中国自動車産業の成長追い風に、独ComProが品質管理事業を拡大
ドイツの品質管理企業ComProが、中国の自動車産業の成長を追い風に現地での存在感を高めようとしています。EVや自動運転を見据えた国際標準対応とAI活用が、そのカギになりそうです。
World Smart Industry Expo 2025で語られた中国戦略
ComProのステファン・スプリンク総経理は、2025年9月5〜8日に中国・重慶市で開かれた「World Smart Industry Expo 2025」の会場で、Bridging Newsのインタビューに応じ、中国での事業拡大方針を語りました。
同社はこれまで、国際企業が中国に持つ工場を支援する形で中国市場に関わってきましたが、中国の自動車産業の成長とともに、徐々に中国企業との直接取引へと軸足を移しているといいます。現在は上海でのパートナーシップを通じて中国市場を支えており、今後は中国でのプレゼンス全体をさらに広げる計画です。
欧州市場を目指す中国企業に求められる「一歩目からの適合」
スプリンク氏は、ドイツやヨーロッパ市場を目指す中国企業にとって、品質管理の水準は「製品の最終検査だけの話ではない」と強調しました。重要なのは、品質に関わるプロセス全体が地域ごとの標準や規制に合致していることだといいます。
具体的には、次のような要素が対象になります。
- 最終製品の品質
- 品質プロセスの実装方法
- 加工や組み立てに使う設備
- 使用する材料そのもの
これらすべての段階で、欧州の特定の標準や規制に適合していることが求められます。ComProは、そのためのソフトウエアを提供し、国際的なルールやガイドラインを企業が実際の現場に落とし込めるよう、具体的な実行の指針も示していると説明しました。
自動車業界の「ルールブック」IATF 16949とEV時代のギャップ
自動車産業における品質管理では、「IATF 16949」と呼ばれる国際規格が、企業にとってのルールブックの役割を果たしています。この標準は、自動車メーカーやサプライヤーが守るべき品質管理の要件を幅広くカバーしています。
一方でスプリンク氏は、この標準だけでは、電気自動車や自動運転といった新領域の細部までは十分にカバーできていないと指摘します。とくに次のような分野では、追加の適応や補完が必要になる可能性があるといいます。
- 自動運転機能を検証するためのシミュレーションプロセス
- カメラやレーダーなど各種センサーの信頼性評価と資格付け
- 車両内外でやり取りされるデータ通信の信頼性確保
EVや自動運転では、ソフトウエアとデータが品質を左右する比重が増すため、従来の機械部品とは異なる観点での品質保証が求められます。そのギャップを埋めることが、次のステージの課題になっています。
AIとデジタル化が品質管理の「エンジン」に
スプリンク氏は、単にルールを守るだけでなく、AIとデジタル化が今後の進歩を支える「推進力」になると強調しました。鍵になるのは、現場で生まれる膨大なデータをどう扱うかです。
同氏が挙げたポイントは次の通りです。
- データの統合︓生産ラインや検査装置など、バラバラのシステムから出てくる情報を一元的に扱う
- データの変換と処理︓形式や粒度の異なるデータを、AIが理解しやすい形に整える
- AIによる評価だけでなく「行動につながる示唆」を生み出すこと
つまりAIは、単に合否を判定するだけではなく、「どの工程をどう改善すべきか」「どの条件設定が最適か」といった具体的な提案を、学習モデルと現場の経験に基づいて示す存在として期待されています。
重慶で見た20年の変化︓エンジン工場からEVの街へ
スプリンク氏は、約20年前に初めて重慶を訪れたとき、自動車エンジン工場を見学した経験を振り返りました。それから年月を経た現在、同じ街で目に映る自動車の姿は大きく変わっているといいます。
同氏によると、今の重慶の道路では、中国の自動車メーカーによる新しい技術を搭載した車が多数走っており、その多くがAIやソフトウエアに強く依存した電気自動車になっているとのことです。かつて主役だったガソリンエンジンは、もはや「話題の中心ではない」と感じていると語りました。
「標準をつくる側」へ向かう中国市場と独中の補完関係
スプリンク氏は、中国市場の発展のスピードに注目し、「中国の市場は、やがて世界市場の標準を定め、形成していく側に回る」との見方を示しました。
そのうえで、次のような組み合わせが重要だと述べています。
- 中国のスピード感とイノベーション
- ドイツが築いてきた安定性と品質への評価
この両者を結びつけることが、「次のステップ、さらにその先のステップ」に進むための強い結び付きになると強調しました。中国の自動車産業が世界標準の形成に影響力を持つようになれば、そこで求められる品質管理の枠組みも、国際的な議論の中心に近づいていく可能性があります。
これからの中国自動車産業と品質管理の行方
今回の発言からは、中国の自動車メーカーが欧州市場に本格進出していくうえで、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 品質は「検査」ではなく「プロセス全体」の設計と運用が問われる
- IATF 16949といった既存の国際標準に加え、EVや自動運転向けの補完的なルール作りが重要になる
- AIとデジタル化は、品質管理を効率化するだけでなく、改善提案を生み出す「知恵」として期待されている
ComProが中国でのプレゼンス拡大を打ち出した背景には、中国の自動車産業が国際標準を「追いかける側」から「ともにつくる側」へと変わりつつある状況があります。ドイツ企業との協力がどのような品質管理のモデルを生み出すのかは、今後の国際ニュースとしても注目されそうです。
(本記事はBridging Newsの報道内容に基づいて構成しました)
Reference(s):
cgtn.com







