米国の新関税で最大87万5千人が貧困に イェール大が警鐘
2025年に導入された米国の新たな関税が、最大で87万5000人の米国民を新たに貧困状態へと追い込む可能性があると、イェール大学のバジェット・ラボが今週公表した分析で指摘しました。関税強化は企業だけでなく、家計の購買力を大きく削っているとみられます。
最大87万5000人が貧困ラインを下回る可能性
バジェット・ラボの報告書によると、2025年の新たな関税により、貧困ライン以下で暮らす米国民は65万〜87万5000人増える見通しです。これは米国の人口のおよそ0.2〜0.3パーセントに相当します。
研究チームは、関税引き上げが物価を押し上げ、実質的な家計の所得を削ることで、貧困層を拡大させていると分析しています。影響は一様ではなく、所得水準によって負担が偏る点も強調されています。
米国の貧困はどう測られているのか
報告書は、米国の貧困を測る二つの指標に基づいて影響を推計しています。どちらも米国の国勢調査局が公表しているもので、それぞれ特徴が異なります。
- 公式貧困測定指標(Official Poverty Measure):長年使われてきた指標で、現金収入がインフレ調整された貧困ラインを上回るかどうかを基準とします。
- 補足的貧困測定指標(Supplemental Poverty Measure):より包括的な指標で、現金収入に加え、公的給付など家計が利用できる資源や生活費の水準も考慮します。
今回の推計では、どの指標を用いるかによって貧困層の増加人数は変わるものの、いずれの場合でも数十万人規模で悪化するとされています。
関税はなぜ家計にとって「見えにくい増税」なのか
関税は、輸入品にかけられる税金です。報告書は、関税を消費税などと同じ間接税の一種と位置づけ、その影響を次のように説明しています。
- 企業が支払う関税は、最終的には商品の価格に上乗せされやすい
- あるいは、企業の利益や賃金を圧迫し、名目所得の伸びを抑える可能性がある
- 結果として、家計の「実質」所得、つまり物価を差し引いた後の購買力が低下する
さらに、所得の違いによって家計の支出構造は大きく異なります。報告書は、低所得層ほど関税の影響を強く受ける支出項目の比率が高い可能性があり、負担が不均等に分配されていると指摘しています。
物価上昇と貧困ラインの「ずれ」
貧困かどうかは、家計の所得が貧困ラインを上回っているかどうかで決まります。この貧困ラインは、物価上昇に応じて調整される仕組みです。
ところが、関税によって物価が上がると、貧困ラインも引き上げられますが、ほとんどの所得はそれに合わせて自動的には増えません。そのため、報告書は「貧困ラインだけが上がり、所得が追いつかない」状況が生まれやすくなり、統計上、貧困とみなされる世帯が増えると説明しています。
輸入品への課税率は18パーセント超 1933年以来の高水準
バジェット・ラボの研究者たちは、平均的な輸入品への税率が18パーセントを超え、1933年以来で最も高い水準に達していると推計しています。
報告書は、こうした関税主導の物価上昇が消費者の負担を増やすだけでなく、貧困を悪化させる方向に働いていると結論づけています。貿易政策の経済的な「痛み」が、特定の層に集中している可能性を示すものです。
貿易政策の「見えない影響」をどう捉えるか
今回の分析は、関税や貿易政策がマクロ経済の数字だけでなく、家計の生活水準や貧困というかたちで現れていることを示しています。
日本を含む各国でも、貿易政策はしばしば「外交カード」や「産業保護」の観点から語られますが、その負担は最終的に消費者や生活者に及びます。誰がどの程度負担しているのかという視点は、今後の政策議論において重要になりそうです。
イェール大学のバジェット・ラボの試算は、関税という一見抽象的な政策が、具体的にどれだけの人を貧困に追いやりうるのかを数字で可視化した点で、国際的にも注目を集めそうです。
Reference(s):
cgtn.com








