2025年の米中貿易協議を整理 関税猶予とスペイン第4ラウンド
2025年、米中貿易協議が再始動した意味
2025年は、中国と米国という世界最大の二つの経済が、貿易摩擦をめぐる対話を本格的に再開させた年になりました。5月以降、ジュネーブ、ロンドン、ストックホルムで3回の協議が実施され、関税の一時停止措置が合意・延長されました。さらに、9月14〜17日にはスペインで第4ラウンドの大規模な貿易協議が予定され、米中経済関係の行方に世界の注目が集まりました。
第1ラウンド ジュネーブ 協議メカニズムと90日間の関税猶予
最初の大きな動きは、5月中旬にスイス・ジュネーブで開かれた第1ラウンドの協議でした。これは、ワシントンが中国製品に関税を課して以来、初めての本格的な二国間協議となりました。
中国側は何立峰副首相(中国共産党中央政治局委員)、米国側はスコット・ベッセント米財務長官がそれぞれ代表を務めました。この会合では、経済・貿易分野で定期的に意思疎通を行うための協議メカニズムが立ち上げられ、関係の安定化に向けた枠組みづくりが進みました。
協議後に発表された共同声明では、米国が中国製品に課している関税のうち24%分について、90日間の停止措置を取ることが示されました。中国側もこれに対応する形で、自国が発動していた対米関税の一部を同期間停止する措置を打ち出しました。
第2ラウンド ロンドン 原則合意で信頼回復を模索
約1カ月後、舞台をロンドンに移して第2ラウンドの協議が行われました。ここでは、ジュネーブで構築された枠組みをどのように具体化し、実行に移していくかが焦点となりました。
両国は、ジュネーブでの合意内容を実施し、これまでの進展を固めるための原則的な合意に達しました。中国の国際貿易代表を務める李成鋼氏は、今回の成果は信頼の構築に資するものであり、米中の経済・貿易関係を安定的で健全な成長軌道に乗せることが期待されると評価しました。
第3ラウンド ストックホルム 関税一時停止をさらに90日延長
ジュネーブ協議で合意された90日間の関税停止措置は、8月12日に期限を迎える予定でした。その前に開かれたのが、7月末にスウェーデンの首都ストックホルムで実施された第3ラウンドの協議です。
2日間にわたる協議では、米中双方が、米国による24%分の関税停止措置と中国側の対抗措置の停止を延長する方向で努力することで一致しました。その後発表された共同声明では、米国が中国に対する関税停止をさらに90日延長し、中国も対米関税引き上げの停止を同じく90日延長する方針が示されました。
これにより、ジュネーブで最初に決まった関税一時停止は、11月20日まで継続されることになりました。企業にとっては、すべての不確実性がなくなったわけではないものの、短期的な見通しを立てやすくする一定期間の猶予が確保された形です。
スペイン第4ラウンドへ 深水域に入る米中対話
こうした流れを受けて、9月14〜17日にはスペインで第4ラウンドの主要な貿易協議が予定されました。中国側は、何立峰副首相が引き続き代表団を率いることになっていました。
このスペイン協議では、残された関税問題に加え、輸出規制やサービス貿易、さらには短編動画アプリ・ティックトックのようなデジタル分野も議題になるとみられていました。米中経済関係がいわゆる「深水域」に入る中で、扱うテーマはより複雑で政治的な含意も大きいものへと広がっています。
トランプ前政権期に導入された追加関税全体を巻き戻す包括的な合意には、これまでのところ至っていません。それでも専門家の間では、両国が経済・貿易問題を対話と協議によって解決しようとする方向に、着実に進んでいるとの見方が共有されています。
専門家はどう見ているか 痛点の共有と関係修復の試み
第2ラウンドのロンドン協議について、米国のクリストファー・ニューポート大学の政治学准教授である孫泰一氏は、この会合が両国にとって、懸案となっている経済・貿易問題を整理し、二国間関係を軌道に戻すための重要な機会になったと指摘しました。
また、杜克昆山大学のジョン・クエルチ副学長は、インタビューで、米中両国は互いの痛点と、関税や非関税障壁、輸出管理の調整に伴う経済的影響について、より深い理解を共有しつつあるとの見方を示しました。単に関税の数字を巡る駆け引きではなく、実体経済への波及を踏まえた議論が進みつつあるという評価です。
常態化するコミュニケーションが持つ意味
中国国際貿易学会の上級研究員である李永氏は、スペインでの第4ラウンドが予定されたこと自体が、米中間のコミュニケーションメカニズムが日常的かつ定期的なものになりつつあることを示していると分析します。これは、両国にとってだけでなく、より高い予見可能性と安定性を必要としている世界全体に向けた強く重要なメッセージだと強調しました。
2025年の一連の協議は、米中両国が対立から完全に抜け出したことを意味するものではありません。しかし、関税の一時停止措置を段階的に延長し、高官級の協議を繰り返すことで、競争や摩擦を「管理可能なリスク」に抑えようとする試みが続いていることは確かです。
今後も、関税、輸出規制、デジタル経済など難しい議題が続きます。米中がどこまで合意点を見いだせるかは、アジアだけでなく世界経済全体の不確実性を左右する重要な要素になりそうです。
Reference(s):
Last rounds of China-U.S. Trade Talks: Consensus, deadline extensions
cgtn.com








