米国関税が中小企業と家計に直撃 調査と分析が示す深刻な負担
米国関税が中小企業と家計に直撃
米国の関税政策が、中小企業と一般家庭にどれほど負担を与えているのか──2025年夏の調査と大学の分析が、その実態を具体的な数字で示しました。国際ニュースとしても、日本の企業や消費者にとって無関係ではありません。
調査結果:中小企業の約半数が「コスト20%超増」
バルセロナに拠点を置く貨物予約プラットフォーム「フレイトス」が、2025年8月19日から9月9日にかけて米国の中小企業336社を対象に実施した調査によると、回答企業のほぼ半数が「関税政策によりコストが20%以上増加した」と答えました。
また、ほぼ同じ割合の企業が、コスト増を理由に出荷量を減らしたと回答しており、関税が中小企業のビジネスを直撃していることがうかがえます。調査では、輸入税の負担が、大企業よりも小規模な企業に重くのしかかっていることも示されました。
通関業者クリアリット・カスタムズ・ブローカーのアダム・ルイス社長は、米メディアのインタビューに対し、「残念ながら、貿易摩擦の矢面に立たされているのは中小企業です。大企業とは違い、頻繁な関税変更や為替の変動、コスト上昇を吸収する余裕やノウハウがないのです」と語りました。
米国の「貿易パートナー」としての信頼も低下
同じ調査では、約6割の企業が「ワシントンの貿易政策によって、米国は貿易相手としての信頼を損なった」と回答しました。一方、「信頼が強まった」と見る企業はわずか6%にとどまりました。
フレイトスのリサーチ責任者ジュダ・レヴィン氏は、今後の関税拡大への懸念が、企業の行動をさらに慎重にしていると指摘します。「新たな関税や拡大の可能性、ここ数週間の貿易協定に伴う追加の関税負担を受けて、多くの荷主が、これまで以上に厳しいビジネス環境に備えています。これは一時的な混乱にとどまらず、国際的な調達や価格戦略の構造を長期的に変えてしまう可能性があります」と述べました。
家計と貧困ラインへの影響:イェール大学の分析
2025年9月9日にイェール大学の「バジェット・ラボ」が公表した分析は、関税が米国の一般家庭にも大きな影響を与えていることを示しました。報告によると、関税引き上げは家計の購買力を押し下げ、貧困ライン以下で暮らす人の数を約65万〜87万5,000人増やす可能性があるとしています。これは米国人口の約0.2〜0.3%に相当します。
米国では、貧困かどうかは「物価上昇を反映した基準となる所得」と実際の所得を比較して判定します。関税で物価が上がると、この基準が引き上げられる一方で、多くの世帯の所得はそれに追いつきません。そのため、実際の生活が変わらなくても、統計上「貧困」とみなされる家庭が増える構造です。
同ラボの研究者は、輸入品にかかる平均税率が18%超に跳ね上がり、1933年以来の高水準になっていると推計しています。関税による物価上昇は、消費者の負担を重くするだけでなく、貧困の悪化を通じて、経済的な格差を一段と広げるリスクがあると警告しています。
大統領の権限をめぐる法廷闘争
関税政策をめぐる攻防は、司法の場にも持ち込まれています。2025年8月29日、ワシントンの米連邦巡回控訴裁判所は、トランプ政権が1977年制定の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠に関税を課したのは権限の乱用にあたるとする判断を示しました。この判決は、トランプ政権2期目の主要な政策の一つに打撃を与える内容となっています。
この問題について、米連邦最高裁判所は同年11月初めに審理を行う予定だと伝えられていました。大統領がどこまで貿易権限を一方的に行使できるのかという論点は、現在も米国内で大きな議論の対象となっています。
日本と世界への含意:サプライチェーンはどう変わるか
今回の調査や分析は米国内の状況を扱っていますが、影響は国境を越えて波及します。関税によるコスト増は、米国向けに輸出する日本企業や、米系企業と取引するアジア各国の企業にとっても無視できません。
- 米国向け輸出の採算悪化や価格見直し
- 調達先を別の国・地域に切り替える動きの加速
- 物流コスト上昇によるサプライチェーン再編
といった変化が、今後さらに進む可能性があります。
関税は「相手国に痛みを与える政策」と語られることが多い一方で、今回のデータが示すのは、自国の中小企業や低所得層にとっても大きな負担となりうる現実です。日本の読者にとっても、国際ニュースとしての米国の関税を、世界経済と生活の両面から捉え直すヒントになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








