スペインでの米中経済協議へ 関税・輸出規制・TikTokはどうなる?
リード:2025年9月にスペインで予定されていた中国と米国の経済・貿易協議では、関税、輸出規制、そしてTikTokが主要な争点になると見られていました。本記事では、その協議に至る半年間の動きと、背後にある米中関係の変化を整理します。
スペイン協議の位置づけ:半年で4回目の経済対話
中国商務省は金曜日、中国の何立峰副総理が9月14日から17日まで代表団を率いてスペインを訪問し、米国側と経済・貿易分野の幅広い議題について協議すると発表しました。議題には、米国による一方的な対中関税や輸出管理の乱用、TikTokをめぐる問題などが含まれるとされています。
何氏は中国共産党の政治局委員でもあり、中国側の経済・貿易政策を統括する中心的な人物です。今回のスペインでの会合は、過去6カ月で4回目となる米中経済・貿易協議と位置づけられていました。
中国側の発表に先立ち数時間前、米財務省は声明を出し、スコット・ベッセント財務長官がマドリードで何氏ら中国の高官と会談し、経済・貿易問題について協議すると明らかにしていました。
関税交渉のこれまで:ジュネーブ、ロンドン、スウェーデン
ジュネーブ会合(5月):関税の大幅削減で前進
今年5月、何氏とベッセント氏はジュネーブで初会談を行いました。両者は共同声明を発表し、中国と米国の経済・貿易協議メカニズムを設置することで合意しました。
このジュネーブ協議では、双方の関税をめぐり大きな進展があったとされています。米国は対中の追加関税の91パーセントを撤廃し、中国も報復関税の91パーセントを撤廃しました。さらに、米国は残るいわゆる相互関税のうち24パーセントの適用を90日間停止し、中国も対応する対抗措置の一部を同様に停止しました。
関税の引き下げと一時停止は、世界のサプライチェーンにかかる負担を軽減し、企業にとって先行きの不透明感を和らげる効果があると見られていました。
ロンドン会合(6月):首脳間コンセンサスの具体化
6月にロンドンで開かれた2回目の会合は、新たに設置された米中経済・貿易協議メカニズムの下で初めて行われた協議でした。ここでは、6月5日に行われた習近平国家主席とトランプ大統領の電話会談で達したコンセンサスを、どのような枠組みで実行に移すかが主要なテーマとなりました。
両国は、ジュネーブ協議の成果を確固たるものにしつつ、首脳間の合意内容を具体化するための実務的な枠組みに原則合意したとされています。
スウェーデン会合(7月):関税休戦の延長
何氏とベッセント氏は7月にスウェーデンで3回目の会合を行いました。その結果をまとめた共同声明は8月12日に公表され、双方が関税を巡る休戦措置をさらに90日間延長し、期限を11月初めまで先送りすることで合意したと伝えられました。
この延長により、当時は年末に向けて米中が追加関税の本格的な撤廃や見直しに踏み込めるのか、それとも休戦期間の終了後に再び緊張が高まるのかが焦点と見られていました。
初めて前面に出た輸出規制の問題
今回のスペイン協議をめぐる中国側の発表では、従来よりもはっきりと米国の輸出管理措置が主要議題として強調されました。過去の発表と比べても、輸出規制がここまで前面に出るのは初めてといえます。
発表の前日、米商務省の産業安全保障局(BIS)は、中国企業を中心とする20社以上を新たにエンティティリストに追加しました。対象は半導体、バイオテクノロジー、航空宇宙、商業貿易や物流など幅広い分野で、これらの企業は厳しい輸出管理の対象となります。
これに対し中国商務省は翌日、スペインでの協議を控えたタイミングでこの措置が取られたことに疑問を呈し、中国企業の合法的な権益を守るために必要な措置を講じると表明しました。
半導体とAIをめぐるエンティティリストの拡大
今回の制裁強化は、米国が過去数年にわたり中国の半導体や人工知能(AI)分野に対する輸出管理を段階的に拡大してきた流れの延長線上にあります。
BISは5月、米国の輸出管理規則に違反している可能性があるという前提に立ち、特定の中国製高性能半導体、特に華為(ファーウェイ)のAscendシリーズなどに事実上の世界的な禁止措置を課そうとするガイダンスを公表しました。
中国側の白書「中米経済貿易関係に関する若干の問題についての中国の立場」(4月発表)によると、米国は安全保障上の懸念を理由に、当初は特定の集積回路に限られていた規制を、製造、外部委託、ソフトウェアを含むほぼサプライチェーン全体へと広げてきたと指摘しています。
同白書は、AIモデルや計算能力を支える集積回路に対する差別的な輸出管理は、AI分野に階層構造を持ち込み、一部の主体を優遇する一方で、中国を含む多くの発展途上国から技術進歩の権利を奪うものだと批判しています。
また、米国のシンクタンクの分析を引用する形で、エンティティリストへの企業追加が秘密性の高い非公開情報に基づき、不透明で明確性に欠ける基準で行われていると指摘。さらに、一度リスト入りすると、たとえ司法手段を通じても除外のハードルが極めて高く、企業が自らの立場を回復することが難しい現状が明らかにされています。
TikTokが象徴するデジタル分野の緊張
スペイン協議の議題には、ショート動画プラットフォームとして世界的に利用されているTikTokも含まれるとされています。これは、物理的な製品や投資だけでなく、デジタルサービスやデータをめぐる問題が米中経済関係の重要な一部になっていることを象徴しています。
TikTokをめぐる議論は、データの保護やプラットフォームの運営をどのように国際的なルールの中で位置づけるかという、より広いテーマにもつながります。関税や輸出管理と同時にTikTokの扱いが議題に上ることは、経済・貿易協議の枠組み自体がテクノロジーと安全保障を巻き込む総合的な交渉に変わりつつあることを示していると言えるでしょう。
日本と世界が注目すべきポイント
スペインでの米中協議をめぐる一連の動きは、日本を含む世界の企業や投資家にとっても無関係ではありません。特に次のような点が注目されます。
- 米中双方が関税の引き下げと休戦の延長をどこまで継続できるのか
- 半導体やAI、バイオなど戦略分野での輸出規制が、グローバルなサプライチェーンや技術協力の枠組みに与える影響
- TikTokを含むデジタルプラットフォームに対する規制や監督のあり方が、今後の国際ルール形成にどう反映されるのか
日本企業の多くは、中国と米国の両市場に深く関わり、同時に半導体やデジタルサービスのサプライチェーンにも組み込まれています。米中間の協議内容や、関税・輸出管理・デジタル規制の行方は、事業戦略やリスク管理を考えるうえで重要な前提条件になります。
関税から輸出管理、そしてTikTokのようなデジタルサービスへと広がる米中経済対話のテーマは、国際ニュースとして追うだけでなく、日本のビジネスや社会の将来像を考える手がかりにもなりそうです。
Reference(s):
Upcoming China-U.S. talks in Spain: Tariffs, export curbs and TikTok
cgtn.com








