を守るための対抗措置に法的な裏付けを与える点が注目されています。
今週、対外貿易法改正案が初審議
今回の対外貿易法改正案は、全11章・80条から成り、2004年以来もっとも包括的な見直しとされています。新たな国際貿易環境に対応し、これまでの改革措置を法律として明文化し、貿易発展の環境をさらに整えることが狙いです。
中国商務省によると、中国は貨物貿易では世界最大、サービス貿易では世界第2位の規模を維持しています。今週月曜日の立法審議で、商務部の王文涛部長は国務院を代表して改正案について説明し、新たな貿易モデルや取引形態が広がる中で、改革の成果を法の形で固めていくことの重要性を強調しました。
改正案の柱:貿易環境の最適化と新分野への対応
知的財産とコンプライアンスの強化
改正案では、従来から課題とされてきた知的財産保護やコンプライアンス(法令順守)に明確に踏み込んでいます。具体的には、次のような方向性が示されています。
- 対外貿易に関わる知的財産権の保護を一段と強化すること
- 輸出入企業を含む貿易主体に対し、コンプライアンスとリスク管理の強化を求めること
- サプライチェーンを安定させるため、「貿易調整支援メカニズム」を設けること
「貿易調整支援メカニズム」は、市場環境の変化や国際的な摩擦によって影響を受ける企業や産業を支える仕組みとして位置づけられ、サプライチェーン全体の安定を図る狙いがあります。
デジタル貿易・サービス貿易のルール化
改正案は、デジタル貿易や越境サービス貿易に対する法的な基盤を整える点でも特徴的です。新しいビジネス形態が急速に広がる中で、ルールを明確にすることで予見可能性を高める狙いがあります。
主なポイントとしては、
- デジタル貿易に対する法的な支えを与えること
- 越境サービス貿易について、「ネガティブリスト制度」の下で管理すること
ネガティブリスト制度とは、原則として自由としつつ、例外的に禁止・制限される分野だけをリスト化する考え方です。これにより、サービス分野の開放範囲と制限範囲を透明に示し、企業側の判断材料を増やす効果が期待されます。
グリーン貿易と持続可能性
改正案には、「グリーン貿易」への対応も盛り込まれています。環境への配慮や持続可能性を重視した貿易の枠組みをつくることで、今後の国際的なルール形成にも対応しやすくする狙いがあります。
環境に配慮した製品やサービスの取引を後押しする制度設計が進めば、企業にとっては環境対応と貿易戦略を一体で考える必要性が高まりそうです。
国家利益を守るための対抗措置に法的裏付け
国際市場環境が変化する中で、中国の主権や安全保障、発展利益をめぐるリスクにどう対応するかも、改正案の大きなテーマです。今回のドラフトには、より「ピンポイントな対抗措置」を可能にする条文が盛り込まれました。
具体的には次のような内容が示されています。
- 中国の主権、安全、発展利益を損なう海外の個人・組織との貿易を禁止または制限できる
- こうした対抗措置の回避を助ける行為を禁止する
- 国際条約に基づく紛争解決メカニズムが機能しない場合、中国の利益を守るために必要な措置を取ることを認める
これにより、国家安全保障や経済安全をめぐる問題に対し、貿易分野から柔軟かつ法的根拠のある対応を取れるようにする狙いが読み取れます。
立法審議で示された評価と今後の論点
全人代常務委員会のグループ討議では、改正案が新しいニーズに応え、中国の貿易政策を世界的な潮流により適合させるものだとの評価が示されました。外向きの開放を維持しつつ、対外貿易の健全な発展を支える仕組みとして機能することが期待されています。
同時に、今後の修正に向けて、次のような点をさらに詰めるべきだという声も出ています。
- デジタル貿易に関する条文を、実務レベルで分かりやすい形に具体化すること
- グリーン貿易に関する基準や枠組みをより明確にすること
- 企業向けの法的サービスやコンプライアンス指針を強化し、法律が「使いやすい」ものになるようにすること
法律の実効性を高めるには、条文だけでなく、それを企業がどのように理解し、日々の取引で運用できるかが重要になります。立法過程でこうした視点が議論されている点も注目されます。
日本や世界の企業にとっての意味合い
中国との取引に関わる海外企業にとって、対外貿易法の見直しは、ビジネス環境の変化を意味します。知的財産保護やコンプライアンス、リスク管理の強化が打ち出される中で、自社の体制や契約実務を見直す必要が生じる可能性があります。
また、デジタル貿易や越境サービス貿易、グリーン貿易に関するルールが法的に整理されれば、オンラインを通じた取引や環境配慮型ビジネスの展開において、一定の予見可能性が高まる一方で、新たな義務やチェックポイントも増えることが考えられます。
今回の改正案はまだ初回審議の段階であり、今後の審議や修正を経て最終的な条文が固まっていく見通しです。中国市場との関わりが深い企業ほど、デジタル貿易やグリーン貿易、コンプライアンス強化といったキーワードの行方を、引き続き注視しておく必要がありそうです。
Reference(s):
Draft revision of China's Foreign Trade Law undergoes first reading
cgtn.com








