Nvidiaの中国本土向けAIチップRTX6000D、需要低迷の理由とは
Nvidiaが中国本土市場向けに投入した新型AIチップ「RTX6000D」が、2025年12月時点で想定ほどの人気を得られていないことが分かりました。価格に見合わない性能だと受け止められているほか、米国の輸出規制の行方を見極めたい中国本土の大手IT企業が様子見を続けているためです。
この記事のポイント(3行で)
- 中国本土向けAIチップRTX6000Dは約5万人民元と高価な割に性能が限定的とみられ、需要は「控えめ」
- 性能が勝るとされるRTX5090は米規制対象ながら、グレー市場経由で半額以下で入手可能との声
- Alibaba、Tencent、ByteDanceなどはH20や、より高性能なB30Aの行方を見極める「待ち」の姿勢
RTX6000Dとは?中国本土向けに調整されたAIチップ
RTX6000Dは、Nvidiaが中国本土市場向けに設計した最新の人工知能(AI)半導体です。主な用途は、完成したAIモデルを実際のサービスで動かす「推論(インファレンス)」と呼ばれる処理だとされています。
このチップは、中国本土以外で販売されている上位モデルをベースにしつつ、米国の輸出規制に適合するよう性能を抑えた「ダウングレード版」に位置づけられます。2025年後半の出荷を前提に開発が進められ、関係者によると今週になって本格的な出荷が始まったばかりです。
「高いのに遅い」?冷え込む需要
しかし、調達のやり取りを知る関係者2人によると、RTX6000Dへの市場の反応は今のところ鈍いようです。一部の大手テック企業は注文を見送っているとされ、「思ったほどの引き合いがない」との見方が出ています。
最大の理由として挙げられているのが、コストパフォーマンスです。RTX6000Dの価格は1枚あたり約5万人民元(約7000ドル)とされますが、テストの結果、米国での使用が中国本土向けには禁じられているゲーム向けチップ「RTX5090」に性能で及ばない、と関係者は話しています。
RTX5090は規制対象にもかかわらず、グレー市場を通じて依然として入手可能で、その価格はRTX6000Dの半額以下だとされています。同程度の予算でより多くのRTX5090を調達できるのであれば、データセンターやAI開発の現場としてはRTX6000Dに飛びつきにくい、という構図です。
大手IT企業はH20・B30Aを見据え「様子見」
Alibaba、Tencent、ByteDanceなど中国本土の代表的なインターネット企業は、RTX6000Dにすぐには飛びつかず、より強力な別の選択肢を待っているとされています。
具体的には、NvidiaのAIチップ「H20」と「B30A」です。H20は今年7月に米当局から販売再開の許可を得たものの、2025年12月時点でも出荷はまだ再開していません。これらの企業は、注文済みあるいは検討中のH20が本当に出荷されるのか、その「最終確認」を待っている状況だといいます。
さらに、H20よりもはるかに高性能とされるB30Aが米国の輸出規制をクリアし、中国本土向けに販売できるかどうかにも注目しています。もしB30Aが承認されれば、RTX6000Dの優先度はさらに下がる可能性があります。
強気だったアナリスト予想とのギャップ
こうした「冷えた」需要は、市場の一部で抱かれていた強気の見通しと対照的です。JPMorganは先月のリポートで、2025年下半期に約150万個のRTX6000Dが生産されると予測しました。Morgan Stanleyも今年7月時点で、Nvidiaが200万個規模のRTX6000Dをパイプラインに抱えると見込んでいました。
しかし足元の実需が限定的だとすれば、在庫調整や価格見直しが必要になる可能性もあります。Nvidiaにとって中国本土市場は依然として重要ですが、規制に合わせたダウングレード製品が必ずしも顧客のニーズと一致していない、という現実が浮かび上がります。
なぜRTX6000Dは伸びないのか:3つの視点
- ① コストパフォーマンスの問題
同程度の価格であれば、より高性能とされるRTX5090をグレー市場で調達したいというインセンティブが働きます。公式ルートで手に入る安心感と、実効性能・枚数のどちらを重視するかが企業の悩みどころです。 - ② 規制環境の不透明さ
H20やB30Aの扱いが固まっていない中で、中長期のAIインフラをRTX6000Dで埋めてしまうことに慎重になる企業が多いとみられます。「今は待ち」の判断は、リスク管理の一環とも言えます。 - ③ 技術戦略としての優先順位
大規模言語モデルや生成AIを本格的に展開する企業ほど、トップクラスの性能を持つチップを求めます。RTX6000Dは「規制対応」としては意味があっても、将来の競争力の核とするには力不足だと見なされている可能性があります。
米輸出規制とAI競争の今後
RTX6000D、H20、B30Aはいずれも、中国本土向けに性能を調整した「輸出規制対応版」のチップです。米国はこうした規制を通じて、中国本土のテクノロジー分野の進展を抑え、自国のAI分野での優位を保ちたい意図があるとされています。
一方、中国本土のテック企業にとっては、規制を順守しつつも、コスト・性能・供給の安定性をどう両立させるかが課題です。グレー市場を含む複数の調達ルートを組み合わせながら、どの世代のチップにどこまで依存するかを戦略的に見極める必要があります。
Nvidiaにとっても、中国本土向け専用チップ戦略がどこまで有効なのかが改めて問われています。顧客ニーズと規制条件の「ちょうどよい落としどころ」を探る試行錯誤は、今後もしばらく続きそうです。
これから注目したいポイント
- H20の出荷がいつ、どの条件で再開されるのか
- B30Aが輸出規制をクリアし、中国本土で利用可能になるかどうか
- RTX5090など規制対象チップのグレー市場流通が今後も続くのか
- 中国本土の企業が、自前設計や他社チップへの分散調達をどこまで進めるのか
RTX6000Dの需要低迷は、単なる「一製品の不振」ではなく、米国の輸出規制と中国本土のAI戦略、そしてグローバルな半導体競争が複雑に絡み合う現場を映し出しています。今後の政策判断と企業の投資判断が、AI時代の勢力図を左右していくことになりそうです。
Reference(s):
Nvidia's new RTX6000D chip for China finds little favor, sources say
cgtn.com








